ドラマに映画にと活躍する本田望結さんが初主演した映画「ポプラの秋」(大森研一監督)が、19日に公開された。父親を亡くして心に傷を負った少女が、母親と移り住んだアパートで、天国の郵便配達人だという不思議な大家のおばあさんと出会うヒューマン作だ。原作は、世界10カ国で翻訳・出版されている湯本香樹実(ゆもと・かずみ)さんの小説。本田さんは、少女・千秋を演じ、大家のおばあさん役のベテラン女優・中村玉緒さんと初共演した。本田さんに今作について話を聞いた。
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――映画初主演の感想は?
初めて主演だと聞いたときはドキドキしました。不思議な気持ちでした。完成した映画を見て思ったのは、9歳のとき(撮影時)の私にしかできない役だったなあということでした。泣いたり、笑ったり、いろいろな気持ちを演じた中、最後に思うのは、そのときの自分にしかできない演技だったなあということです。
――千秋は、天国のお父さんに手紙を書きます。そして少しずつ、明るさを取り戻していきますね。どういう女の子だととらえながら演じましたか。
お父さんのことが大好きな女の子だなと思って。千秋は普通の子供とちょっと違って、お父さんを亡くしたつらい気持ちを抱えていて、引っ越し先の学校にもなじめないでいます。最初は「できるかなあ」という不安もあったんです。原作を読んで、台本をいつもよりも、もっともっと読み込みました。
――冒頭には、千秋の不安が、ランドセルの中身や玄関の鍵を何度も確認する動作に表現されていましたね。切ないシーンでした。
千秋としての自分の立ち位置、あり方、机の電気をつけるときの仕草などを、何度も繰り返し練習しました。今回、私が想像する役のことと、大森監督が想像することが同じで、大森監督からは「望結ちゃんの好きなように演じてほしい」と言われました。
――お父さんに手紙を書いているときの千秋はどんな気持ちだったと想像しましたか。
お父さんが大好きって思うばかりだったと思います。天国の郵便配達人の大家さんに手紙を届けてもらいたくて、亡くなったお父さん宛てにたくさんの手紙を書きました。でも、その後、お母さんが書いたお父さん宛ての手紙を読んでしまい、「なんで?」という気持ちになってしまいます。ここは複雑な気持ちだったと思います。
――演じていて一番難しかったシーンはどこですか。
仲よくなったオサム君(伊澤柾樹さん)からもらった手紙を読むシーンです。手紙には、自分の経験したことのないような人の死について書かれてあって、オサム君がつらい状況になっていることも書かれてありました。オサム君がどんな気持ちなのか、たくさん想像しました。
――お気に入りのシーンは?
うーん……。オサム君からの手紙を読むシーンです。手紙を書く大切さを感じられるシーンだと思います。
――これまで手紙を書く側だった千秋が、初めて手紙をもらう側になり、相手のことを思うシーンですね。ところで、本田さんも手紙を書くことはありますか。
仕事でお会いした方によく手紙を書きます。今の時代はLINEやメールとかもあるけれど、手紙は相手のことを思って、その人のことだけを思って書きます。同じように、映画のいろんなところで手紙の大切さをとても感じました。
――天国の郵便配達人のおばあさん役・中村玉緒さんとの共演はいかがでしたか。中村さんから教わったことはありましたか。
初めはドキドキで緊張もしましたが、とても楽しかったです。中村さんのモノマネもできるくらいになりました。完成した映画を見て、中村さんと(母親役の)大塚(寧々)さんに会いたくなりました。中村さんからは「怖い役をやったら怖いと思われるのがいい女優さんなんだよ」って教わりました。
撮影中に、私はお誕生日を迎えました。共演の方々やスタッフさんからプレゼントをいただきましたが、中村さんには一番にもらったんです。でも、ちょっと不思議なもらい方をしました。実は、中村さんは私の誕生日を知らなかったんです。でも前日に「急に君にプレゼントを買いたくなった」のだそうです。そして、偶然にも私の誕生日にハンカチをプレゼントしてくれました。(そんな直感をする)やっぱり中村さんはすごい方だなあと思いました。
――ロケ地となった飛騨高山はいかがでしたか。
すごく楽しかったし、地元の人たちもすごく優しくて、とてもいいところでした。おせんべいを買いに行ったり、毎日温泉に入り、いろんなことができました。
――タイトルにもなっているポプラの木は、別の場所から植えられたそうですが、木のある風景もすてきでした。
ポプラの木は、大切なキャストの“一人”だなあと思いました。植え替えてしまうと1~2週間で枯れてしまうらしいのですが、撮影が終わって、また別のところへ植え替えても、枯れなくて、今も元気だそうです。
――これから挑戦してみたい役柄はありますか。
怖い役、悪役です(笑い)。やったことがないのでやってみたいです。警察はやったことがあるので、つかまる側の役をやってみたい。ホラーもやってみたいけれど、自分が怖くなっちゃうので……(笑い)。中村さんが「怖い役をやって怖がられるのが女優さん。好かれようとか考えないで」とおっしゃったので、やってみたくなりました。
――今作を通してどんなことを伝えたいですか。
どの作品も、単に見てもらいたいのではなく、作品のテーマがあって、お芝居をしています。自分が何を思って表現して伝えられるかを、いつも大切にしています。この映画では、手紙の大切さを知ってもらえたらうれしいし、人の死についてや、人は一人では生きていけないということも見てもらえたらうれしいです。
出演は、本田さん、中村さん、大塚さん、村川絵梨さん、藤田朋子さん、宮川一朗太さん、山口いづみさん、内藤剛志さんら。シネスイッチ銀座(東京都中央区)ほかで公開中。
<プロフィル>
2004年6月1日生まれ。京都府出身。4歳のころからCMやドラマに出演。ドラマ「家政婦のミタ」(2011年)で注目を集める。映画出演作に「きいろいゾウ」(12年)、「コドモ警察」(13年)などがある。次回作は、今年12月公開予定の山田洋次監督作「母と暮せば」。女優のほかフィギュアスケート選手としても知られる。一番の宝物は「スケート靴です」と話した。
(インタビュー・文・撮影:キョーコ)
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