娘の不可解な死の真相を探る行動心理学者の父親と死の鍵を握る同級生の少女の心理戦を描いた「罪の余白」(大塚祐吉監督)が3日から公開される。原作は、野生時代フロンティア文学賞を受賞した芦沢央(あしざわ・よう)さんのデビュー作。復讐に燃える父親を内野聖陽さんが熱演している。
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妻に先立たれた安藤聡(内野さん)は、娘の加奈(吉田美佳子さん)と2人で仲よく暮らしてきた。ところがある日、加奈が学校のベランダから落ちて死んでしまう。大学で行動心理学を教えている聡は、娘の異変に気づくことができなかったと後悔する。娘の日記を読み、いじめに遭っていたことを知った聡は、死の手がかりをつかむために高校の学園祭を訪れる。そこで、娘の日記に記されていた少女・咲(吉本美憂さん)が、自分をだましていたことに気づく。しかし、咲はひるむことなく安藤をわなに陥れようとして……という展開。
キリキリとした心理戦が続く。操る者と操られる者が、どう逆転していくのかが気になる。娘を亡くした父親のエモーショナルな行動も見どころだ。父親の聡は、娘を失ったことで自分を責め、酒に溺れて無残な姿になり、大いに涙を流して復讐(ふくしゅう)の鬼となる。咲はそんな聡を挑発し、あの手この手で卑劣なわなを仕掛ける。ベテラン・内野さんの気迫ある芝居に、吉本さんも体当たりの演技で対抗した。咲は取り乱すことはほとんどなく常に平静を保っている。だからこそ憎々しい。吉本さんは第13回全日本国民的美少女コンテストのグランプリを受賞した。狡猾(こうかつ)で冷徹で、同級生たちを従えるカリスマ性のある咲を、声色を変えながら繊細に演じている。ふとした表情にこの少女の孤独も垣間見られ、彼女のプライドが崩れる瞬間は見逃せない。聡と咲がお互いに追い詰められていく様子が、学校の上層階や高層マンションといったロケーションの中で描かれ、緊迫感も倍増している。曇った海の色も印象深い。聡を支える同僚を谷村美月さんが好演しているほか利重剛さん、加藤雅也さんらが出演している。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで3日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。「スクールカースト」に震え上がりました。
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