シンガー・ソングライターのさかいゆうさんが、4枚目のオリジナルアルバム「4YU」を3日にリリースした。ジャズやR&Bといったブラックミュージックのエッセンスが色濃く反映された仕上がりで、ももいろクローバーの元メンバーで女優の早見あかりさんが出演するミュージックビデオでも話題のシングル曲「ジャスミン」も収録されている。さかいさんに、新作の話やデビュー前の秘話などについて聞いた。
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――さかいさんは、ミュージシャンを目指していた高校時代の友達が交通事故で亡くなったことがきっかけで、音楽の道を志したそうですね。
よくいうと、声が聴こえたんですよね。彼の通夜まで3、4日あって、彼の横で、彼の好きだったジミ・ヘンドリックスなどのロックやブルースをみんなで聴いていたんですけれど、そこで感化されたりして。それで、最後の日に(火葬のために斎場に)歩いて行ったんですけど、僕の高校がその山の上にあって、ふもとから上がっていくと高校、左側に入っていくと斎場で、すごくミステリアスだったんですね。僕の人生でこっち(左側)に足を踏み入れることがあるんだって思いながら歩いて行ったのを覚えていて、その別れ道の時に「ミュージシャンになろう」と思ったんです。
――上京して2年後の2001年には、ジャズやR&Bなどのアメリカのルーツミュージックが好きという理由で渡米し、独学でピアノを学んだそうですね。さらに帰国後はどんな活動をしていたんですか。
帰ってから一緒にやりたい人も決まってたんですよ。黒人音楽みたいなことを日本語でやっている人で、GATS TKB SHOWっていう、今は中沢ノブヨシという名前でDREAMS COME TRUEのコーラス&ギターを(ライブで)やってらっしゃる人なんですけど、アメリカに行く前から知り合いというか、電話番号を知っていたので、成田に着いて「以前、何回かお会いしましたけど覚えてますか?」みたいな感じで電話して、そのまま彼の家に行って、彼の曲と(マービン・ゲイの)「What’s Going On」と彼の好きそうな曲を演奏して、「あなたの曲だったらたぶん全部弾けると思います。コーラスもできます」っていって。それから1年間くらいツアーを一緒に回らしてもらいました。
――すごくドラマチックなエピソードですね。それでは新作「4YU」についてお聞きしたいのですが、さかいさんはアルバム作りを「その間の記録」ととらえているということで、今作も日常生活から生まれたものを「記録する」という感覚で制作されたんでしょうか。
そうですね。例えば(1曲目の)「SO RUN」は、武井壮さんとお会いして対談をして、すごく感動したんですね。それですごく好きになって、ミュージシャン以外でこんなに影響を受けるというか、尊敬することってあんまりないんですけれど、ついに彼の曲を書いちゃったっていう感じですね。これは自分の中の武井壮です。テンポも、彼の100メートル走の記録が10.54秒なので105.4(BPM)なんですよ。まあ、それは遊び心ですけどね。
――別の方に歌詞を依頼している楽曲もありますが、その理由は?
同じ作品をセッションしたくて。何か面白いんですよね。人の詞を歌うのって大好きで。それは演奏も同じで、自分で全部できるんですけど、そうなると全部のグルーブが一緒になるので、人と一緒にやった方がふくらみも出るし。(3曲目の)「WALK ON AIR」は一発録りで歌以外は全然直してないんですけど、僕はズレてるのが好きというか、グルーブに奥行きがある音楽が好きで、何回聴いても飽きないのは同時演奏ですね。同時演奏していなくても、ミュージシャンの息遣いが伝わってくるものが好きで、長く聴けるものを自分で作るとなると、今のところ生演奏になっちゃいますね。
――イントロのシンセサイザーの音色が80年代を思い起こさせる「愛は急がず-Oh Girl-」や、リバーブ(残響)を効かせた「あるギタリストの恋」など、懐かしい要素も満載ですね。
古くてちょっと情けない音楽が好きなんです。カッコつけてないというか。「あるギタリストの恋」は、最近、J-POPでアップライトピアノを使った音をあんまり聴いてないから、やってみたいなと思って。古い音楽の様式美も借りて、新しく生まれ変わらせるというか、この時代だからこそできる音楽を自分がやっているっていう感じなんです。あと、自分が通ってきた好きな音楽もふんだんに入ってますね。はやりとかはあんまり気にせずに。
――“運命を変えるような人”を歌ったラブソング「ジャスミン」のミュージックビデオには早見あかりさんが出演されていますが、撮影現場で会った早見さんの印象は?
気さくな人ですね。演技と素が結構リンクしてるのかなって思いました。「ハイ、お疲れさまでーす。ハイッ」っていう感じじゃなくて、自分の何かしらの一部を切り取って演技されてる方だなって。「ジャスミン」をスーパーで何回も聴きながら、「今日(の献立)は何にしようかな、いい曲だな」っていう感じで、ホントに好きになってもらったみたいですよ。うれしいですね。
――アルバムを通して聴いてご自身で感じることはありますか。
踊れるJ-POPというか、ダンサブルだなって。あと、ボーカルは結構、成長したかなって思いますね。デビューから何年かは、すごく抜けのいい、ハイトーンに聴こえるボイスで歌うのが自分の中ではやってたんですけれど、低音もすごく出していますし、自分の地声とかライブに近い録音ができたなと思って、すごく気に入ってますね。
<プロフィル>
1979年9月20日生まれ、高知県出身。2009年にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。さかいさんが初めてハマったポップカルチャーは、宇宙の本。「小学校3年の中ごろから小4いっぱいにかけて宇宙少年だったんですよ。じいちゃんが死んで、その死っていうのがすごく気になって『死んだら星になるって聞いたけれど、それはどういう星なんだ』みたいな。学校の図書館と市民図書館の宇宙に関する本を全部読んで、自分の気になったところを全部書いて、ノートで20冊くらいになってたと思うんですけど、『結局分かんねえや』って。到達できないなと思ったら次の日から一切読まなくなって、そのノートも全部捨てちゃいました。それは結構、覚えてますね。小3、小4の時の記憶って宇宙のことしかないです」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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