注目映画紹介:「森山中教習所」 野村周平と賀来賢人がW主演 凸凹男子コンビのひと夏がまぶしい

「森山中教習所」のワンシーン (C)2016 真造圭伍・小学館/「森山中教習所」製作委員会
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「森山中教習所」のワンシーン (C)2016 真造圭伍・小学館/「森山中教習所」製作委員会

 真造圭伍さんのデビュー作となるマンガを映画化した「森山中教習所」(豊島圭介監督)が9日から公開される。ノーテンキな大学生と、ネクラのヤクザの下っ端組員が田舎の自動車教習所で過ごしたひと夏の物語を、緑まぶしい映像の中に描いた。野村周平さんと賀来賢人さんが、原作マンガにソックリなビジュアルでダブル主演している。

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 大学生の佐藤清高(野村さん)は、ヤクザの轟木信夫(賀来さん)と高校の同級生。ひょんなことから森山中教習所で再会し、一緒に講習を受けることになった。ここは上原家が家族経営をしている非公認の教習所。教官のサキ(麻生久美子さん)と子ども、無愛想なサキの母(根岸季衣さん)、酒好きの父(ダンカンさん)たちと過ごすうちに、2人にとっていつしかホッとできる場所になっていく。マイペースな清高、クールな轟木。高校以来、接点がなかった2人は次第に仲よくなっていく。しかし、轟木には免許を取得しなくてはならないある理由があった……という展開。

 見た目にもまったく共通点のない2人の男子。一人は中学生みたいに無邪気な笑顔。一人は銀髪にネクタイ姿で笑顔もない。中学校跡地で家族経営する教習所には、美人教官の一家がいて、この2人を息子のように迎え入れてくれる。ちょっぴり緩めのテンポでつづられていく前半に、清高と轟木それぞれの繊細な胸の内が見えてきて、教習所が2人にとってのオアシスとなっていることが分かっていく。緑豊かな里山が舞台。ロケ地のボロい校舎、水風船や虫取り……ノスタルジーをかき立てられるシーンが盛りだくさんだ。この場がまぶしければまぶしいほど、清高の家庭内の事情や轟木のヤクザとしてのしがらみが、暗いトンネル内のように見えて息苦しさを感じる。といっても、登場人物の感情の出し方はトーンが低く、押しつけがましさはない。

 男子の友情が絶妙な距離感で描かれている。演じる野村さん、賀来さんは、シーンの空気をとてもよくとらえている。2人の感情が爆発するシーンは、スカッとするような面白さでワクワクする。お陰で観賞後は、手に入れた「自由」がほんの短い時間、夢のようであったことが身にしみて伝わり、どうしようもなく切なくなった。主題歌は星野源さんの「Friend Ship」。劇中音楽はグッドラックヘイワが担当している。新宿バルト9(東京都新宿区)ほかで9日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。最近、1980年代を振り返り中。

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