福山雅治:「SCOOP!」主演ロングインタビュー(下) 中年になって「世間とのズレは補正しない」

映画「SCOOP!」で中年パパラッチ役を演じた福山雅治さん
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映画「SCOOP!」で中年パパラッチ役を演じた福山雅治さん

 歌手で俳優の福山雅治さんの主演映画「SCOOP!」(大根仁監督)が10月1日に公開された。「SCOOP!」は、1985年に制作された原田眞人監督・脚本の作品「盗写1/250秒」が原作で、「モテキ」「バクマン。」などを手がけた大根監督がメガホンをとった。今作で、以前はスターカメラマンだったが今は落ちぶれて借金まみれのパパラッチ・都城静を演じた福山さんは、今作のためにクランクイン前から髪とヒゲを伸ばし、衣装を着込んで日常生活を送るなど徹底した役作りで撮影に臨んだという。新人記者役で二階堂ふみさんが出演しているほか、吉田羊さん、滝藤賢一さん、リリー・フランキーさんらが脇を固めている。福山さんに役作りや今作に懸ける思いなどを聞いた。

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 ◇二階堂ふみはなんでも受け止めてくれる

 ――相手役の二階堂さんですが、最初は若い人の最たるもののような描かれ方をしていました。二階堂さんとの現場の雰囲気はいかがでしたか。

 ふみちゃんは、若いのに本当になんでも受け入れてくれる女優さんで、静として何をやっても野火(二階堂さん)として受け止めて返してくれるし、そのふみちゃんのなんでも受け止めてくれるお芝居の仕方が静を作ってくれたというので、若いのにマインド的には32、33歳みたいだなと。素晴らしかったですよ。

 ――カメラの回っていないところではどんな話を?

 ふみちゃんはその昔、「テニスの王子様」が大好きだったらしくて、ものすごく詳しいんですよ。ほかにもいろんなことを知っていて、多趣味だし、造詣が深くて(持っている)情報量が多いんです。話していても話題も豊富だし。こちらが若い女優さんだからって気を使う必要はまったくなかった。どんな話題でも話せる人なので。

 ――福山さんもいろいろと知識が豊富だと思うんですけれど。傾向としては同じタイプなので共感したのでは。

 若いのにサービス精神がある方で、そういう意味では共通しているのかな。でも女性はそういう傾向があるような気がします。

 ◇世間とのズレは補正しない

 ――福山さんから見て静が持っている悲哀、魅力、分かるなと共感する部分はありましたか。

 静が歩んできた道は、一応スターカメラマンということで、僕も自分でそう言っているわけではないんですがスターと呼ばれることもあるので(笑い)、その部分は共通点だったのかな、と思っています。それと、歩んできた道は違うかもしれないですけれど、誰もが中年になると経験があると思うんですが、少しずつ若い人たちと距離を感じています。いつの間にか、実は陰で言いたいこと言われているんじゃないかとか、自分がそのときの最先端の感性やカルチャーと無意識に共有できていた時代とは違っている。僕も自分でそんなことを感じるんです。

 ――ご自身が若い人とのギャップを感じる中で意識していること、年齢を重ねていくことに対して、自分自身に律していることはありますか。

 昔、吉田拓郎さんだったと思うんですけれど、同じような質問をされたときに、「いや、ずれるんですよ、結局。どんなに自分が第一線だと思っていても年を取るといろんなことが。それで、僕は、ずれたらずれを補正しようとするのではなく、ずれたままいくしかないと思っています」というようなことをおっしゃっていたんです。それを若いときにインタビューで読んで、その拓郎さんの言葉で年を取ってずれてしまうことは怖くないんだと思ったんです。僕もいつか長くやっていればそういう時期が来るんだろうなと。そうしたら案の定、今、来ているわけで。エンターテインメント的な流行(はや)りもそうだし、カルチャー全般、ファッションもそうだけれども。

 あと、アイドルグループの名前とか、本当に覚えられなくなる(笑い)。昔より人数が増えたので追いつかないというのもあると思うんですが。それは記憶力の問題だけではなく、関心の問題でもあると思うんですよね。アイドルの名前だけじゃなくて、若手俳優の名前も分からない。関心がないというか、接触する機会がないので覚えられない。ということは僕も相当ずれてきているんですよね。それに気付いて、ヤバイな覚えなきゃっていうのは違うなと思って。それだったら自分が本当に関心のあるものを追求して、それがずれていたとしても、わざわざ補正するという話でもないなと。関心のあるものだけを追求し、あとは政治、経済、世界情勢、日本の状況などはそれなりの情報をアップデートをすればいい。アップデートするためにやっていることは、ネットで見たり、雑誌を買ったりっていうことですかね。

 ――若い人たちで福山さんに憧れるという人が多いと思うんですが、自分がそういう立場でこう見せなきゃいけないという意識は?

 僕に憧れていますという人に、会ったことないです(笑い)。言いに来てくれるのは(事務所の後輩の)神木隆之介くらい。なので、僕は嫌われてはいないかもしれないけれど、あまり興味を持たれていないのかもしれないなとしか思っていないんです。あまり会う機会もないし。でも、自分としては必死ですけれどね。なるべく関心のあることをアップデートしようと情報を集めたり、あと、見た目的にもこの仕事をしていなかったらもっと腹も出ているだろうし、もっと全体に見た目もだらしなくなっているはずだし。この仕事をさせていただいているのが幸いですよ(笑い)。

 ◇根底にあるものは変わらない

 ――この映画もベテランと新人が描かれているわけですが、始めたころと今とでは仕事の臨み方、考え方は変化してきましたか。

 いろんなことが変化してきました。むしろ全部が変わったといってもいいと思う。だけれども、若い時に経験したことって、それが仮に短い時間だったとしても強烈に残っているんですね。売れなかったとか、ライブでものすごく失敗したとか、うまくいかなかったことというのはすごく残っているので、ああいう感じには戻りたくないなとは思いますね。

 ――根本に持っている気持ちは変わらないということですね。

 仕事の向き合い方、一つ一つの完結のさせ方、スタッフに対する考え方とか、すべてが本当に変わったんですけど、根本的には、育ちも含めて変わらないんだなと。そう考えると、静という人間が醸し出している仕事人としてではなく、生活者としてのいいかげんさというものは僕の根底にあるものなんだと思うんです。

 ――最後に映画を雑誌の見出しふうにアピールしてください。

 アクションあり、エロあり、バイオレンスあり、そしてみんなの大好きな芸能スキャンダルあり。全方位的なエンターテインメントでこれは映画好きなあなたが一度は来てみるべき日本映画のワンダーランドだ! ぜひお楽しみください。

 <プロフィル>

 1969年2月6日生まれ、長崎県出身。1988年に「アミューズ・10ムービーズオーディション」に合格し、同年、映画「ほんの5g」で俳優デビュー。1990年3月21日、シングル「追憶の雨の中」で歌手デビュー。その後も歌手、俳優のほか写真家としても活躍。おもな出演映画に「容疑者Xの献身」(2008年)、「アマルフィ 女神の報酬」(09年)、「アンダルシア 女神の報復」(11年)、「真夏の方程式」「そして父になる」(13年)、「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」(14年)などがある。18年には「追捕-MANHUNT」(ジョン・ウー監督)の公開を控えている。

 (インタビュー・文:細田尚子/MANTAN)

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