結成20周年を迎えた4人組ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」(通称アジカン)が、2004年の自身最大のヒットアルバム「ソルファ」を新たにレコーディングした同名のアルバムを11月30日にリリースした。新録盤は、「リライト」「サイレン」「Re:Re:」(フジテレビ系アニメ「僕だけがいない街」オープニングテーマ)などのシングルを含む全12曲の曲順を一部変えて収録。サウンドはより厚みのある奥深い仕上がりになっている。「当時は曲のよさに演奏技術が追いついていなかった」と振り返り、「『ソルファ』は再チャレンジしたいと思っていた作品」と語るメンバーに、新旧の「ソルファ」の制作秘話、バンド結成時のエピソードや20周年を迎えた心境などについて聞いた。
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――皆さんは関東学院大学の軽音楽部で出会い、バンドを結成したそうですが、そのころの思い出は?
後藤正文さん:建ちゃん(ギターの喜多建介さん)とは何となく話が合いそうだなって感じで話すようになって、山ちゃん(ベースの山田貴洋さん)は真面目そうなヤツだから、バンドにはこういうヤツも必要だろうみたいな感じで、いいヤツそうだから誘ったっていうのが大きくて。潔(ドラムの伊地知潔さん)はだんだん打ち解けていったというか、アジカンに入ってくれたから仲よくなった感じもありますね。
喜多建介さん:びっくりしたのは、ゴッチ(ボーカルの後藤さん)がしこたま飲むと、泣き上戸になるっていうのが大学時代に2回ぐらいあって(笑い)。2人ともベロベロで、俺はリアカーで運ばれて……。
後藤さん:とにかく反抗的な人間だったんで、「飲め」「一気しろ」って言ってくる先輩が嫌いだったんですよ。それで「飲ますんだったら、とことんいくからな」みたいな気概があって。よく盛り上がって、着てる服を脱いで「服がなくなっちゃった」みたいなので(泣いてた)。
――大学卒業後は、後藤さんが、カレンダーや書籍、絵ハガキなどを販売する会社の出版部の営業、喜多さんは業務用冷蔵庫の会社の営業、山田さんは印刷用のインクや溶剤、版を作っている会社、伊地知さんは化学薬品メーカーの営業と、全員が会社員として働きながらバンド活動をしていたそうですね。
伊地知潔さん:接待ゴルフとかもさんざんやりましたし、いわゆる当時の営業マンって感じです。
後藤さん:喜多くんは仕事に燃えちゃってね。冷蔵庫のことばっかり。俺と山ちゃんはいろんなところに(自主制作CDを)送ったりして、どうにか(CDをリリースできる手段が)見つからないかな、みたいなことをやってましたけど、俺たちがやればやるほど(喜多さんは)引いていくみたいな感じ。今じゃ「一番アジカン好き」みたいな顔をしてますけど(笑い)。
山田貴洋さん:ちゃんとCDを出せば、気持ちが離れてる建ちゃん(喜多さん)ももっとバンドに食いついてくれるかな、とか(笑い)、周りや自分の親にも認めてもらいたいというのもあったし、1枚出せばいろいろ変わるだろうなっていうところで、そこまでたどり着きたいという思いがありましたね。
――新録の「ソルファ」では、04年当時にはラストナンバーだった「ループ&ループ」が3曲目に入り、11曲目だった「海岸通り」がアルバム最後の12曲目になっていますが、その理由は?
後藤さん:「海岸通り」が(新録ではストリングスが入っていたりと)前より壮大になっているところもありますし、ボーナストラックのように聴こえていた「ループ&ループ」を3曲目にすることで、収まりがいいというか。「あんまり前の方にシングルがいっぱいあるのもヤラしいよね」みたいな話で後ろの方にしたっていうのがあったけど、昔よりひねくれた部分がなくなって、素直になったんじゃないですかね。
――04年の楽曲を実際に録(と)り直して感じたこと、気づいた変化などはありますか。
山田さん:やっぱり音が太くなったと思うし、そういうどっしりした部分を感じてもらえたらなって。
伊地知さん:当時は面白いアイデアをいっぱい出してるなと思いましたね。もっとシンプルにしがちで、今、もし同じネタから曲を作るという状態になったら、絶対にこうはならない。当時は理想のイメージを作って、技術がないのにトライしてしまった恥ずかしさがあるんですけれど、今、思うと、できないけどトライすることって大事だなって。年を重ねると、そこはやりづらくなってくるところでもあるけれど、またフレッシュな気持ちで次の作品に挑みたいな、とは思いました。
――ちなみに、歌詞の内容でその時の自分を振り返ることはありますか。例えば、「海岸通り」では「あれがない これもない どんな希望もかなえたい欲張り……」というフレーズが印象的ですが。
後藤さん:「……ない……ない」って韻を踏んでいったらこうなったっていうのもあるだろうし、実際に「俺はあれもない、これもない。ホントに欲張りだな」って思いながら生きてきて歌詞にすることなんてほとんどなくて、はずみで出てくるんです。それがどうやら、自分のことを言い当てているような気がする。だから「これはどういう意味ですか」って聞かれても、特に初期のものは「よく分かりません」っていうことの方が多くて、「何だか書けちゃうんですよ」っていうガッカリなことしか言えないんです。
――なるほど。では改めて、バンド結成20周年を迎えた心境は?
喜多さん:ちょうど40歳になるので、人生の半分をASIAN KUNG-FU GENERATIONとしているんだなと思うと、すごいなあって。
山田さん:これだけ一つのことを続けるって、なかなかできることじゃないなって改めて思います。
後藤さん:一緒にいたら少しはケンカしたり、いろいろ思うことってあると思うんですけれど、「ソルファ」を作って思ったのは、曲がよかったんだなと。曲のよさがバンドを転がしてくれたんじゃないかっていう気がしますけどね。
伊地知さん:まだまだライブもよくなるだろうし、新しい曲も作りたい。20年ずっとそういう感じだったし、まだまだ伸びしろがあるなっていう感覚もあります。そういう気持ちがある限り、ずっと続けていけるだろうと思ってます。
<プロフィル>
1996年に大学の軽音楽部で結成。メンバーは、ボーカル&ギターの後藤正文さん、ギター&ボーカルの喜多建介さん、ベース&ボーカルの山田貴洋さん、ドラムの伊地知潔さんの4人。02年にインディーズで発表したミニアルバム「崩壊アンプリファー」を03年に再リリースし、メジャーデビュー。後藤さんが初めてハマッたポップカルチャーは、中学生のころにレンタルCDで借りて聴いていた音楽。「おやじが会社の忘年会で当ててきたCDラジカセを使ってよく聴きましたね。ジョン・レノンのベスト、久保田利伸さんの『THE BADDEST』、ユーミンの『天国のドア』とか。あとユニコーンやサザン(オールスターズ)とかも好きだったし、シングルも借りて、ランキングの中からB’zを聴いたり。何でも聴いていました」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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