名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
アイアンマンやキャプテン・アメリカなど米マーベルのヒーローたちが集結する「アベンジャーズ」の新作アニメ「マーベル フューチャー・アベンジャーズ」が、BS放送「Dlife」で放送されている。2014~15年に放送された「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」に続き、日本の子供に向けて作られたオリジナルストーリーで、「逆境無頼カイジ」などの佐藤雄三さんが監督を務め、「サマーウォーズ」などのマッドハウスがアニメを制作するなど“日本製”の「アベンジャーズ」として話題になっている。「アベンジャーズ」を日本の子供向けに日本で制作する狙いとは……。同作を手がけるマーベル・エンターテイメントの企画開発部門の荒木ゆりかさんに制作の裏側を聞いた。
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私の肩書きは、アニメーション部・海外共同制作企画開発マネージャーで、海外のパートナーと共同で開発するマーベルのキャラクターの関わるテレビ作品の企画制作の窓口です。「マーベル フューチャー・アベンジャーズ」では、ディズニー・ジャパンが企画開発の主導を握っていますが、マーベルのキャラクターのデザインや登場に関するさまざまな条件、キャラクターの性格など、マーベルの承認を必要とする案件がたくさんあります。その監修の交通整理をするのが、私の主な役割です。
共同制作企画関連の仕事以外に、マーベルが制作するオリジナルのアニメーションシリーズの外国語吹き替えのためのオーディション用素材の準備、キャスティングも担当しています。世界各国の言語のオーディションを聴いて、海外の担当者と連絡をとりながら、マーベルの主要キャラクターに最適な声優さんを選びます。言語は異なっても、声の質や演技で、キャラクターの本質を忠実に表現することができるので、キャスティングの仕事は楽しい反面、責任重大です。
前作「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」の制作にあたり、ディズニー・ジャパンとマーベルの連絡、話し合い、監修など、あらゆるやり取りの窓口を一本化する目的で、私のポジションが新しく作られました。当時、マーベルのオリジナルアニメシリーズの制作部門の副社長と制作部長が、以前数多くの日本のアニメの英語版制作プロジェクトで一緒に仕事をした仲間でしたので、その2人の推薦もあり、オファーを受けさせていただきました。
日本の制作チームとのやり取り自体は、とても楽しく、難しいと思ったことはありません。日本のチームは、マーベルが自社のキャラクターの使用に関して、時として難題を提示するのは、キャラクターを守るためであるということを十分に理解してくださっているので、最善の解決策を考えるために、常に努力してくださいます。双方の「一緒に良い作品を作っていこう」という姿勢が、理想的な協力関係の土台になっていると思います。
◇日本の視聴者にとって親しみやすい、分かりやすく
制作に至った背景やさまざまな条件が異なるので、二つの作品を同じ線状で比較することはできませんが、共同制作というプロセスを重ねる中での教訓ということであれば、「究極の目的を見失わないこと」だと思います。それは、さまざまな意見の食い違いや問題に直面する時に、「作品の最終的な目的は何か?」ということを思い起こすことで、妥協点あるいは新しい道が見えてくるからです。
本作の究極の目的は、「アベンジャーズ」というマーベルキャラクターを中心とするアニメを日本市場で展開することで、日本の子供たちに「マーベル」というブランドをもっと知ってもらおうということです。従って「日本の視聴者にとって親しみやすい、分かりやすく」というのが最も重要になります。その目標がブレないようにしつつ、日本の市場を理解しているディズニー・ジャパンのチームの意見と、譲ることのできないマーベルのキャラクターの核心部分、普遍的な部分を吟味することで、これまでさまざまな障害を乗り越えることができたと思います。
日米の文化や価値観の違いには、プロジェクトのさまざまな側面で遭遇します。片方の文化で当然だとみなされることが、もう一方の文化ではNGだったり、逆に新鮮で歓迎されたりと、驚きや笑いの連続です。
例えば、キャラクターデザインでは、米国側のスーパーヒーローの典型的なイメージは、ボディーアーマーなどを着ていない時は筋肉隆々というのが主流ですので、日本側から提示されたデザインに対して、もっと上腕を太く、ふくらはぎをガッシリとしてくれ、というリクエストが多くなります。
日本のアニメのキャラクターデザインに多い、華奢(きゃしゃ)だけれど、鍛え抜かれたボディーラインや、異様に足の長い8頭身、9頭身のデザインはどうしても受け入れられません。リアルに描く米国のカートゥーンやコミック誌と、独特のアートスタイルを誇る日本のアニメの間では、「何が格好よく見えるか」という定義に大きな差があります。
「何が格好いいか」という定義に関しては、ストーリー構成の面でも、両文化の間には大きな違いがあります。米国側は、アクションシーン満載のエピソードはとても喜ばれますが、キャラクターの内面の葛藤を描写したりする静かな場面が多いと、すぐに「退屈だ」というコメントが出てきます。
日本のストーリーテリングでは、心理描写などを盛り込んで、ビルドアップすることが多いと解説しつつも、アクションシーンを追加したり、場所を移動させるなどの工夫を凝らして、双方に納得のいく解決策を模索しました。脚本に関するやり取りが一番大変な作業だったような気がします。
また、日本語では「ごめん……」というせりふの場面で、米国側から「ここは謝るんじゃなくて、『ありがとう』と言う場面じゃないか?」というコメントが出てきたりします。これは、文化的ルール、社会的ルールの違いの典型だと思います。そういったやり取りをいくつも重ねて、両国のチームの納得する、そして誇りに思える素晴らしい作品に仕上がったと思います。
悪の組織に育てられた子供たちが、アベンジャーズの弟子になって、ヒーローとして成長していく、そして、ヴィラン(敵)たちと戦いながら、子供たちの成長を支え、導く地球最強のスーパーヒーローたち。そのダイナミックなストーリー展開は、初めから終わりまで目が離せないはずです。同時に、アベンジャーズのメンバーのオリジンストーリーも盛り込まれているので、ヒーローになる前の彼らの過去を知ることができるのはこの作品ならではの魅力です。ヒーローというのは常に強く完璧な存在ではないけれど、仲間との絆が自身の欠けている部分を補強してくれるのだ……という心温まる人間ドラマの数々を、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。
「マーベル フューチャー・アベンジャーズ」はDlifeで毎週土曜午前8時に放送中。
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