超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、ゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、ヤフーの新サービス「Yahoo!ゲーム ゲームプラス」について語ります。
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テレビゲームはアメリカで生まれ、日本で育ち、そこから世界に展開したプラットフォームビジネスだ。実際、1990年代まで日本のテレビゲーム産業が世界を席巻できた理由の一つに、任天堂とセガ、ソニーの日本企業でプラットフォームホルダーが占められていた時代がある。もっとも近年では海外企業の強さが目立ち、日本企業は肩身が狭い。
特にスマホゲームでは、アップルとグーグルという二大プラットフォームホルダーの意向に従わなければビジネスができないのが現状だ。こうした中、2017年7月にヤフーが始めたゲームプラスが業界から注目を集めているのも、自然な流れだといえる。久々に登場した国産ゲームプラットフォームだからだ。
ゲームプラスの特徴は、インターネットのブラウザーでゲームを遊ばせることだ。ブラウザーが動く端末であれば原則として機種を問わずに、ゲームをインストールすることなくプレーでき、機種をまたいでセーブデータなどの共有もできる。7月18日の発表会では大手から中小まで52社が参入を表明。特にスクウェア・エニックスは看板の「ファイナルファンタジー」シリーズを投入するなど意欲的だ。
さて、ゲームプラットフォームには、サイクルがある。普及率が低い初期段階では、ソフトを供給するサードパーティーには先行投資の意味合いが大きい。時にはプラットフォームホルダーが身銭を切って大作ソフトを投入し、普及率を高める必要がある。普及率が一定値を超えると、普及率の増加が参入者の増加を呼び、さらなる普及率増加の要因になるという好循環が発生する。
これが普及率が頭打ちになると、参入者間での優勝劣敗が進む。一方でプラットフォームはさらなる利益拡大のため、サードパーティーに対する締め付けを強めていく。そうこうするうちに技術革新などで新しいゲームプラットフォームが誕生し、多くのサードパーティーが新天地を求めて新プラットフォームに移動。遊べる新作ゲームが減り、ユーザー数が頭打ちになってゲームプラットフォームの寿命がついえる……という流れだ。
ゲームプラスに注目が集まるのも、スマホゲームで市場の成熟が進み、競争が激化している点が背景にある。その一方でHTML5やクラウドといったウェブ発祥の技術が成熟し、ブラウザーでアプリや家庭用ゲームと遜色のないゲーム体験が可能になってきた。ヤフーにとってもパソコンからスマホへの移行という、ウェブのトレンドに即したサービスが提供できる。
もっとも今のゲームプラスは、スクウェア・エニックスの存在感が大きく、タイトル不足の感が否めない。ゲームのラインアップに厚みを持たせるためには、ゲームプラスならではのタイトルを継続的に出す必要がある。その上でアップルとグーグルに続く“第三極”として、ビジネスがきちんと成立することを示す必要がある。プラットフォームホルダーとしての公平性と中立性、透明性の担保なども求められるだろう。海外勢に押されている現在、同サービスが有力なゲームプラットフォームに成長することを期待している。
おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長を経て2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚して妻と猫3匹を支える主夫に。11~16年に国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表として活躍。退任後も事務局長として活動している。
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