宇宙戦艦ヤマト2202:愛を問う物語に 羽原信義、福井晴敏、岡秀樹に聞く

アニメ「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」を手がける(左から)岡秀樹さん、羽原信義監督、福井晴敏さん
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アニメ「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」を手がける(左から)岡秀樹さん、羽原信義監督、福井晴敏さん

 14日、上映される人気アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の最新作「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」の第3章「純愛篇」。2012年の「宇宙戦艦ヤマト2199」の続編で、1978年に公開された「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」がモチーフになっている。小説「亡国のイージス」「機動戦士ガンダムUC」の福井晴敏さんがシリーズ構成と脚本、「ウルトラマンサーガ」の岡秀樹さんが脚本を手がけ、「蒼穹のファフナー」の羽原信義さんが監督を務めるなど豪華スタッフが集結したことも話題になっている。羽原さん、福井さん、岡さんの3人に、「ヤマト」への熱い思いを聞いた。

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 ◇時間断層の不気味さ

 「宇宙戦艦ヤマト2202」は、イスカンダルからヤマトが帰還して数年後、宇宙の平和を願う女神テレサの願いとは反対に、宇宙の覇者を目指す帝星ガトランティスが台頭し、地球は軍備増強の道を歩み始める……というストーリー。

 岡さんは、羽原さんのオファーで「宇宙戦艦ヤマト2202」に参加することになったという。岡さんは、自身が参加することになった経緯を「そもそも福井さんありきの企画で、監督が羽原さんに決まった。福井さんと羽原さんが合流する前のわずかの間に、僕に相談があった」と説明する。羽原さんは、岡さんに対して「ドラマに対して熱く感じるところが同じ」と考え、オファーしたという。

 3人で新作のアイデアをすり合わせることになり、福井さんは、羽原さんと岡さんの用意したアイデアに厳しい意見をぶつけた。福井さんは「いまだに笑い話で言われるけど、僕は『ダメだ、こりゃ!』って言ったらしいんです」と振り返る。

 一方で、そのアイデアの中には、「2202」のストーリーの核となったものもある。その一つが時間断層だ。時間断層とは、ヤマトがコスモリバースシステムを地球に持ち帰ったことの副作用のようなもの。局地的に時間の流れが異なる空間が生まれ、ここでたくさんの地球防衛艦隊が建造される。

 福井さんは「時間断層の設定によって、あり得ないことができる。作品の中に漂う不気味さにもつながる。時代性を考えると、震災後と向き合わざるを得ない。本来、目を向けないといけないところから、目を背け、復興が進む。進めば進むほど、取り返しがつかないことが起こる……というイメージにもつながる」と考えたという。岡さんは「そこが福井さんの鋭いところ。僕はアリバイ作りのために、時間断層を考えたんです。福井さんは、否定的なニュアンスで活用することで、物語に弾みがつくと気付いた」と驚いたようだ。

 ◇今時、愛って聞いたらヤバい!と思うかも

 「2202」は、大ヒットした「さらば」がモチーフということもあり、期待と不安があったファンも多いだろう。福井さんは「クリアするものがたくさんあるほど、燃えるんです。アスレチックな方が好き。いろいろなことをかいくぐる面白みがある。自分から出てくる恣意(しい)的なものと違いますしね。小説を書いている時は、自分が想像した以上のものは出てこない。『どうしよう?』『オレはこう思う』と意見をぶつけ合うことで、一人で作るよりも、シンプルにできることもある。そこが面白い」と感じているという。

 福井さんは「一番、見たいリメークは何だろう?と考えた。『さらば』の公開から、時がたち、世の中の常識が変わっているところもある。だから、更新しないといけない。ただ、そこは『2199』でもやってくれている。そこをさらに推し進める。生活実感を持ったものを描こうとした。ヤマトやガンダムは、アニメを見ない人も見る。そういう人が求めるのは、キャラクターのリアリズムなのかもしれない」とも話す。

 岡さんも「ヤマトは『2199』で劇的に進化して、再生した。一方で、あえて手放した要素もある。福井さんは『そこを掘り起こすことが、アニメの視聴から離れている人の呼び水になるかもしれない』とおっしゃったんです。とても共感しました。ヤマトのファンは大人になった。出会いや別れもあったはず。そんな中で、愛を問う物語にしたかった。福井さんのコンセプトで『愛を問い直す』と明言されていますしね」と語る。

 愛は「2202」の大きなテーマだ。福井さんは「今時、愛って聞いたらヤバい!と思うかもしれない。『さらば』の時は愛ブームだった。『愛は地球を救う』とかね。その後、愛の陳腐化が進んだ。恥ずかしい気持ちもあったかもしれない。ただ、それも風化してしまった」と考えているという。

 ◇ヤマトは見たこともない世界に連れて行ってくれる

 「さらば」のラストでは、ヤマトが敵の巨大戦艦に突撃する。これが、特攻を賛美しているという意見もあった。「2202」でラストがどのように表現されるかも注目を集めていた。福井さんは「今、特攻と言うと、神風ではなく、自爆テロですよね。そういう時代に、もう一度、愛を描く。こんな面白いアスレチックはない。クリアするかいがある」と感じているという。

 岡さんは「自分は何でヤマトに乗れなかったんだろう? アニメなので、乗れるわけがないけど、乗りたかった。見たこともない世界に連れて行ってくれる船ですよ。自分が乗るのなら、こういう連中だといいなと思うキャラクターを考えながら脚本を書いています」と話す。

 羽原さんは「オレも乗りたい派!」と同意するが、福井さんは「乗りたいですか? ろくなことないよ。絶対イヤだよ」と持論を展開するなど、3人が「ヤマト」に関する議論を始めると、白熱する。そんな3人が作るからこそ「2202」では熱い展開が繰り広げられているのかもしれない。

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