ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
「毎日かあさん」「ぼくんち」などで知られるマンガ家の西原理恵子さんのマンガ新連載「りえさん手帖」が10月から「毎日新聞」で始まった(毎週月曜朝刊に連載)。西原さんは同紙に掲載していた人気マンガ「毎日かあさん」の連載を今年6月に終えた。その際、「卒母」(そつはは、母親業の卒業)を宣言。新連載「りえさん手帖」はコテコテのパーマにド派手なおばさんファッションで身を固めた主人公「りえさん」が大暴れする……という内容だ。西原さんに“卒母”や新連載への思い、今後について聞いた。
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西原さんは「毎日かあさん」の連載を終えようと決断した“卒母”について、「子供が自立したというか、娘に反抗期が来たので。反抗期というのは、1人でできるもんという主張なのに、親が手を出すのは随分ばからしいんじゃないかなと思って」と切り出した。
「私の一番の心配って、今の時代の親の心配とほぼ同じだと思うんですけど、ニートになったらどうしようっていうこと。ほかのことだと割と解決方法が見つかっていたり、家族会があったりするけれど、ニートって解決方法が見つかってなかったりしますよね。なので、そんな時期に(ニートにならず)反抗して外に出ていくんだったら、まあいいかなと思って。うちの子2人、『(西原さんの故郷)土佐のヤンキー』の血が流れているんです」と安堵(あんど)の表情で語る。
一縷(いちる)の寂しさもあるというが、「寂しいけれど、ニートじゃないし、健康で世間にけんかを売って外に出て行ってるんだから、まあ上等ですよね。自分には、家族仲良くなくてよし、みたいなところがあって、分かり合おうとかそういうのはやめた方がいいと思う。元気で外に出てくれるんだからいいかなって」と話す。
「ドアはいつでも開いているから、よかったら帰って来てくれればとは思いますけど。でも、(子供は家を)出ていくの前提ですから。先輩のお母さま方に聞いたら、やっぱり、20歳過ぎた子供は、大学に入学したり、就職しちゃったら、1年に1回も帰って来ないよって。それでいいんじゃないかなと思って」と笑い飛ばす。
そして、新連載「りえさん手帖」にあたっては、「『毎日かあさん』を連載した16年間で自転車操業の癖がついちゃって。これからも自転車操業で行くと思います。とにかく物事を計画立ててちゃんとやるのが非常に苦手で(笑い)」と“行き当たりばったり”を宣言。
キャラクターも「うちの息子や娘も出てくるけど、ごめんね! 看板替えただけって言わないで(笑い)。そういうことは薄目で見てほしい」と笑う。りえさんのキャラクターは「髪形を変えてパチパチのパーマを当てて、ヒョウ柄を着て、(韓国の)東大門市場のおばちゃんみたいなイメージ」と表現。内容も「これまでとあんまり変わらないと思うんです。もう新しいことができる年でもないので、ぬるい目で見ていていただければと思うんですけど」と笑う。
「もうおばさんだから、いよいよ何をやってもいいゾーンに入りました(笑い)。おばさんには情けはないですからね。これまでは親だったから、こうしなきゃというのが少しあったんですけど、もう子供が育っちゃったんだから、何をやってもよくない?って言ってるんです。『人生のハッピーアワーだな』って。人よりちょっと早く、午後3、4時くらいから、しかも半額でお酒が飲める。私は今まで頑張ったから、今度はハッピーアワーの傍若無人なおばさんを見ておれって」とある意味、開き直っている。
描いていくエピソードは「『毎日かあさん』のときは子育てについて、恋人の愚痴を言うようにお母さんたちがものすごく楽しく愚痴るという、すてきな話を集めてきました。これからは、おばさんたち、おじさんたち、お年寄りとか、楽しい愚痴を言う人がいっぱいいるので、人生の面白いうんちくを語る、そんなすてきな人たちの愚痴をたくさん集めてエッセーにしたいなと思って」と考えている。
具体的には「これからは“病気銀座”が始まりますからね。あと、老いとか介護とか。ちょうど周りにも先輩たちが、介護ですごくもめたり、切り抜けたり。そういう人たちって、ちょっとお宝な一言を持っているんですよね。ほかにも熟年離婚とか」などを描こうとしている。
そして、「人に理解を求めようとかそういうのはやめました。いろんなことを忘れたり、あきらめたりすることができる年になったかな。その分、人に対する思いやりもなくなってきたけど。ただ、そういうおばさんの世界が楽しいんだということを若い子に教えてあげたくって。女の子って特に、年齢がいったら人生おしまいだと思っているけれど、私の周りのおばさんたちはみんな、今が一番いいという人が多いですね。キャリアがない、自信がない、何もなくて、人の目ばかり気にしていた若いころには戻りたくないって。なくしたのはウエストだけ。私も今、一番人生で楽しいです」とメッセージを送る。
作品を離れて、今後、西原さんがしたいことは? 「もうちょっと仕事を減らして。ハッピーアワーを充実させたいな。ぜいたくなことですけれどね。体が動くうちにもう少し自分の時間を取って、デートしたいです!」と事実婚の高須克弥院長との時間をもっと持ちたいと考えている。
70代の高須院長との恋愛関係は「けんかしない。どうやったらけんかになって、どうやったらけんかにならないか分かるから。問い詰めないし、聞かない。あきらめられる。それで、おいしいところだけお互いにつまんでいられるから。あと、お互いに子供の教育や親の介護とか、どうしても引けない一線みたいなのがないから、けんかの原因がない」と穏やかな時間を過ごすことができるという。
最後に、読者に向けて「今度こそもうちょっと絵が上手になって描こうと思います。見やすいマンガを心がけますのでぬるい目で見てやってください」と笑顔で呼びかけた。
<プロフィル>
さいばら・りえこ 1964年11月1日生まれ。高知県出身。マンガ家で2児の母。武蔵野美術大学卒。1988年、「ちくろ幼稚園」でデビュー。97年に「ぼくんち」で文藝春秋漫画賞、2005年には「上京ものがたり」「毎日かあさん」で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。「毎日かあさん」は11年に第40回日本漫画家協会賞参議院議長賞も受賞。13年に日本マザーズ協会主催の第6回ベストマザー賞(文芸部門)を受賞。その他の著書に「この世でいちばん大事な『カネ』の話」「パーマネント野ばら」「スナックさいばら」「ダーリンは70歳」など。今年6月に「女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと」(KADOKAWA)を出版した。
*「毎日新聞」に02年から足かけ16年連載された「毎日かあさん」(毎日新聞出版)の最終巻となる14巻「卒母編」が9月21日に発売された。最終回までの連載に加え、口をきかなくなった反抗期の娘と、大学受験を通じてさらに大人びた息子に向けて「卒母」への万感の思いを込めた20ページの描き下ろしを収録している。価格は907円(税抜き)。
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2024年11月22日 14:00時点
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