中園ミホ:西郷どんは「餅のような人」 時代劇初挑戦も多彩な“愛の形”を描く

7日にスタートするNHKの大河ドラマ「西郷どん」の脚本を担当する中園ミホさん (C)NHK
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7日にスタートするNHKの大河ドラマ「西郷どん」の脚本を担当する中園ミホさん (C)NHK

 俳優の鈴木亮平さんが主演を務める2018年のNHKの大河ドラマ「西郷(せご)どん」(NHK総合で日曜午後8時ほか)が7日、スタートする。脚本は連続テレビ小説(朝ドラ)「花子とアン」などで知られる中園ミホさん。主人公・西郷隆盛(吉之助)について「私が聞いたのは『餅のような人』。お餅を二つ並べて焼くとくっついて、同化してしまうじゃないですか。それほど近くにいる人の心に寄り添い、同化してしまう。男にも女にも子供にも愛されていましたし、相手の懐に入り、共感して行動する人だったんじゃないかって。そんな西郷を人間として有機体になるよう、生き生きと描きたいと思っています」と話す中園さんに、ドラマへの思いを聞いた。

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 ◇大河ドラマで時代劇初挑戦 信頼寄せる林真理子に「高みを目指す」姿勢を教わった

 「西郷どん」は、明治維新から150年となる18年に放送される57作目の大河ドラマ。薩摩(現在の鹿児島県)の貧しい下級武士の家に生まれた西郷隆盛(吉之助)の愚直な姿に、カリスマ藩主・島津斉彬が目を留め、西郷は斉彬の密命を担い、江戸へ京都へと奔走する。勝海舟、坂本龍馬ら盟友と出会い、革命家へと覚醒し、やがて明治維新を成し遂げていく……という内容。

 原作は連続ドラマ「不機嫌な果実」(TBS系、1997年)や「anego[アネゴ]」(日本テレビ系、2005年)などで中園さんがタッグを組んできた林真理子さんの小説。中園さんは今回が時代劇初挑戦で、「正直、私に務まるかなと戸惑いもあったのですけど、林さんの原作と聞いたら、そこは絶対に他の人には渡したくはないって(笑)。執筆を決めたのは原作の林さんの存在が大きかったです」と明かす。

 また、中園さんは「大河ドラマを書く日がくるとは思ってなかった」と話し、「林さんとは何度もご一緒させていただきましたが、『常に高みを目指しなさい』といつもおっしゃっていただいて、根性なしの私に高い山を登らせているのは、間違いなく林さんなんです」と断言する。

 そんな中園さんにとって林さんへの信頼は絶大だ。「林さんの原作が骨太で、しっかりしているからこそ、私は思いっきりジャンプをして、エンターテインメントとして描ける」といい、「林さんほど寛大な原作者はいないと思います。『映像に関してはあなたはプロだから』といつも任せてくださいます。原作から大きく離れても、それはそれで面白がってくれる。今回は歴史という大きな原作があり、その歴史をどういう切り口で見せるかが難しいのですが、そこは原作に色濃く書いてあるので、私はそれを生き生きとした人間ドラマとして描きたいと筆を進めています」と語った。

 ◇女性目線で描く薩摩の男社会 前半の見どころは西郷と島津斉彬の師弟愛

 男尊女卑が色濃い薩摩の男社会を、林さんと中園さんという2人の女性が描くのも今作の魅力だ。「私は彼らがどんな生活をしていて、何も食べていたのかってすごく気になりますし、実は西郷は草鞋を編んだり、味噌を作ったり、とても器用で細やかな一面も持っていたそうです。さらに、極めて男尊女卑の薩摩にあって、女性にも優しい人で、3度結婚しますがその度に、ひとりずつきちんと愛し抜き、そして別れを経験する中で、(人間的に)大きくなっていったのではないかと。政(まつりごと)において、大きな働きをするけれど、スケールの大きな男になっていったのは女性からの影響もあると思います」と自身の考えを明かす。

 さらに「歴史に明るくない私でも興味津々で書いているほど、この時代の若者たちの群像劇は本当に面白い。歴史に詳しくない方にもぜひ見ていただきたいです。もちろん、歴史考証の素晴らしい先生が付いていますから、歴史好きの方にも十分楽しんでいただけると思います」とほほ笑む。

 また今作には、西郷と3人の妻をはじめとする男女の愛に加え、友情や師弟などたくさんの愛がちりばめてあると中園さんは話す。「前半は島津斉彬と西郷の忠義を超えた強い愛。西郷はもともと情の濃い人で、斉彬も西郷をすごく愛していたと思います。それは前半の見どころです。大久保(利通)と西郷も子供のころからずっと一緒で、あれだけ互いに刺激し合って、思い合っていたのが、対立する関係に変わってしまうのは、相手への愛が強いからこそだと思う」と、物語に様々な愛を散りばめたことを話してくれた。

 ◇登場人物は皆「逆境の人」? 作品に秘めたメッセージは…

 最後に西郷や大久保らの人物像や生きざまを通して、現代に伝えたいことを聞くと、中園さんは「逆境」をキーワードに挙げ、「本当に今、先が見えない時代だと言われ、今まさに逆境に立たされている人もたくさんいると思いますが、逆境というのは必ずみんなに起こることですし、そういう逆境こそが人を強くするんだ、というメッセージやエールを送れれば」と明かす。

 「西郷も大久保も逆境の人で、数年間、辛酸をなめて、理不尽な理由で表舞台から引っ込んでいた時期がある。後から出てくる岩倉具視や徳川慶喜もそうです。特に西郷の人生は逆境の連続で、侍なのに少年時代に右手の腱を切って、剣術ができなくなるというのは、大変な挫折だったと思います。しかし、そういう逆境がこの人を計り知れないスケールの人間にしたのだというところに注目していくと、一層、その人が魅力的に見えてくると思うんです」としみじみと語った。

 NHK大河ドラマ「西郷どん」は、7日から毎週日曜午後8時にNHK総合ほかで放送。

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