注目映画紹介:「Vision」ビノシュ×永瀬正敏W主演 岩田剛典が河瀬組初参加 奈良を舞台にした幻想的な作品

映画「Vision」の一場面 (C)2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.
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映画「Vision」の一場面 (C)2018“Vision”LDH JAPAN, SLOT MACHINE, KUMIE INC.

 仏女優ジュリエット・ビノシュさんと俳優の永瀬正敏さんがダブル主演した「Vision」(河瀬直美監督)が、8日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで公開される。河瀬監督の生まれ故郷である奈良の大自然を舞台に、男女の運命と未来が交錯するさまを神秘的に描き出している。圧倒的な存在感のビノシュさんと、「あん」(2015年)、「光」(17年)に続いて河瀬作品3作目の主演となった永瀬さんの2人が放つオーラに、河瀬組初参加の「EXILE」「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE」の岩田剛典さんの青年らしい初々しさが混じり合う幻想的な作品だ。

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 ある夏。奈良・吉野の山奥に住む山守の智(永瀬さん)は、「ビジョン」と呼ばれる薬草を求めて日本にやって来たフランス人エッセイストのジャンヌ(ビノシュさん)と出会う。言葉や文化の壁を越えて心を通わせる2人。やがて別れが来て、秋になり、ジャンヌが山を再訪すると、智は謎の若者・鈴(岩田さん)と一緒に住んでいた。ジャンヌは次第に、過去の男(森山未來さん)の姿を2人に重ね合わせるようになる……というストーリー。夏木マリさん、田中泯さん、美波さんらが出演。音楽は、ジャズピアニストの小曽根真さん。

 愛犬とひっそりと暮らす山守の智と、美しいフランス人ジャンヌ、冒頭から断片的に登場する猟師(田中さん)や老婆アキ(夏木さん)らが、どうつながっていくのか……。見ていくと、その関係性が少しずつ分かっていくとともに、古代を感じさせる奈良・吉野の神がかった山の風景と相まって、命の輪廻を感じさせる。

 永瀬さんは、実在の山守からチェーンソーの扱い方などを教わり、相棒の紀州犬コウと時間を過ごして準備をし、森と共に生きてきた人間そのものになり切っている。表情豊かなコウの芝居にも注目。鈴役の岩田さんは、昨夏に映画祭で河瀬監督とあいさつを交わしたつながりで、念願の河瀬組に初出演を果たした。英語のせりふでの芝居に挑戦しただけでなく、大ベテランに胸を借りながら、河瀬監督に内面を引き出され、重要な役柄を演じ切っている。撮影中は山の中に住み込み、ライブツアーの合間の短い日程で役に没頭したという。今年は、3月公開された「去年の冬、きみと別れ」のほか、今後も主演作「パーフェクトワールド 君といる奇跡」(10月5日公開)など、出演作が目白押しだ。

 デビュー作「萌の朱雀」(1997年)でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人賞)、前作の「光」で同映画祭エキュメニカル賞を受賞したほか、2015年にはフランス芸術文化勲章を叙勲するなど、世界で絶賛される河瀬監督が、「イングリッシュ・ペイシェント」(97年)などに出演したビノシュさんと映画を作りたいという思いから始まったという今作。怖いくらい美しい森や太陽、雲、雨風……。人間には制御できない、目に見えない大きなものを通じて、母性を真正面から捉えた圧巻の映像だ。(キョーコ/フリーライター)

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