女優の篠原涼子さんが主演した映画「人魚の眠る家」(堤幸彦監督)が公開中だ。東野圭吾さんのベストセラー小説が原作で、篠原さんは突然の事故により意識不明となった我が子を守り抜こうとする母親を演じた。役に懸ける思いや撮影現場の様子などについて聞いた。
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映画は、2人の子を持つ播磨薫子(篠原さん)が主人公。薫子は、会社を経営する夫・和昌(西島秀俊さん)と別居状態で、娘・瑞穂(稲垣来泉ちゃん)の小学校受験が終わったら離婚することになっていた。ある日、娘がプールで事故に遭い、意識不明の状態に。回復の見込みがないまま眠り続ける我が子を前に、奇跡を信じる夫婦はある決断を下す。そのことによって次第に運命の歯車が狂い……という展開。
今作のオファーが来た際、篠原さんは「うれしい半面、子供がいる身として役を引き受けることに抵抗があった」と明かす。そんな篠原さんに「やった方がいい」と背中を押したのは、夫である俳優の市村正親さんだった。篠原さんは脚本を読んだ際、「共感や切なさ、悲しさ、救いようのない気持ち、いろいろな思いが込み上げて、嗚咽(おえつ)するほど泣いてしまった」といい、薫子を演じたことを「すごくやりがいのある大きな仕事だった」と振り返る。
演じる上では、難しさや大変さを感じることはなかったといい、「この一つの作品で終わってしまうのはもったいないと感じるほどに、もっともっとこの役をやりたいと思った」と熱く語る。一つのシーンに対しても「このシーンを何回もやりたいと思うぐらい、どう絞ろうかなと思うぐらいでした。同じシーンもいろいろなバージョンがあるなと思いました」と振り返り、「ただ、やはり相手の演技とセッションすることによって生まれるものもあるし、自分自身のその日のコンディションもあるので、そこを大事にした」とこだわりを語る。そうすることで、薫子という一人の女性のさまざまな面を演じることができたという。
篠原さんは今回初めて堤監督の作品に参加し、「堤監督は、役者の心をつかむために丁寧にケアしてくださった。すごくやりやすかった」と語る。映画の撮影は、ストーリーに沿って撮影する「順撮り」の方法で行われたといい、「(自身が演じる薫子は)感情がものすごく大切なキャラクターなので、どんな順番で精神がどう変わっていくかを見せなければいけなかった。そこを順撮りしてくれたのは、すごく助かった」と話す。
撮影は、薫子ら家族が暮らす家をセットで作り上げたといい、「本当にこの家に住んでいるんだな、娘たちとみんなで温めてきた場所なんだなと気持ちが入りやすかった」と語り、演じる上で「白けることが全くなく、入り込めた」という。「役者がやりやすいようにトータルバランスで考えてくださったのが堤監督。お芝居では『こうしてほしい』ということをしっかりとアドバイスしてくださって、現場ではユーモアのあることを言って和ませてくれた。本当に心の広い、器の大きい方で、こういう人がいるんだと圧倒された」と信頼を寄せている様子だった。
さらに、篠原さんが演じた薫子は、“眠り続ける”娘にすべてをなげうって向き合い、狂気とも思える行動も見せる難しい役どころだが、演じる上で指針となったのが、堤監督からの言葉だった。
「堤監督は最初の打ち合わせで、『芯の強い女性像をイメージしているので、涼子さんもその気持ちを大切にやっていただきたいです』と言われました。『強い女性であればそれだけでいい』と。その言葉が私にはすごく分かりやすかったし、自由にできるなと思いました。それさえ分かっていれば平気というぐらいに役に入り込めた」と明かし、そこに堤監督の「優しさを感じた」という。
篠原さん演じる薫子と共に、娘が目を覚ますという奇跡を信じる夫・和昌を演じたのが、俳優の西島さんだ。篠原さんとは、3度目の共演となる。篠原さんは「お互い結婚をして子供を持って、夫婦役をやるのは今回が初めて」といい、だからこそ「思いを共有できた」と話す。
篠原さんは、子を持つ母親として「家に帰って寝ている子供の顔を見て、自分の子供は目を覚ますけど、作品の中の子供は目を覚まさない。自分たちが普段、いかに幸せなのかを実感できた。感謝しなきゃいけないと改めて思った」という。同じような思いを西島さんとも共有できたといい、「だから、同じテンションで演じられたし、引っ張ってもらえた部分もいっぱいあった。彼ですごくよかったなと。作品を盛り上げてくださった方だと思います」と思いを吐露する。
また、最新技術の力で薫子の治療に取り組み、次第にのめり込んでいく研究員・星野を演じた坂口健太郎さんについては「ものすごく清潔感がある方なので、何か裏があるような行動をしたとしてもドロッとしたところがない。悪い癖が出ない。真っすぐな青年を演じられる素晴らしい俳優さん」と称賛する。
信頼の置けるスタッフ、キャストに囲まれた現場では「一体感が生まれる時間が多かった。まるで舞台をやっているような気持ちになるぐらい。終わった後は、達成感がありました」としみじみと語る。
自身も「子供を持つ母親として本当にこの作品に感銘を受けた」という篠原さん。今作は“命”や“母の愛”を描いているが、「もし自分たちが同じような状況に置かれたらどうなるか、どういう選択をするかということへの答えは出していないかもしれないし、それは人それぞれの考えだと思う。ただ、考える上でのヒントは描かれている」と説明し、「心揺さぶられる作品なので、劇場で思いきり泣いていただきたいです」とアピールしていた。
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