ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
2018年に講談社が設立したマンガ賞「漫画脚本大賞」。キャッチコピーは「絵が描けないあなたもマンガ家になれる」。文字通り、マンガの原作となる脚本だけを募集する史上初の賞として話題になった。「絵は描けないけどマンガを描きたい」という応募者が多いといい、今年、実施された第3回は最多1231作品もの応募があり、盛り上がりを見せている。講談社の「週刊少年マガジン」編集部の小山淳平さん、「月刊アフタヌーン」編集部の寺山晃司さんに、異色の賞を設立した経緯を聞いた。
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マンガの原作には、実はさまざまな種類がある。小説やライトノベル、映画などを原作としたコミカライズがあれば、原作者がネーム(マンガの下描き)を描くこともある。漫画脚本大賞で募集しているような、ドラマやアニメの脚本のような形式もあり、小山さんと寺山さんによると「フォーマットがない。原作とクレジットされていますが、バラバラ」という。中には、作画、原作以外にも構成といって、原作をネーム化する人もいて、分業化が進んでいる。
小山さんは「原作、構成、マンガ(作画)は本来、全て別の技能で、全部一人で手がけているのはシンガー・ソングライターのような特異な才能なんです。今はマンガの原作者といえば、ネーム形式で原作を描くネーム原作者がほとんどです。マンガ家から原作者に転向した方が多いので、絵が描けます。だから、絵がない脚本形式、文字だけの原作は実はそんなに多くありません。有名なところでは、樹林伸さんがそうなのですが」と説明する。
多くない脚本形式の原作の賞を設立したきっかけは「絵は描けないけどマンガを描きたい」人が存在するからだ。小山さんは、ライトノベルの作家と話す中で「絵が描けるなら、マンガを描きたいと思っている」という声を聞いたことをきっかけに、賞の設立に乗り出した。
寺山さんも「絵がうまいと目に留まりやすいですが、物語がいまいちでは続かない。物語がよくても、絵がいまいちでは伝わりません。どちらも欠かせないんです。読者の方からすれば、原作、作画と分かれていようが、面白ければ関係ないわけですし」と賛同した。
史上初の賞ということもあり、手探りではあったが、2018年に実施された第1回の応募総数は794作品。小山さんと寺山さんの予想を遙かに上回る応募があった。「絵が描けないあなたもマンガ家になれる」というキャッチコピーも賞の説明として分かりやすかったのだろう。「絵は描けないけどマンガを描きたい」人が多く存在することが立証された。
応募者は、小説投稿サイト「小説家になろう」などの投稿者もいたが、99%はアマチュアだった。年齢はバラバラで、女性も「結構いた」といい、作品の傾向もバラバラだった。「週刊少年マガジン」が実施しているマンガ賞は、若い応募者がほとんどというが、脚本大賞は社会人も多く、自らの社会人経験をテーマとした作品も見られたという。寺山さんは「一からマンガを描くよりもハードルが低いのかもしれません。仕事をしながら、マンガを描くのは大変ですが、脚本であれば……という人も多かったのかもしれません」と分析。これまでマンガ賞に応募しないような才能が発掘された。
第1回の大賞に選ばれた生口紺さんも絵は描けないけどマンガを描きたい一人だった。生口さんはアニメ、ドラマなどの脚本家としても活動している中で、マンガへの憧れがあった。漫画脚本大賞であれば「既存の賞よりもハードルが低い」と感じ、応募した。生口さんは講談社のマンガアプリ「マガポケ」で連載していた「イジメられ代行ロボ ヒカゲの日常」の原作を担当し、夢だったマンガ原作者としてデビューした。
第2回の応募総数は517作品と少し減ったが、第3回は1231作品で最多となった。現在は第4回を募集中で、締め切りは2020年1月末。寺山さんが「文章のうまさは求めていません」と話すように、文章のプロではなくてもアイデア、伝えたい気持ちさえあれば、マンガ原作者としてデビューできるかもしれない。
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