特撮ドラマ「仮面ライダー」シリーズの映画最新作「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」が12月21日に公開された。キャッチコピーは「ジオウ、終幕の日。」「ゼロワン、誕生の日。」「決して、交わってはならない」。タイムジャッカーのフィーニス(生駒里奈さん)の歴史改変により、12年前に起きた爆発事故「デイブレイク」以降、ヒューマギア(人工知能搭載型ロボ)が人間を支配する世界を舞台に、「仮面ライダーゼロワン」の主人公・或人(高橋文哉さん)は、父でヒューマギアの其雄(山本耕史さん)と出会い、ゼロワン誕生の秘密に迫っていく……というストーリーだ。「ゼロワン」テレビシリーズと映画のプロデューサーを務める大森敬仁さんに話を聞いた。
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9月に放送がスタートした「仮面ライダーゼロワン」は、“令和初の仮面ライダー”として高い注目を集めているが、大森さんにとって想定外の反響が視聴者から多く上がっていることに非常に驚かされたという。それはヒューマギア=人工知能搭載型ロボに対する“ロス”だ。
第1話に登場したお笑い芸人型ヒューマギア「腹筋崩壊太郎」に端を発し、テロリストにハッキングされて暴走してしまうヒューマギアに悲しみを感じたり、感情移入してしまう人たちが続出。「ゼロワン」の一つのひな形として、AI企業の青年社長が、テロリストにハッキングされ、人類の脅威となってしまった「自社製品」を、自らの手で破壊しなければならない……という点があるが、大森さんは「どストレートに悪を倒すということができなくなっているところが、実はこの『ゼロワン』の課題」と感じ、「そこを何とかして、なるべくスカッとするようなドラマにしたいという話をスタッフとしていた」という。
だからこそ「“腹筋崩壊太郎ロス”がツイッターのトレンドの1位になるくらい盛り上がったことは、僕らからしたら完全に誤算で、目からうろこが落ちたというか。『ここが響くんだ』って(笑い)。でも、それが逆に“ゼロワンらしさ”を生んでいると思うし、特色になっているというか。ただ悪い敵が出てきて、仮面ライダーが倒すだけじゃなく、主人公が苦しみながらヒューマギアを倒して、そのヒューマギアに視聴者が同情を寄せる。フォーマットと言えるほどではないにしても、それは“仮面ライダーらしさ”にもつながってくるものなのではないかと思っていて。今はいい誤算だったと捉えています」と振り返っている。
一方で、制作側が打ち出したかった“ゼロワンらしさ”はどのようなものなのか。当然「令和仮面ライダー1号」という意識はあったといい、「だからこそ『ゼロワン』というタイトルだし、モチーフとしてバッタを選んでいる。『圧倒的な1号感』というのをタイトルやビジュアルで打ち出したいというのはあったし、『令和初』というものはそこに凝縮されていると思います」と大森さんは話している。
大森さんは過去に「仮面ライダーエグゼイド」や「仮面ライダービルド」にも携わってきたが、「平成仮面ライダー」シリーズへの印象は「時代を生きたヒーロー」。「『平成』でひとくくりにしようとしても、1作目の『クウガ』と20作目の『ジオウ』では描き方もだいぶ変わってきていて、だからこそ、それぞれの時代に合ったヒーローではあったのかなと思います。そういった意味で言うと『ゼロワン』はもう少し先、未来を意識している。『ジオウ』が平成をまとめてくれたおかげで、過去を振り返らずにいられるというか、『ゼロワン』では内容的には自由にやらせてもらっていると思います」と前作「ジオウ」に感謝していた。
そんな大森さんに「ゼロワン」における「正義」と「悪」の定義についても聞いてみた。「『正義』と『悪』をあまり区別しない方がいいんだなというのが、今まで仮面ライダーに携わってきて感じていることではあったりする」と明かす大森さん。
「『ゼロワン』の世界にはヒューマギアという存在がいて、敵とされるテロリスト集団『滅亡迅雷.net』も実はヒューマギアだ。人工知能って結局『人工』という言葉にあるように人間が作り出したもので、人間が教えたことを学習して育ってきた、いわば人間の映し鏡のような存在。『ゼロワン』とは自分を顧みることで、この世界を顧みながら戦っていかなくてはいけないヒーローで、そこが“仮面ライダーらしさ”にもつながっている」との見解だが、「ただ、ここで僕が語ったコンセプトなり何なりが、今後も踏襲されるかは分からないので、『令和仮面ライダーとは』の答えは、2作目以降に分かるのではないでしょうか」と語っていた。
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