宇野薫:「UFC」は「僕が戦い続ける理由」 コナー・マクレガー復帰戦の見どころも語る

宇野薫選手
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 世界最高峰の総合格闘技イベント「UFC246」が日本時間1月19日、米ネバダ州ラスベガスで開催される。メインイベントは、MMA(総合格闘技)の最強問題児にして最大のスーパースターとして知られるコナー・マクレガー選手が1年3カ月ぶりにUFCに復帰。「名勝負製造機」といわれるドナルド・セローニ選手と対戦する。WOWOWの「UFC-究極格闘技-」解説者を務める“総合格闘技のパイオニア”宇野薫選手が「UFC246」の見どころを語った。

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 --2001年にジェンス・パルヴァー選手と「UFCバンタム級王座決定戦」を行った「UFC30」で、UFCに初参戦して19年がたちました。

 早いですよね。でも、たぶん僕はUFCで結果を出せなかったからこそ、現役を続けられている気がしますね。あそこでいいパフォーマンスができなかったことが悔しくて、この年齢ですけど、いまだに「オクタゴンに戻りたい」「今自分がUFCで戦ったらどうなるんだろう」と思い続けていますから。

 --宇野選手はUFCでタイトル戦を2回経験していますが、そこでベルトが取れなかったことが、その後の練習や試合の原動力になっていますか?

 もし、UFCのベルトが取れていたら満足して、もっと早く辞めていたと思うんですよ。でも、取れなかったことへの悔しさと未練が、僕が戦い続ける理由の一つにもなっているので、UFCってそれぐらい魅力的な場所なんですよね。

 --宇野選手が感じているUFCの一番の魅力は?

 やはり、総合格闘技の元祖であり、最高峰。誰もが認めるメジャーリーグということが一番ですよね。僕自身、総合格闘技の世界一の舞台だと思っていますし、1993年に誕生してから今日まで、ずっと進化し続けているのがすごい。どんどん強くてキャラクターがある選手が出てくるし、常に技術革新が行われています。

 --UFCは定期的にとんでもない選手が出てきますが、「UFC246」で1年3カ月ぶりに復帰するマクレガー選手は、その最たるものですね。

 マクレガーは最初に見た時から「強い選手が出てきたな」「スターになるんじゃないかな」と思ってたんですけど、あれよあれよという間に、スーパースターになりましたからね。

 --マクレガーの一番の魅力はどこにあると思いますか?

 やはり強さと華やかさですね。試合前にあれだけリップサービスをしていながら、しっかりと結果を出すところも魅力だと思いますし。僕はファッション的なアプローチも気になるんですけど、マクレガーはオシャレを超えたセレブリティーな服装がいいですよね。

 --「高そうなスーツ」って一目で分かる服装で会見にも出てきますね。

 でも、トレーニングウエアはけっこう地味で、ちゃんとシャツをパンツにインしてたりして、そのギャップもいいんですよね(笑い)。

 --人前では「マクレガー」を演じるけど、練習は真面目なんでしょうね。

 そうだと思います。でも、人前に出ればマスコミが喜ぶような発言をして、その発言の一つ一つが世界中に報じられるという。そこまでやれる選手は、これまでの総合格闘家にはいないタイプです。

 --マクレガー選手の相手はセローニ選手ですが、これは夢の対決ですね。

 セローニは、彼がデビュー1年ぐらいで、まだUFCにも、WECにも出る前のルーキー時代から知っているんですよ。2007年に日本の「CAGE FORCE」という大会に出場していて、僕もそのイベントの手伝いをしていたので。そのセローニが、UFCであれだけの結果を残して、しかも10年近くトップで戦い続けている。そして今度、マクレガーと戦うというのは、何か感慨深いものがあります。

 --最近のセローニの戦いぶりに関しては、どう見ていますか?

 UFCは技術がどんどん進歩していますけど、その中でセローニは自分のスタイルを貫きつつ、アップデートして結果を出し続けているところがすごいと思いますね。最近、やや打たれ弱くなった感はありますけど、打たれてもそこから盛り返していく技術と精神力は健在ですし。そこはベテランのインサイドワークですよね。打撃の打ち合いの中で急に組みにいったり、戦いをよく知っていますよね。

 --セローニとマクレガーの対戦は、どんな試合になると思いますか?

 面白くならないわけがない。ただ、マクレガーは1年3カ月ぶりの試合で、3年間UFCでの勝利から遠ざかっていますから、その辺のメンタル面がどう左右するのかな、とは思いますね。僕も去年の11月、3年半ぶりに勝つことができたんですけど、長く勝利から離れていると「本当に勝てるんだろうか」って、すごく不安がつきまとうんですよ。はたして、マクレガーもそういう精神状態になるのかどうか。もしかしたら、全然気にせずにいつも通りのパフォーマンスをしてくるかもしれないですけどね(笑い)。

 --精神面も含めて、マクレガーがどんな状態で出てくるかがポイントだと。

 そこが気になりますね。あと、2017年にはフロイド・メイウェザー戦という別次元のビッグマッチも経験して、とてつもない大金も手にしたわけじゃないですか。さすがに以前よりはハングリー精神も薄れていると思うんですよ。昨年のハビブ・ヌルマゴメドフ戦もかつてのようなギラギラした部分が少し薄れていたような気がしましたし。マクレガーについては、そこが気になりますね。一方、セローニからしたら、勝てばこんなにおいしい相手はいないわけですから、モチベーションは最高だと思うので。その辺の両者の精神状態にも注目しています。

 --では、ズバリ勝つのはどちらだと思いますか?

 僕はマクレガーの勝利を予想しますね。やはりセローニは長年戦い続けてきたダメージの蓄積で、少し打たれ弱くなっているし、反応も一瞬遅れたりしているんですよ。そうなると、マクレガーのような速い打撃を持っている選手とやったとき、厳しいんじゃないかと思うんですよね。

 --マクレガー選手は長いリーチで、遠い間合いからも速いストレートが打てます。

 倒せるパンチを持っていますから。一発当たったら、そのまま意識を飛ばしてしまうんじゃないかなって。セローニはこれまで、ヒザが少し落ちるくらいのダメージを受けても、追撃をうまくかわして反撃していましたが、マクレガーのパンチをもらってしまったら、それも難しいんじゃないかなって。

 --1発が命取りになる可能性が高いと。

 だから極力もらわないようにしないといけない試合だと思います。逆にセローニが勝つとしたら、ハイキックですかね。見えない角度から打ってくるハイキックがすごくうまいので。それが当たれば、マクレガーでも倒れると思いますから。どっちにしても一瞬にして勝負がつく可能性があるので、本当に目が話せない試合ですよね。

 --宇野選手は、マクレガー選手やセローニ選手と階級が近いですが、「もし戦えば」といった目で見ていますか?

 いや、さっき「UFCにもう一度上がりたい」と言ったばかりですけど、タイトルマッチクラスになると、見ながら「すげー! すげー!」ばかり言って、ちょっとファンに戻っちゃうところがあります(笑い)。

 --宇野選手でもそうなってしまいますか。

 世界一の舞台の本当に最高峰ですからね。だからこそ、僕はそれを体で知りたいんですよ。今の若いトップファイターがどれだけ強いのか。それを体感できたら、現役生活終わってもいいぐらいに思っているので。可能性は少ないですけど、それが自分の大きな目標であり、夢ですね。

 --現役ファイターでいる限りは、そこを目指したい、と。

 今、日本人UFCファイターも少なくなってきていますし、日本人が上がることすらなかなか難しい舞台になっていますから。今、UFCに出ている日本人選手には頑張ってもらいたいし、あの最高峰を目指す若い日本人選手がもっと増えてほしいですね。若い選手に、あそこに挑戦する気持ちを持ってほしいんです。僕もそうでしたけど、UFCに挑戦したからこそ今の自分があるし。ものすごく勉強にもなったので。だから若い選手にも、あの最高の舞台、最高峰の戦いを体感してほしいですね。

 *……試合の模様は、「生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC246 in ラスベガス UFC最強問題児マクレガー、全世界待望の復帰戦!」と題し、1月19日正午からWOWOWライブで生中継。

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