半妖の夜叉姫:犬夜叉ワールドをもう一度 諏訪道彦が語る“復活”秘話

「半妖の夜叉姫」の一場面(C)高橋留美子/小学館・読売テレビ・サンライズ 2020
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「半妖の夜叉姫」の一場面(C)高橋留美子/小学館・読売テレビ・サンライズ 2020

 高橋留美子さんの人気マンガ「犬夜叉」の犬夜叉、殺生丸の娘たちが登場するテレビアニメ「半妖の夜叉姫」(読売テレビ・日本テレビ系、土曜午後5時半)が10月3日にスタートする。テレビアニメ「犬夜叉」が2000年10月にスタートしてから約20年後という節目に新たな物語が描かれることになった。テレビアニメ「犬夜叉」「犬夜叉 完結編」のプロデューサーを務め、「半妖の夜叉姫」に企画協力として参加するのがytv Nextryの諏訪道彦さんだ。諏訪さんは、「名探偵コナン」をはじめ「シティーハンター」「YAWARA!」など数々の名作を手がけてきたアニメ業界のレジェンドで、「『犬夜叉』という作品は、高橋留美子先生が素晴らしい終わり方で完結された。それでも、“その後”を追い求めたかった」と思いを語る。「半妖の夜叉姫」はどのようにして生まれたのか。「犬夜叉」“復活”秘話を聞いた。

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 ◇犬夜叉たちの“明日”を見たかった

 「犬夜叉」は「週刊少年サンデー」(小学館)で1996~2008年に連載。妖怪と人間との間に生まれた半妖・犬夜叉と、神社の娘で戦国時代にタイムスリップした女子中学生・日暮かごめが冒険を繰り広げる姿が描かれた。テレビアニメ「犬夜叉」が2000年10月~2004年9月、「犬夜叉 完結編」が2009年10月~2010年4月に放送。劇場版アニメ全4作も公開された。

 「半妖の夜叉姫」は、殺生丸と犬夜叉の娘たちをメインキャラクターとした新しい物語。殺生丸の双子の娘・とわとせつな、かごめと犬夜叉の娘・もろはの3人が、現代、戦国時代と時を超えて縦横無尽に暴れ回る姿を描く。「犬夜叉」と同じくサンライズが制作。「犬夜叉 完結編」の副監督だった佐藤照雄さんが監督を務め、隅沢克之さんがシリーズ構成、高橋留美子さんがメインキャラクターデザイン、菱沼義仁さんがアニメーションのキャラクターデザイン、和田薫さんが音楽を担当するなど「犬夜叉」のスタッフが再結集する。

 2010年に「犬夜叉 完結編」が終了してからも、読売テレビにはファンから多くの続編を求める声が届いた。海外でも根強い人気がある。諏訪さん自身も「『犬夜叉』の世界にずっと魅力を感じ続けていた」と話す。「犬夜叉」のラストは、「私と犬夜叉は、明日につながっていく。」というかごめと犬夜叉の二人のシーンで締めくくられた。

 「あんなに素晴らしい、キレイな終わり方をされたら普通は次とは考えない。ただ、私としては高橋留美子先生の作品でもっとやりたいという思いがありました。500年前の戦国時代を舞台に犬夜叉ご一行様がいろいろなところに行く。四魂の玉が登場して、犬夜叉たちが恨みや因縁と戦っていく。そういうストーリー、あの世界に私自身がずっと魅力を感じてきた。『犬夜叉』のラストの『明日につながっていく。』という言葉の“明日”を見てみたかった」

 ◇犬夜叉ワールドをアニメで新たに描く

 諏訪さん含めアニメ犬夜叉シリーズのスタッフは、テレビアニメ放送時から15年以上交流を続けており、スタッフ間でも「犬夜叉ワールドをもう一度」という思いがずっとあったという。

 「今から5年ほど前に、このチームで『犬夜叉の続編みたいなものができたらいいですね』と、高橋留美子先生や担当編集の方に相談したことがあるんです。その際は『あれは終わったものです』と言われ、まだ雲を掴むような段階でした」

 その後もことあるごとに原作サイドにアプローチを続け、編集担当から「どんな作品にしたいのか高橋先生に提案してみたらどうか」という話を受け、「犬夜叉」でシリーズ構成を手掛けた隅沢さん、サンライズの富岡秀行さんと小形尚弘さん、諏訪さんは構想を練り始めた。

 隅沢さんを中心にアニメで「犬夜叉」の次世代の物語、娘たちの物語を描くという「半妖の夜叉姫」のベースが形作られていった。その企画をもとに、2年ほど前に高橋さんの元へ、あいさつへ行き、同意を得た上で、本格的にアニメ制作がスタートした。

 「先生は今回のアニメについて決断をして、うれしいと言ってくださった。それは、先生が描いたワールドの中で、先生の原作ではないオリジナルのテレビアニメは、今回が初めてだからだと。我々としては、先生が同意してくれた面白いもの、監修してくれた面白いものを届けるということを最も第一に考えました」

 ◇3人のヒロインが誕生した瞬間 高橋留美子の絵のすごさ

 「半妖の夜叉姫」は、「『犬夜叉』の続編」と一部で発表されたが、「続編」というわけではないという。描かれるのは、殺生丸や犬夜叉の娘たちの新たな物語だ。犬夜叉ワールドを愛したアニメ制作スタッフがストーリーを手掛け、「犬夜叉」を知らない世代にもその世界を届けたいという思いがあった。諏訪さんは、隅沢さんが手掛けたストーリーは「犬夜叉ワールドを大事にした隅沢さんの思いが結実している」と語る。隅沢さんが、ストーリー、キャラクター設定を練り上げる上では高橋さんと多くのやり取りを重ねていたという。

 「留美子先生がそうした協力をしてくださっていたこともあって、とある打ち合わせの時に先生自ら、とわ、せつな、もろはという3人のヒロインを描いて見せてくださったんです。『絵を描いてみました』と、3人のキャラクターを見せられた時はスタッフ一同、歓声を上げましたね。『犬夜叉』の世界は先生が作られたものだから、今回のアニメでもメインキャラクターデザインとして参加してくれるということが、本当にうれしかったです」

 打ち合わせには、「半妖の夜叉姫」を手掛ける佐藤監督、隅沢さんも参加しており、高橋さんが描いた3人のヒロインを目にしたことで「ぴたっと照準が合った」と振り返る。

 「絵を見たことで、『こういうことができる』『これはできない』ということが分かったというか。絵があると、無駄な討論が省ける。先生の絵の力はすごいなと。私自身、3人のヒロインを見て『格好いい』と思いました。例えば、とわは戦士っぽく描かれていて自立している印象でした。年齢は14歳のキャラクターなのですが、自分の足で進んでいく3人の女性を描いてくださった。それぞれ父親の殺生丸、犬夜叉の面影もある」

 諏訪さんは、アニメの制作が進み、アフレコでとわ、せつな、もろはの声を聞いた時、「3人がとにかく元気で、これからの時代の一つの表紙というか、時代を象徴する声」と感じ、「すごくうれしかった」と笑顔を見せる。

 「企画はうまくいかなくて当たり前の状態もありましたし、『もう諦めたほうがいいんじゃないか』という時もありました。それでも、私自身も諦めずに先生や編集の方にアタックを続けて、ずっと会話させてもらって、実現できた。テレビアニメ『犬夜叉』のスタートから20周年で『半妖の夜叉姫』を始められるというのは天恵だと感じています」

 時を超えて、殺生丸、犬夜叉たちの娘たちが暴れ回る「半妖の夜叉姫」。どんな痛快な「戦国御伽草子」が展開するのか、目が離せない。

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