放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
歌舞伎俳優の中村芝翫(しかん)さん主演で俳優の高橋克典さんも出演するNHK・BSプレミアムのスペシャル時代劇「十三人の刺客」が11月28日に放送される。天下のために将軍の弟・松平左兵衛督斉継の命を狙う13人の刺客集団と斉継一行との死闘を描く作品で、刺客集団を率いる島田新左衛門を芝翫さん、新左衛門の剣のライバルで斉継を守る鬼頭半兵衛を高橋さんが演じる。小学校のころからの幼なじみという2人に、ライバル役として共演した思いなどを聞いた。
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ドラマは1963年に公開された同名映画のリメーク。幕末・天保年間に、明石藩江戸家老・間宮図書が老中・土井大炊頭(里見浩太朗さん)の門前で割腹する事件が起こる。間宮の死は、将軍の弟で老中就任も内定している斉継(渡辺大さん)の暴君ぶりを訴えたもので、土井は御目付役・島田新左衛門(芝翫さん)に斉継暗殺を命じる。新左衛門は信頼できる強者を集め、参勤交代の途中で奇襲する計画を進めるが、事前に計画をキャッチしていた剣のライバル・鬼頭半兵衛(高橋さん)の奇計にあい失敗。作戦を変更した新左衛門らは中山道落合宿を買い取って砦に改造、乗り込んできた斉継以下明石藩一行と死闘が始まる……という内容。
同ドラマへの出演について「まったくご縁がない作品だと思っていた」と芝翫さん。主人公・新左衛門役は「役者の技量が試される役」といい、「『そろそろ身を引いて孫の面倒でもみようと思う』というせりふがありますが、それを口に出して言う役をやらせていただけるようになったんだな、としみじみ実感しました」と振り返る。一方、高橋さんは以前、舞台版で新左衛門役を経験しており「反対の役もやってみたいな、と思っていた」といい、「非常に面白い役でした。両方を演じた役者って、あまりいらっしゃらないみたいで……。さらに深く考える機会をいただけてうれしかったし、なにより彼(芝翫さん)と共演できるのがすごくうれしかったです」と喜ぶ。
剣のよきライバルであり、お互いに武士の意地をかけて対決する役を演じる芝翫さんと高橋さん。2人は小学校時代からの幼なじみといい、芝翫さんにとって高橋さんは一学年上の先輩にあたる。芝翫さんは「この物語のように“竹馬の友”」と高橋さんとの関係を表現し、「共演させていただいて、すごくうれしかったです。いつも『克典さん』『(芝翫さんの本名の)幸二』と言っている仲で。相対して芝居するのは初めてで、なんとなくむずがゆいところがございましたけど、鬼頭半兵衛、島田新左衛門、という役を改めて作らず、自然体でいけたような気がします」と共演の感慨を語る。
高橋さんも「子供のころから、家もわりと近くて一緒に電車で通っていました(笑い)」と懐かしみ、「僕の中ではものすごく近い友達だけど、やっぱり大先輩。だから今回、初めて一緒に芝居をさせてもらえることに、喜びと同時に緊張もありました」と率直な思いを明かす。高橋さんは「子供のころから培ってきたいろいろなものが間近で見られて、感慨深いものがありました。非常に勉強になったし、新しい刺激を感じることになりました」と振り返り、「まったく別の人間だし大先輩だけど、もう自分の一部のような気持ちもあって。家族ではないけれど限りなく家族に近いようで。そんな感覚でできたのがすごく楽しかったです」としみじみと語る。
高橋さんと今作で共演して、改めて気づいたことがあった、と芝翫さん。「ドラマをやって分かったんですが、子供のころから克典さんに嫉妬していたんじゃないかな、と思います。学校でも後光が差しているようでしたから(笑い)。カッコよかった」と笑いながら語り、「生まれたときからカッコいい。しなを作らず、自然体でカッコいい、ということがドラマでは大事なんだなと感じます。亡くなった父は『その役の匂いがしないとだめだよ』と言っていたけど、克典さんは自然体で、鬼頭半兵衛という人の匂いがぷーんとした」と魅力を説明。「同年代でしのぎを削るのって楽しいんだな、と思いました」と“ライバル”への思いを明かす。
武士の意地と意地がぶつかりあう姿を描いた本作。そこには、命の重みや、理不尽にあらがうことなど現代にも共通するメッセージがちりばめられている。芝翫さんは同作のメッセージ性について「ひとつ言えることは“義”であるかな、と。日本人が奥底に持っているやさしさや横のつながり、そういうものを表現できたらと思います。なぜ、島田新左衛門はそこ(暗殺)までやらなければならなかったのか。やらなくていいかもしれない、引退した方が幸せだったのかもしれない。だけど、やはりそうではない、ということですよね」と説明する。
高橋さんは「十三人の刺客」が持つ不変の魅力は、一つには「理不尽を討つ」というテーマにあるといい、「考えてみたら、『鬼滅の刃』も同じことですからね、テーマは。『理不尽をなんとかする』という」と人気マンガとの共通点も指摘。続けて「世の中は理不尽なものだから、大体のことは許容してなんとかするんだけど。(でも)人の命に関してだけは、虫けらのようになんの価値もない、ということだけは絶対に間違いだ、と。(大事なのは)そこじゃないですかね」と語る。
そして、やはり本作の見どころはライバルであり友人である2人の関係。芝翫さんは、高橋さんとの終盤のシーンでは「自然に涙がこぼれた」といい、「やっぱり子供のときのこととか、いろいろなことを思い出しました」と笑顔で回顧。高橋さんも「そういう相手がいるっていいな、と思いました」としみじみ語り、最後に「そんな友がいた人生というのは、幸せなことだったのではないかと思います。そんな感慨も含めて見ていただけたら」とほほ笑みながら語っていた。
ドラマはNHK・BSプレミアムで28日午後9時~同11時に放送。
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