ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
空知英秋さんの人気マンガが原作のアニメ「銀魂」の完全新作であり、完結編となる劇場版「銀魂 THE FINAL」(宮脇千鶴監督)。テレビアニメ第1期がスタートした2006年から約15年、アニメシリーズの「本当に最後」の作品であることも話題となっている。原作もなかなか最終回を迎えられず、“終わる終わる詐欺”を繰り返したことで知られる「銀魂」の“最後”を記念し、詐欺の一番の被害者とも言える歴代担当編集が集結。「銀魂」の魅力、原作のラストに込められた空知さんの思いを語った。
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「銀魂」は、天人(あまんと)と呼ばれる異星人に占領された江戸時代を舞台に、何でも屋を営む侍・坂田銀時らが難題を解決する姿を描いたSF時代劇コメディー。マンガは「週刊少年ジャンプ」(集英社)で2003年12月に連載がスタートした。コミックスの累計発行部数は5500万部以上。
「週刊少年ジャンプ」「ジャンプ GIGA」(同)で最終回を迎えられなかったことも話題になった。その後、「銀魂公式アプリ」で“最終回の向こう側(続き)”を配信。2019年6月20日に最終訓(回)に当たる3回目の配信「第七百四訓 天然パーマにロクな奴はいない」が配信され、“三度目の正直”でついに完結となった。
座談会に集まったメンバーは、以下の通り。
初代担当・大西恒平さん(「週刊少年ジャンプ」メディア担当編集長)
2代目担当・齊藤優さん(「週刊少年ジャンプ」副編集長)
4代目&6代目担当・本田佑行さん(「週刊少年ジャンプ」編集部主任)
5代目担当・松尾修さん(「マンガMee」編集部)
7代目&10代目担当・内藤拓真さん(「週刊少年ジャンプ」編集部)
8代目担当・真鍋廉さん(「Vジャンプ・最強ジャンプ」編集部)
9代目担当・井坂尊さん(ジャンプ・コミック出版編集部・「ONE PIECE」メディア担当)
――「銀魂 THE FINAL」は原作のラストをベースとしたストーリーが描かれます。作品を見た感想を教えてください。
内藤さん 僕は12回ぐらい泣きました。15年ぐらいやった作品の最後だったというのもあるし。もちろんマンガで一回読んでいるところではあるんですけど、それが声優さんたちの演技やアニメーションで表現されていて、関わってきた人間としてはぐっとくるものがありました。
――「銀魂 THE FINAL」で描かれているのは、原作では9代目の井坂さんが担当していた時に連載されていたエピソードです。
井坂さん そうですね。僕は見ながら「この時、14時間ぐらい(空知さんの原稿を)待ったな……」とか。当時のことを思い出して涙が出てきましたね。
――「銀魂」は最終章が2016年4月にスタートしてから完結までに約3年かかりました。2018年8月に「週刊少年ジャンプ」で「残り5話」と発表されましたが完結ならずでした。
井坂さん 本誌(「週刊少年ジャンプ」)最終回辺りでゴリラ(と真選組の近藤勲)の結婚式を始めた時に「こいつ終わらせる気ねーじゃん!」って。実際終わらなくて、大西さんと「どうしましょうか」とずっと話してましたね。
真鍋さん 井坂さんが担当になる前、僕が担当の時に本誌でいつ終わるかを決めたはずだったんですよね。そのタイミングで井坂さんに交代した。案の定、連載は終わらなくて……。僕も「銀魂 THE FINAL」でぐっときたシーンはいっぱいあったんですけど、どちらかというと、申し訳なさというか。関わってくれた全ての人たちに「本当にごめんなさい」という気持ちで見てましたね。
齊藤さん 僕は、アニメを見て「最後、こういう話だったんだ」というのがようやく分かった。僕らが本誌で何年もかけて読んできた内容をきゅっとコンパクトにしてくれたんで、ようやく全体像が入ってきた。
本田さん 僕も映画で見て初めて「銀魂」ってこういう終わり方したんだって知りました。よかったですね。
真鍋さん 「銀魂」が好きだった人が見ると、やっぱりぐっときますよね。
本田さん 大西さんはどうでした?
大西さん 担当変わってからそんなに真剣に読んでなかったんですが(笑い)。本当にうまく映画でまとめてくれたなって思いましたね。やっぱりグッときましたね。
――アニメも完結を迎え、改めて「銀魂」の魅力は?
齊藤さん 似ているマンガがない。オンリーワン感がすごいというか。
井坂さん 「銀魂」は“俺たちの銀魂感”がありますよね。遠くへ行かないというか。汚いことやるし、ふざけているし、売れすぎないし、ほどよくで(笑い)。「ONE PIECE」とか「鬼滅の刃」ぐらいのレベルにいっちゃうと、「みんなの」みたいになる。「銀魂」は「俺は面白さを分かっているんだよ」というのがファンにあるんじゃないかと思います。とがっている分、理解できるとめちゃめちゃ楽しい。
大西さん ナンバーワンじゃないけど、オンリーワンというか。高級フランス料理というよりは、くさやみたいな(一同笑い)。
井坂さん そうそう、好きな人はめっちゃ好き。
本田さん もう手放せなくなっちゃう。
齊藤さん 「食べログ」の評価はよくないけど、すごくマニアがいる店みたいな(笑い)。
本田さん 僕は、「銀魂」の生き急いでいるところがすごくオンリーワンだと思います。「今、この瞬間死んでもいい」と思いながら、毎週毎コマやっている感じがするじゃないですか。バトルでも真面目な展開でもギャグでも、「今この瞬間に打ち切りになってもいい」という気持ちでやっている感じがある。他のマンガでは味わえないゾクゾク感がある。それはアニメーションにもありますよね。
齊藤さん そのくせゴリラの結婚式に何ページも使ったりしてペースを崩さない。
本田さん そのネタを思い付いたら骨までしゃぶり尽くさないと、もう二度と手を出さなくなっちゃうから、しゃぶり尽くしてから手放すんだと、空知さんはいつも言っているんですよ。
松尾さん 「『銀魂』だったら何でもあり」みたいな前例を作ったのはすごいなと思います。僕も担当の時に「これは誰に許可取ったらいい案件なんだ?」ということもありながらやってました。今回、空知さんが「鬼滅の刃」を描いた入場者プレゼントもそうですけど、「俺たちの『銀魂』がやってくれたな」と周りを巻き込んでいく。
――入場者プレゼントの「鬼滅の刃」の「炭治郎&柱イラストカード」は大きな話題になりました。イラストを描いている時の空知さんの様子は?
内藤さん 全部描いてみて「『鬼滅の刃』の衣装のデザインが勉強になった」とおっしゃってました(一同笑い)。
本田さん 「鬼滅の刃」の便乗で、あそこまで全力で乗りにいったのはさすがにないですよね。
大西さん やるんだったらあそこまでやったほうが「銀魂」らしい。中途半端にさらっとやるんじゃなくて、10枚をランダムでプレゼントしちゃうみたいな(笑い)。
――“終わる終わる詐欺”とは言われながらも、惜しまれつつ完結した「銀魂」。最終話となった第704訓「天然パーマにロクな奴はいない」の万事屋3人が走り出すラストは感動的でした。
井坂さん 最後のシーンは、空知さんがどうしようと悩んだ末、「銀さんたちが戻ってくる」というのを意識して描かれた。
真鍋さん 空知さんがマンガ家を始めたのも、「天空の城ラピュタ」のラストシーンで取り残される気持ちになるのが嫌だったというのが、きっかけの一つですもんね。
――コミックスの読者質問コーナーでマンガ家になったきっかけを聞かれて「取り残されるくらいなら、取り残す側にまわろうと、こっちの世界に来ました」と回答されています。
井坂さん 「俺を置いていかないでくれ」という空知さんの気持ち。あのラストは「みんなの中に『銀魂』はありますよ」ということじゃないですかね。
真鍋さん たしかに、最後のシーンはそれがすごく反映されていましたね。
――ちなみに、続編の可能性は……?
大西さん 続編はないと思いますよ。最終回を迎えて、また第1話に帰ったというか。そうやって、銀魂の世界は円になってずっと続いていくんです。けど、空知さんが何十年後とかにまた貧乏になっちゃったら、もしかしたら「帰ってきた銀さん」みたいなものをやるかもしれません(笑い)。
長きにわたりファンを魅了し続けた「銀魂」。原作、アニメで、その物語のラストを改めて味わいたい。
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2024年11月22日 14:00時点
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