ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
子供にとって劇場で見るアニメはスペシャルな経験だ。人気アニメ「プリキュア」シリーズの第18弾「トロピカル~ジュ!プリキュア(トロプリ)」(ABCテレビ・テレビ朝日系)の劇場版最新作「映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!」(志水淳児監督)は、スペシャル感にあふれた作品になった。テレビシリーズは南国のようなあおぞら市が舞台だが、「映画トロプリ」の舞台は雪の国。いつもとは違う舞台で、キャラクターの新たな魅力を発見できる。「トロプリ」と2010~11年に放送されたシリーズ第7弾「ハートキャッチプリキュア!(ハトプリ)」の2世代プリキュアのコラボもスペシャルだ。アニメを手がける東映アニメーションの伊藤志穂プロデューサーに、スペシャルな同作の制作の裏側、「ハトプリ」とコラボした理由を聞いた。
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「トロプリ」のモチーフは「海」「コスメ」で、テーマは「今一番大事なことをやろう!」。小さな島で生まれ育ち、春から都会の中学校に通う中学1年生の夏海まなつらが、やる気パワーを奪おうとするあとまわしの魔女と戦う。「映画トロプリ」は、プリキュアたちが雪の王国・シャンティアを救うために戦う姿を描く。
テレビシリーズの舞台は、南国のようなあおぞら市。タイトルの通りトロピカルな雰囲気の街だ。「映画トロプリ」の舞台となるのは雪の国で、真逆の世界を舞台にしたことが、スペシャル感の一つになっている。
「舞台設定を真逆にしたのが大きなポイントになりました。映画としてのスケール感を考えた中で、いつも行かないところに行くことを考えました。ブレストを重ねる中で、テレビシリーズが海だから、空にする……などいろいろなアイデアが生まれました。その中で雪というキーワードがあったんです。雪解け、太陽が凍った心を溶かす。キュアサマーの衣装も白×トロピカル色がモチーフですし、白い雪とマッチします。白い世界をトロピカルにしていくというイメージが生まれました。いつもと違うぞ!?と興味を持っていただけるような引っかかりにもなりますし」
ローラの心の成長を丁寧に描いているのも印象的だ。ローラは、人魚の国・グランオーシャンからやってきた人魚の女の子。ちゃっかり者の自信家で、思っていることを正直に言ってしまう。ワガママに見えるところもあるかもしれないが、嫌われるタイプではなく、可愛らしい。「映画トロプリ」ではシャンティアのプリンセス・シャロンと出会い、新たな一面を見せる。
「ローラの視点で物語を作ることを決めていました。誰しもにとっても失敗した、友達を傷つけてしまった……といろいろなことを考えてしまう経験があるかもしれません。ローラはそういうことを感じて、成長できる子です。まなつは、変わらないよさ、明るさがあります。ローラの視点で物語を進め、迷った時にまなつは変わらないでそばにいてくれる。そんな関係性を描いていこうとしました。ローラは、なぜ女王になりたいんだろう?ということも掘り下げていこうともしました」
「ハトプリ」とのコラボもスペシャル感がある。「ハトプリ」は、2019年に実施したNHKの企画「全プリキュア大投票」のプリキュアランキングで2位にランクインしたことも話題になった人気作。3月に公開された劇場版「映画ヒーリングっど プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!」では、第17弾「ヒーリングっど プリキュア」とシリーズ第4、5弾「Yes!プリキュア5」「Yes!プリキュア5GoGo!」がコラボしたことも話題になったが、「映画トロプリ」でも2世代プリキュアがコラボした。なぜ「ハトプリ」なのだろうか?
「すごく悩みましたし、いろいろな意見がある中で『トロプリ』に一番合う作品を考えました。凍った心を溶かすというキーワードもあるので、心を大事にしている『ハトプリ』にしたかったんです。明るくコミカルなところもあり、『トロプリ』と一緒にギャグ顔をやってくれそうですし。ローラと『ハトプリ』の(来海)えりかのやり取りも見てみたかった。えりかがローラにいい影響を与えてくれるとも考えていました。まなつと(花咲)つぼみの真逆なところも面白くなりそう。プリキュア同士のやり取りをしっかり見せたかったので、今回はゲストキャラクターの数を絞っています。『ハトプリ』がそこにいる意味がきちんとある作品にしようとしました。(『ハトプリ』のプロデューサー)梅澤(淳稔)にもシナリオを読んでもらい、『基本は任せる』ということでしたが、『えりかはちゃんと、ごめんねを言える子にしてね』と意見をもらいました」
「ハトプリ」は、「おジャ魔女どれみ」シリーズでも知られる馬越嘉彦さんのキャラクターデザインも魅力の一つだ。「プリキュア」は、作品によってデザインが異なるが、その中でも個性が際立っている。「トロプリ」とは随分とイメージが違うが、「映画トロプリ」では違和感なく同居している。
「『難しいんですよね……』という声もありましたが、キャラクターデザイン、総作画監督の上野ケンさんの力をお借りしました。馬越さんにも原画で数カット入っていただいています。変身後のシーンです。お楽しみポイントなので、見つけてほしいですね。バランスは本当に難しかったところです。ストーリーにしても、楽しい、切ないのバランスを考え、脚本の成田良美さんにまとめていただきました。『ハトプリ』のファンにがっかりしてほしくないですし、『トロプリ』のファンにも楽しんでもらいたかったんです」
2世代、9人のプリキュアのそれぞれに見せ場がしっかりあるなど「映画トロプリ」はバランスが素晴らしい。それだけでなく、ストーリーの芯もしっかりしている。凍っていた心が溶けていくように感動する。10月23、24日の映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で同作が初登場首位に輝くなど多くの人に受け入れられているのは、スタッフの丁寧かつ繊細な姿勢によるところも大きいのだろう。
「プリキュア」は、2004年のスタートから約18年がたち、長きにわたり、子供に愛され続けている人気シリーズだ。伊藤プロデューサーは、シリーズ第17弾「ヒーリングっど プリキュア」と昨年10月公開の「映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日」にアシスタントプロデューサーとして参加したことはあったが、劇場版のプロデューサーを務めたのは今作が初めてとなった。最後に「プリキュア」の魅力について聞いてみた。
「あの子が頑張っているから、頑張ろうと思える。人生に影響を与えるほど大事な作品と思っています。自分も幼少期にアニメを見て、同じように感じていました。今回、(シリーズの生みの親の)鷲尾(天)に『作る上で、守らないといけないことは?』と聞いたのですが『ルールはないんだけど、こういうことに気をつけていたよ』とアドバイスされました。作品によってカラーは違いますし、だからこそ続いてきたんだろうと思っています。今回の作品も映画でしか見られないプリキュアを描いています。ぜひ見てください」
自由な発想で制作しているから、魅力的な作品が続々と生まれてきたのだろう。「映画トロプリ」もそんな「プリキュア」の歴史に新たな1ページを刻んだ。
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