津田健次郎:「芝居は苦手。だから面白い」 ベースは「声優」 ドラマ「最愛」で存在感

連続ドラマ「最愛」に出演する津田健次郎さん
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連続ドラマ「最愛」に出演する津田健次郎さん

 アニメ「遊☆戯☆王」の海馬瀬人役、「呪術廻戦」の七海建人役などで知られる人気声優の津田健次郎さん。2020年放送のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「エール」では語りを務め、今年3月に発表された「第15回声優アワード」で主演男優賞に選ばれたことも話題になった。10月から放送中の連続ドラマ「最愛」(TBS系、金曜午後10時)では、警視庁捜査第1係長の山尾敦を演じ、声優ファンのみならず多くの視聴者の注目を集めている。さまざまなジャンルで存在感がある演技を見せる津田さんだが、「実はすごくお芝居が苦手なんです」と明かす。また「ベースとなっているのは声優業」とも語る。「多少の緊張と大きなワクワク」を持って臨んだという「最愛」、芝居への思いについて聞いた。

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 ◇共感がないと芝居はできない 役と融合する感覚

 「最愛」は、殺人事件の重要参考人となった実業家の真田梨央(吉高由里子さん)、その初恋相手で事件の真相を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平さん)、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士・加瀬賢一郎(井浦新さん)を中心に展開するラブサスペンス。

 津田さんが演じる山尾敦は、交番勤務から地道な捜査活動で警視庁捜査第1係長にのし上がったノンキャリアのたたき上げの刑事だ。捜査会議で的確な指示をする優秀な刑事の一面を見せたかと思えば、部下の宮崎大輝、桑田仁美(佐久間由衣さん)とコミカルなやり取りを見せる場面もあり、放送開始当初からSNSでは「ツダケンさん、すてきだった」「声もすてき」といった反響が上がっている。

 実写ドラマのレギュラー出演は久々という津田さんは「出演が決まった時は、多少の緊張と大きなワクワクがありました」といい、ノンキャリアのたたき上げの一面、管理職としての知的な部分など山尾の「いろいろな面を多層的に見せられたら」と考えた。山尾に共感する部分を「共感できるように融合していかなくてはいけない」と感じているという。

 「もちろん、お芝居のアプローチは、いろいろな考え方があると思うんですけど、僕は自分自身と山尾というキャラクターをミックスして、そこで初めて山尾というのものができると思っているんです。ある種の共感がないと、お芝居ができないのではないかと。僕自身が刑事だったら、山尾が僕だったらと、スライドさせていくといいますか。山尾も生きていく中で、しんどいことも山ほどあるだろうし、楽しいこともあるだろうし、そういう意味では僕もそうなので、絶対共感できるはずだと思っていろいろ探していますね」

 「最愛」では“声”に関しては「全く意識していない」といい、アニメや洋画の吹き替えなどとは、役作りや臨む姿勢に違いを感じていないという。

 「いろいろな芝居のジャンルをやらせていただいて、一番ベースは『芝居は芝居だろう』という。もちろん出口はいろいろ変わってきますし、それによってテクニカルな部分はある程度必要にはなってくるんですけど、根っこの部分、演技的表現はどのジャンルにいっても変わらないんじゃないかなという思いでいます」

 ◇芝居は「一番苦手なんじゃないか」 豊かな一瞬を求めて

 津田さんは、舞台役者としてキャリアをスタートした。「20代のころは正直、挫折の連続だった」と語ったことがある。その後、声優として数々の人気作で魅力的なキャラクターを演じ、現在はアニメ、舞台、ドラマとさまざまなジャンルで活躍している。人気マンガ「極主夫道」の実写PVの監督、映画「ドキュメンターテイメントAD-LIVE」の監督を務めるなど、作り手としても活躍の幅を広げている。「最愛」の映像インタビューでは「やっぱり芝居をするのが好き」と語っていたのも印象的だった。津田さんにとって芝居の魅力とは?

 「予想の範囲を超える瞬間があったりとか、自分が捉えている自分じゃない自分になる瞬間とか……禅問答みたいになっちゃいましたけど(笑い)。自分が捉えている自分というものは、意外に狭いのではないかと。お芝居を通すことによって、また違った自分が表出してくることもある。それは一人芝居ではなくて、ダイアローグによって引っ張られていくことが結構あったりする。そういう瞬間は『おー、びっくり、面白いね』と思いますね」

 演技することで「知らない自分が出てくることがある」と説明する。

 「一つの役を演じる時にも、1+1が3になったり、100になったり、逆にマイナスになることもあるんです。それは、生身の人間同士がフィクションの中で真実にたどり着こうとしているというか。本来はないはずのものなのに『あるね』みたいな瞬間がある」

 芝居の魅力、面白さを語る一方で、津田さんは「芝居は苦手」とも感じているというから驚きだ。

 「実はすごくお芝居が苦手なんです。お芝居以上に得意なことが、もしかしたらほかにいろいろある気がして、実は一番苦手なんじゃないかなと思う瞬間もあって。それが逆に面白いといいますか。お芝居って、何年やっても難しい。すごく困難ですし、ハードル高いですし、そこが面白いのかもしれないですね。実は、お芝居が好きかどうかは、もうよく分からなくて、その次元は随分前に終わったなと。『好きだからやっています』というほど、生易しい世界じゃないなと思いますね」

 苦手だからこそ、ゴール、正解になかなかたどり着けないからこその楽しさがある。津田さんは、芝居を続ける理由をそう語る。そんな中で、自身の演技に満足する「一瞬」があるという。

 「ほんの一瞬、すごく豊かな一瞬みたいなものがあったりするんです。『うわ、すごい、なんだこれは』みたいな。芝居をしていると、自分の意志で歩いていこうとしていたのが、何かにうわーっと引っ張られる瞬間があったりするので、すごい時間だなと思います。それは怖いことでもあり、面白くもありという感じですね」

 ◇ベースは声優 表現者として作り手として貪欲に

 「表現全般が好き」という津田さん。自身のベースになっているのは「声優業」と話す。

 「声優業は、長い時間やらせていただいていて、その面白さも、しんどさも、変な話、ダメな部分もいろいろ体感してきました。やはり、ベースとなっているのは声優業なので、しっかりとさらにいい表現をできるように今後も続けていきたいと思っています。作り手としても、映画を撮りたい。そろそろ2時間の作品を撮りたいと思っているので、ちゃんと向き合っていきたいですし、舞台も作っていきたいですし、自身が役者として板の上にも立ちたい。それぞれ良さとしんどさを持っているので、貪欲にやっていきたいですね」

 応援してくれているファンに対し、「お返しをしたい」という思いもある。

 「ずっと応援してくださっている方はもちろん、『最愛』で初めて知ってくれた方も、何よりも僕に興味を持っていただいて本当にありがたいですね。皆さんの大切な人生の時間を割いていただいて、大切な思いをいただくにあたって、僕がお返しできるのはいい表現をすること。ほんの少しでも皆さんの人生が豊かになるようなものが表現できるように、全力を尽くしていきたい。だから、ぜひ全力で応援していただければ。『陰ながら応援しています』という方もいらっしゃるんですけど、がんがん前に出て応援していただけたらなと思っています(笑い)。『最愛』を最後まで見ていただけたら本当にありがたいですね」

 貪欲に、全力で表現に挑む津田さん。今後の活躍にも目が離せない。

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