俳優の生田斗真さん主演の映画「土竜の唄 FINAL」(三池崇史監督)が11月19日に公開された。シリーズ累計発行部数950万部を突破している高橋のぼるさんのマンガ「土竜の唄」が原作。素行不良で懲戒免職された警察官・菊川玲二(生田さん)が“モグラ”と呼ばれる潜入捜査官としてヤクザ内部に入り、幹部逮捕を目指して奮闘する姿を描く。今作で新たに登場する、通称「サーモン」と呼ばれている警視庁組織犯罪対策部長の沙門夕磨(さもん・ゆま)役を演じる滝沢カレンさんに、夢だったという女優業や三池監督の演出など本作の役どころ、さまざまな分野で活躍する現状、来年30歳を迎える心境について聞いた。
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「もともと女優をやりたくてこの世界に入ったので、ずっと毎日夢だった」と話す滝沢さんは、今作出演のオファーを聞いた際の心境を、「警察の役だったから『私で合っていますか?』って思いました。それにだいぶ出る感じで(作品に)おじゃまさせていただくことがなかったので、最初はちょっと心配になっちゃいました(笑い)。三池さんの作品に入って私が壊してしまわないか心配もありましたが、素直にうれしかった」とちゃめっ気たっぷりに明かす。
滝沢さん演じる沙門は、轟周宝(岩城滉一さん)逮捕の指揮を執るという役どころだが、「カッコいい役を一度はやってみたかったのでうれしかった。警察役なんて、もう“きっと無理だと思っていた夢”の欄の夢だったので、それが警察の役をいただけるのもうれしいですし、リーダーみたいな役をいただけるのもうれしい。カッコいいせりふばかり言う女性なのもうれしかったです」と笑顔を見せる。
滝沢さんにとって“最高の夢”がかなったことになるが、「本当は『やったー!』なのですが、その裏には今まであまり経験がない自分への心配もあったし、『自分、やれるのか?』って何度も聞きました。うれしいだけで喜べないのは、こんなすごい作品だからっていうのがいろいろありました」と演技経験の少なさへの不安もあったという。
「私は三池さんの作品を見る側だったので、例えば手の届かないような人のおうちに行くときって本当はおしゃれしたいじゃないですか。一番良い服を着て、一番可愛い自分で会いたい、行きたいと思うかもしれないけど、今回は全部“裸”で行きました」と語る滝沢さん。
さまざまな思いを胸に秘めていたが、撮影前の準備について、「とにかくご迷惑をかけるのが一番良くない。自分の中で最大限思えることが、それぐらいしかなかった」と考えた。
「サーモンさんの人間性は三池さんが握っているもので、私が勝手にあれこれ考えるのは違うのでは、三池さんに逆に失礼になってしまうのでは」と思ったという。せりふは100%覚えていったが、「そこからは三池さんの“色”を教えてもらおうと考え、もちろんジムとかは行きましたけど、本格的な準備はしませんでした」と持論を口にする。
実際の撮影では、「自分のタイミングで呼吸をすると、どうしてもその場の空気を壊してしまう。仕草、まばたき、口の開け方、すべてもう三池さんのものといってもいいぐらい」と丁寧で濃密な演出があったと話し、「『空気を変えるのはサーモンしかいない。あなたしかいない』と三池さんは言ってくださり、気の強さや目力一つも『もっとこう』と三池さんが(実際に)やってくださる。それを伝授していただく感じで進んでいきました」と撮影を振り返る。
モデル、バラエティー、女優と幅広く活躍している滝沢さん。どのジャンルも「どんどん奥へ奥へ、地下へ地下へという楽しさがあって。今どれか一個捨てろと言われてもできないっていうぐらい、その三つを大事にしていきたい。全部楽しいし全部魅力があります」とコメント。「『本業は何』と言われることが一番くやしくて。どれも本業だし、どれも私の夢。今は仕事を一つに絞る必要はない世界だと思うし、好きなことをやっていったらそれが仕事で、その先にはいっぱいの分厚い壁がある。好きだけじゃ渡れない橋はいっぱいあるけど、その橋づくりが今は楽しい」と力説する。
そんな滝沢さんも来年30歳を迎えることに驚かされるが、「私の方がびっくりしています」と言って笑う。どんな30代にしていきたいか構想を尋ねると、「“大人”になりたいとあまり思わなくて、“子供”でいたいと思う方が多い」と切り出し、「何も知らなかった時、例えば初めて公園に行った時とか初めてブランコに乗った時の楽しさはすごいし、これから先どこでそれぐらいの“マックスうれしい”があるかわからないから、自分は“大人”になりたくないなって思う」と理由を説明する。
続けて、「初心も忘れちゃだめだと思いますが、それ以上に子供心がないといけないと思う。みんな最初は子供だったし、たまたま背が大きくなっただけ、たまたま友達が増えただけ、たまたま仕事しているだけとか、自分があまり大人にならなきゃとかは思いたくない。ただ年齢が進んだけど自分は流れと共にというか、『30歳になったから何』って思えるような自分でありたい」と力説。「急がない方が人生長いし、あまり先のことを考えるのも好きじゃないし、だったら明日の洋服を決めていたい。自然に生きたいって思います」と滝沢さん“らしい”生き方を提示する。
今後また女優業に挑戦するとしたらどんな作品に出たいのだろう。滝沢さんは「根っからホラーも好きですし、ファンタジーも好き。自分的にはホラーという名のファンタジーみたいなものをやってみたい」と話し、「霊をコンパクトにポップに書いた世界観で、人間たちとの暮らしとかを二重生活のような形で鏡の世界で描くようなストーリーがいい。ポップな感じで子供が見ても楽しめ、主人公はもうここにはいないけど“見えているか見えていないかの差”だけ。そういう作品に出たい。人間と霊どっちも演じてみたい」とイマジネーションをふくらませていた。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
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