4月に入り、2022年度がスタート。各テレビ局の番組表も刷新された。“春の改編”では、フジテレビ、TBS、MBS、テレビ東京、NHKがドラマ枠の新設を発表していたが、その第1弾となる連続ドラマも続々と登場。「ナンバMG5（エムジーファイブ）」（フジテレビ）、「村井の恋」（TBS）、「不幸くんはキスするしかない！」（MBS）、「汝（なんじ）の名」（テレビ東京）、「卒業タイムリミット」（NHK）がそれに当たるが、各局が掲げたコンセプトや狙いとは？　第1弾作品の特色を交えて紹介する。

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　◇復活のフジ“水10”　男性俳優主演で、さまざまなタイプのヒーロー像を

　フジテレビは水曜午後10時にドラマ枠「水10ドラマ」を新設。第1弾「ナンバMG5」は、小沢としおさんの不良マンガ「ナンバMG5」「ナンバデッドエンド」（ともに秋田書店）が原作で、主演を俳優の間宮祥太朗さんが務める。

　主人公は、実は「ヤンキーをやめたい」「普通の高校生になりたい」と、家族に内緒で健全な高校に入学したヤンキー一家の次男。家族の前ではヤンキー、学校では真面目な高校生という「二重生活」をスタートさせるが、いじめられている友人を放っておけず、つい特攻服に着替えて助けたことをきっかけに、正体不明の最強ヤンキーとしてのし上がる……というストーリーが展開する。

　フジテレビの水曜午後10時といえば、以前にも数々のドラマを放送。「家族ゲーム」や「リーガルハイ」第2期などの人気作を世に送り出しており、ドラマ枠としては、2016年以来、約6年ぶりの“復活”となる。かつては同時間帯の日本テレビ「水曜ドラマ」と視聴率でしのぎを削り、「水10対決」などとメディアを騒がせたこともあったが、フジテレビが今回「水10ドラマ」で掲げたコンセプトは「ニューヒーロー誕生」。

　春の番組改編記者発表で中村百合子編成部長は、「裏の枠にドラマがあるのは承知」とした上で、「フジテレビとして新しくドラマ枠を設定する上で、編成戦略的に熟考を重ねてこの枠に決めました。ジャンルなど差別化をあえて図ることはなく、我々が目指したいドラマをしっかり作っていくのみ」と考えを語っている。

　今後も「男性俳優主演で、さまざまなタイプのヒーロー像をビビッドに描いていくドラマをラインアップしていきたい」といい、「フジテレビの五つ目となるドラマ枠なので、よりコンセプチュアルにすることで既存枠との差別化を図りながら、視聴者に深く刺さるエキサイティングなドラマ」を目指すフジテレビの「水10ドラマ」。まずは、4月13日スタートの第1弾「ナンバMG5」に注目だ。

　◇地上波放送×ストリーミング配信、1年限定…テレ東は「さらにもう一つ」

　TBS、MBS、テレビ東京はそれぞれ深夜帯にドラマ枠を新設。TBSの「ドラマストリーム」（火曜深夜0時58分）は、地上波放送の1週間前に最新話を有料配信し、地上波放送を見た視聴者が、すぐに次の話を楽しめるという、新形態のドラマ枠となる。

　4月5日スタートの第1弾「村井の恋」は、マンガサービス「LINEマンガ」限定のレーベル「ジーンLINE」で連載中の、島順太さんの同名マンガが原作のラブコメディー。女優でモデルの高橋ひかるさんが同局ドラマ初主演し、男性キャラクターとの恋愛を楽しむ「乙女ゲーム」のキャラクターに本気で恋をする女性教師と、その女性教師に恋する男子生徒の恋愛模様を描く。

　同枠では今後も「ティーン層や働く女性をメインターゲットに、恋愛ドラマを中心にラインアップ」するといい、第2弾として、大政絢さんの同局ドラマ初主演となる「理想ノカレシ」の放送（5月末から）を予定している。

　MBSの「ドラマシャワー」（木曜深夜1時29分）は、1年限定のドラマ枠になるという。4月21日スタートの第1弾「不幸くんはキスするしかない！」は、露がも子さんの同名マンガ（リブレ）が原作。不幸体質の福原幸多と幸運体質の篠宮直哉が、大学の新学期に偶然出会い、とある勘違いから恋人として付き合うこととなってしまう“BLラブコメディー”で、俳優の曽田陵介さんとダンス・ボーカルグループ「lol（エルオーエル）」の佐藤友祐さんがダブル主演を務める。

　深夜ドラマに力を入れるテレビ東京は、この春、八つ目となる深夜ドラマ枠を火曜深夜0時半に新設した。4月5日スタートの第1弾「汝の名」は女優の山崎紘菜さんと北乃きいさんがダブル主演。「輪（RINKAI）廻」で第7回松本清張賞を受賞したことでも知られる明野照葉さんの同名小説（中公文庫）が原作。女王様と奴隷のような関係を築き上げた「勝ち組」の姉と「負け組」の妹の奇妙な関係を描くホラーサスペンスで、山崎さんは姉の麻生陶子、北乃さんは妹の久恵を演じる。

　同局の大庭竹修編成部長は「深夜ドラマは今でもかなり数が多いですが、さらにもう一つ枠を増やして、テレ東といえば深夜ドラマと思っていただけるようなブランド力を付けて、放送だけじゃなくて、配信も含めてやっていこうと思っています」と意気込みを語っていた。

　◇「朝ドラ」と対をなす帯ドラマ「夜ドラ」は若年層向け？

　NHKはこれまでの「よるドラ」（総合、月曜午後10時45分）に代わって、「夜ドラ」（総合、月～木曜午後10時45分）を新設。「朝ドラ」として親しまれている連続テレビ小説と同じ、各話15分のドラマを月～木曜に放送する帯ドラマ枠となる。

　4月4日スタートの第1弾「卒業タイムリミット」は、大藪春彦賞を受賞した辻堂ゆめさんの同名小説（双葉社）が原作のミステリーで、主人公ら4人の高校生が、卒業式直前に「誘拐の謎を解け。真相は君たちにしかわからない」と書かれた差出人不明の挑戦状の謎に挑む姿を描く。主演は特撮ドラマ「ウルトラマンタイガ」（テレビ東京系、2019年）などで知られる井上祐貴さんで、桜田ひよりさん、西山潤さん、紺野彩夏さんも出演する。

　「よるドラ」時代は、「ゾンビ」「地下アイドル」「RPG」「性」に関することを主題に実験的で挑戦的な作品も多かったが、「夜ドラ」では、より若年層に向け、「旬なキャストを起用し、続きが見たくなる話題の原作やオリジナルドラマをラインアップ」するという。第2弾として「今日から俺は！！」などで知られる西森博之さんのマンガを、俳優の眞栄田郷敦さん主演で実写化する「カナカナ」の放送（5月16日スタート）が決定。帯ドラマの老舗「朝ドラ」と対をなす「夜ドラ」は果たして定着するのか、今後の動向にも注視したい。