ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」「ヒーリングっど プリキュア」などで知られる人気声優の悠木碧さんが、企画、原作、キャラクター原案を担当する「YUKI×AOI キメラプロジェクト」。アニメ化を目指し、マンガ、楽曲などを展開しており、「月刊アクション」(双葉社)で連載中のマンガ版「キメラプロジェクト:ゼロ」のコミックス第1巻が発売された。悠木さんは本気だ。ちょっと意見を出した、監修を手伝った……などというものではない。キャラクターを考え、マンガ版やオーディオドラマの脚本を書き、自身もキャラクターを演じる。さらにはPR、戦略も考える。そこまでやるのか!?と驚かされるほど、細部までこだわり抜いている。自身も「オタク」という悠木さんは、アニメ化という夢を現実にするために、奔走している。悠木さんに同プロジェクトへの情熱を語ってもらった。
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2019年、「キメラプロジェクト」の始動が発表され、悠木さんが、言葉から生まれたキメリオというキャラクターを描いたビジュアルが公開された。言葉の“擬獣化”がテーマで、人の言葉から生まれた生き物(キメラ)のキメリオが登場する。優しい気持ちで紡がれた言葉が集まると、優しいキメリオになり、意地悪な気持ちで紡がれた言葉が集まるとちょっと意地悪なキメリオになる。キャラクターを生み出したのは悠木さんだ。「オタクの一つの夢として自分のアニメを作りたい!」という思いがあり、自らが動いた。
「どうやったら実現できるか?と考えた時、自分が声優であるということを絶対的に生かすべきだし、今までの仕事の中で、得てきたものをどうやって生かすのか?を考えました。言葉に触れる仕事だから、言葉を大事に思ってもらえるような作品にしたいというところから始まっています。私がやりたいです!と始まって、いろいろな方が協力してくださるようになったんです」
誰かに言われて始めたわけではない。悠木さんが主体となって動き出したプロジェクトだった。しかし、アニメは一人では作ることができない。
「アニメを作ることを最終目的にしていて、どうやったらアニメにたどり着けるか?を含めて、皆さんに楽しんでいただくことを考えていました。まずはSNSを始めて、経過報告をしていこうとしました。協力してくれる方が増えれば……と思っていたんです」
SNSを通じて経過する中で、プロジェクトの輪郭がよりはっきりしてきた。同プロジェクトには、おしゃまで生意気なSUNDAY(サンデー)、ちょっとけだるげなMONDAY(マンデー)など、各曜日をイメージした曜日キメリオと呼ばれるキャラクターが登場する。曜日キメリオは、プロジェクトの中心となるキャラクターだが、最初はSNSで宣伝するために生まれたキャラクターだった。SNSを運用する中で、曜日キメリオが人気を集め、「曜日キメリオを膨らませよう!」と方向性を固めていった。
SNSを運用する中で、プロジェクトに賛同してくれる“仲間”が増えていった。マンガ版を手がけるひつじロボさんもその一人だ。
「ひつじロボさんはかなり初期の段階から、ファンアートを描いてくださっていたんです。私よりもキメリオのよさを理解してくださってる!というくらいで、この人と絶対にご一緒したい!とオファーさせていただきました。元々、ケモノのイラストのお仕事もされていて、これは運命の出会いだ!と勝手に思って(笑い)。快諾していただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。とにかくお仕事が丁寧な方なんです。ひつじロボさんと出会えていなかったら、マンガ化できていませんでした」
悠木さんが作詞を担当し、ヒャダインこと前山田健一さんが作曲を担当した楽曲も発表するなど豪華スタッフがプロジェクトに関わっている。
悠木さんが自らプロジェクトを進める中で「ビジネスにするのって、こんなに大変なんだ……」と感じているという。それだけに、プロジェクトが形になっていく感動も大きいようだ。
「声優は、既にビジネスになっているところで呼ばれて、キャラクターを演じます。ゼロから立ち上げて、商品価値を見いだしてくれる“大人”を探すっていうのが、まず難しいんです。マンガになることも奇跡みたいですし、楽曲ができた時もすごく感動しました。一緒に夢を見てくれる大人の方々がいなければ、できないことです。ファンアートを描いていただけるとすごくうれしいですし、全てがうれしいんです。自分の子供が社会でちょっとずつ愛していただいているようで(笑い)。自分が関わったものを喜んでいただく……というのはこれまでもあったのですが、改めてその喜びを深く感じています。私がこれまで参加させていただいてきた作品も誰かの子供なんだ……と改めて感じました」
マンガやボイスコミックムービーなどは全て悠木さんが自ら原作を担当している。監修ではなく、自らが脚本を執筆しているというから驚きだ、
「私のメモアプリには全ての脚本が入っています。仕事の移動の時間に書いたり、仕事と仕事の合間に喫茶店などで書いたりしています。編集の方、プロの方の目で見ていただき、アドバイスをいただき、脚本として成長させていっています。誤字のチェック、色校の確認、装丁、特典をどうするか?もみんなと一緒に考えています」
悠木さんは「キメラプロジェクト」は「自分の子供のよう」と表現するが、そこまでやるのか!?というくらい細部までこだわり抜いているのだから、子供なんだ……と納得してしまう。
「ファンボックス(コミュニティー)の運営もしていますし、週1で会議もしています。でも、これって自分が今まで参加してた作品で誰かが担っていた仕事なんです。今まで知らなかったことばかりで、それを見たかったんです。自分が口出ししたいという意味ではなくて、皆さんがやっている仕事を体感したかったんです。私は生まれてから役者しかやったことないから、ほかの仕事を知りません。本当の本業の方々に比べたら、一部しか見えていませんが、一緒にやらせてもらえることで、すごい!とショックを受けることも多いんです。新たな体験をたくさんさせていただいています。いろいろなことが見えてきて、めちゃくちゃ面白いと思いましたし、すごく大変だとも感じています」
悠木さんは、レギュラーを何本も抱える売れっ子声優だ。一体、いつそんなことをする時間があるのだろう?とも思うが、「どうしているんでしょうね。自分でもよく分かりません……。面倒だと思ったことは一回もないですね。新鮮なことしかないです」と笑顔で話す。それくらい夢中になっているのだろう。
声で表現する声優の経験も生きている。声優だからできる表現、発想もある。
「脚本を書きながら、声優はあの人がいいな……と声から想像するんですね。声の印象を文字にするように、この子たちのせりふがどんなふうに聞こえるといいのかな? どういうテンポで会話できたらいいのかな?と想像しながら生まれてきます」
「めっちゃわがままを言わせてもらいました」とキャスティングにもこだわった。悠木さん自身がサンデー/カルパを演じるほか、鬼頭明里さん、寿美菜子さん、雨宮天さん、田村睦心さん、早見沙織さん、佐倉綾音さん、松岡禎丞さんら豪華声優陣が集結した。悠木さんの共演者へのリスペクトと愛、共演者の悠木さんへの信頼があったから、“わがまま”が通ったのだろう。
「一生に何度もできる企画ではありませんし、この子たちはもしかしたら私の最後の子供になるかもしれません。だったら、私が好きな人たちに演じていただきたいと思ったんです。どう転ぶかも分からない段階で、参加していただくことになり、本当にありがとうございます!と感謝の気持ちでいっぱいです。この子たちをより立体的に想像していただきたかったし、キャストは早めに発表させていただきました」
悠木さんは「キメラプロジェクト」について「私の欲の塊」と説明する。キメリオは可愛いが、ただ可愛いだけではない。一筋縄ではいかない魅力もある。
「私、人間のダメな部分がすごく好きなんです。短所を愛し、長所を尊敬するといいますか。短所があるから、人と人が補い合うし、短所は人の居場所を作ることもあります。キメリオは、人間の言葉から生まれているので、人間の短所を確実に引き継いでいます。キメリオと人間の倫理感は違うけど、でも何が違うんだろう?と考えながら書いています。結構、残酷なところもあります。でも、愛情はあるつもりです。編集さんがコミックスの帯の『闇甘』というコピーを付けてくださいました。確かに、闇があるし、甘くもあるんです」
アニメ化を目指すという目標は最初から変わらない。
「コロナ禍で難しいかもしれませんが、イベントもやりたいし、海外でも展開したいです。ケモノは海外でも人気ですからね。海外でも愛していただける部分がたくさんあるはずです。私情も多いのですが、マーケティングも考えています(笑い)。抜群に好きなキャラクター、声優の皆さんしかいなくて。自分が芝居もできて、すごく好きなイラストレーターさんに描いていただいて……。こんなに幸せなオタクっていますか? 継続がこれからのテーマになってくるので、継続できるようにペース配分を考えながら走っていきます。今は1巻が出たところなので、走ります!」
悠木さんが「キメラプロジェクト」について語る時、目をキラキラさせて、終始笑顔を見せていたことが印象的だった。プロジェクトだけでなく、スタッフ、声優陣などへの愛も強く感じた。愛にあふれたコミックス第1巻をぜひ手に取ってほしい。ファンの応援がプロジェクトのさらなる発展につながるはずだ。
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