女優の福地桃子さんが主演を務める映画「あの娘は知らない」(井樫彩監督)が9月23日に公開された。孤独の中、日々を静謐(せいひつ)に生きる主人公・中島奈々(福地さん)と、奈々が旅館を営む町に行き着く藤井俊太郎(岡山天音さん)の「喪失」を抱えた2人の新しい紐帯(ちゅうたい)と希望を描く同作。 静岡県伊東市にある海辺の町・宇佐美が舞台で、「その土地の空気が伝わってきて、私はそこにとても感動しました」と明かす福地さんに話を聞いた。
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「あの娘は知らない」は、芸能事務所「レプロエンタテインメント」による映画制作プロジェクト「感動シネマアワード」でグランプリに選ばれた企画で、脚本ができる前に「井樫監督とお互いがどんな人なのか、お話させてもらう時間がありました」という福地さん。
その時に井樫監督が感じたことが奈々という役には投影されているといい、「“あて書き”をしてもらった役を演じる経験は初めてで、とても貴重なことだなと感じました。自分と重なる部分に役のヒントがあると思ったのですが、そんなに簡単なものではなく、奈々と私は育った場所も境遇も全く違っていたので、その中で奈々が抱えているものをどう表現するのか、というのはとても大きな課題でした」と振り返る。
一方、撮影現場では、宇佐美という町の空気、共演の岡山天音さん演じる俊太郎役とのやりとりの中で、引き出してもらった部分が大きかったといい、「井樫監督も自分の中から出てきたものを大切に演じてほしいと私に伝えてくれました」と告白する。
「準備はもちろん大切なんだけれど、そのとき感じたものをそのまま見たいという言葉をを受け取り、それを心に置いていました。一緒にお芝居をしているような距離感で、声をかけてくださって、とても心強かったです」とうれしそうにほほ笑む。
映画では、もうこれ以上傷付きたくないと願い、静かに暮らしていた奈々が、亡き恋人の過去を求め、町へとやってきた俊太郎と出会ったことで、止まっていた時間が動き始める。
今回の奈々役を通して、「人と関わらなければ出会わない感情ってあるんだなってことを知ることができた」と話す福地さん。「この企画が始まって、もう3年くらいたつのですが、撮影して、公開を迎えてという、自分が過ごしてきた時間の中で、これからも人との関わりを大切にしたいなって気持ちになれたのは大きかったですし、一つ一つの出来事が前向きに進んでいたように思えて、体が軽くなるような気持ちになりました。見てくださった方にも届くといいなと思います」と語った。
福地さんは、小栗旬さん主演のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に北条泰時(坂口健太郎さん)の妻・初役で出演している。初登場は、7月31日放送の第29回「ままならぬ玉」。それ以前から視聴者の一人として「ドラマを楽しませてもらっていた」といい、「画面から伝わる役者の皆さんのエネルギーの強さにとても惹(ひ)かれて。あそこでお芝居をできるのはとても貴重なことなので、とにかく皆さんのように楽しめたらいいなって気持ちで撮影に入らせてもらいました」と話す。
福地さんにとって「鎌倉殿の13人」は初の大河ドラマで、途中から撮影に参加することに「不安な気持ちもあった」というが、「『現場はどんな空気なんだろう?』と想像しながらだったのですが、とても温かく迎えてくださったのが、とても印象的でした。初日からお芝居しやすい環境を作ってくださって、コミュニケーションを取ってくださったので、それはとてもありがたいことだなと思います」と明かす。
初の中には、“育ての親”の八重(新垣結衣さん)ゆずりの優しさと強さが共存。9月4日放送の第34回「理想の結婚」では、そんな初が泰時の頬をはたくシーンが登場した。泰時の父・義時(小栗さん)が、のえ(菊地凛子さん)を“新しい妻”に迎えることに対して、前妻である比奈(堀田真由さん)のことを思って、思いやりのない言葉を次々と投げつける泰時だったが、初は反射的に泰時の頬を平手打ちする。
泰時がその場を立ち去ったあと、初は義時に「分かっていると思うんです。あの人(泰時)だって」「比奈さんがいてくれてどんなに救われたか、よく話してくれます。分かってはいるんです」と泰時の気持ちを代弁するが、福地さんは「二人(初と泰時)の関係性がものすごく分かるシーンだと思いました」と振り返る。
福地さんは「撮影に入ってまだ日が浅いとき。3日目くらいでした」と明かした上で、「本番は緊張していたのですが、小栗さんが『思いっきりやっていいからね』と声をかけてくださって。自分の中では気持ちのまま思いきり、それを坂口さんも受け止めてくださいました。声をかけてくれることもありがたいなぁと思いましたし、皆さんの優しさを感じました」と感謝する。
「初は、泰時さんの真面目で真っすぐなところに魅力を感じながら、何かあったときに手を差し伸べるような、常にそんな気持ちでいるのかなと思っています。父上(義時)と泰時さんの間に立って、バランスを取るような、そういう初の“器の大きさ”を感じたシーンでもありました」としみじみと語っていた。
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