ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
マンガ「アリスと蔵六」などの今井哲也さんのマンガが原作の劇場版アニメ「ぼくらのよあけ」(黒川智之監督)が、10月21日から公開される。2049年を舞台に、宇宙とロボットが大好きな主人公・沢渡悠真が宇宙からきたという“未知なる存在”に出会い、極秘ミッションに挑む姿が描かれる。脚本を担当するのは、アニメ「交響詩篇エウレカセブン」などで知られる佐藤大さんだ。佐藤さんに、アニメ化にあたって大切にしたことを聞いた。
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原作は、2011年にマンガ誌「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載されたマンガ。アニメは「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズで演出を担当した黒川さんが監督を務め、「ぐらんぶる」などのゼロジーがアニメを制作する。女優の杉咲花さんが主人公の沢渡悠真の声を演じ、悠木碧さんが人工知能搭載の家庭用ロボット・ナナコを演じる。
原作には“子供たちのひと夏の冒険”の中に、AIやシンギュラリティー、ファーストコンタクトなどさまざまな要素が詰め込まれている。佐藤さんは「SFとしても、ジュブナイルとしても魅力的だし、とても団地愛も感じられる作品で、すごくファンになりました」と印象を語る。原作者の今井さんとは、共に団地好きユニット“団地団”のメンバー同士で「仲良くさせていただいていたので、このお声掛けをいただいた時は『やるしかない』と、とてもうれしかったです」と話す。
脚本の執筆にあたり、最初の数カ月はプロットを考えた。JAXA(宇宙航空研究開発機構)に行ったり、原作に登場する悠真たちが住む阿佐ヶ谷住宅の跡地にロケハンに行ったりとリサーチした。阿佐ヶ谷住宅は既に解体されていたが、当時の写真を見て、地図を作り、イメージを膨らませていった。
「阿佐ヶ谷住宅の地図を作って、どういう位置関係か調べました。ほぼ9割が団地内で終わる話なので、どういった距離感で移動しているのかなどを見ることが最初の1年弱の作業でした。最後の半年は、2週間に1回、僕が直した脚本について今井さんと監督とプロデューサー陣で、オンラインで毎回7、8時間ぐらいかけて話していました」
アニメ化にあたり、脚本で苦労したのは尺の問題だった。
「10話の原作とはいえ、120分前後の作品にするとなると短くしなければならないことが分かっていたので、その作業が一番大変でした。原作のコアは変えないけれど、でも尺に入らないからどこかは変えなければいけない……というせめぎあいがありました。切ってつなぐだけならとても簡単だし、一字一句せりふを変えないのであれば“原作通り”という印象になるけれど、そういう作り方はせずに今井さんや監督と一緒に取り組みました。このすてきな原作を損なわず、今作で初めて触れる人にも原作を読んでもらえるようなものにしたい、ということが最大の挑戦でした」
作中で描かれるのは、オートボットが活躍する少し先の未来だ。原作ではごく自然な形で日常に最先端科学が溶け込んでいるように描こうとした。
「SFのガジェット感をがっつり押し出す作品ではないと思ったので、あまり飛躍しないように。いわゆるネットワークの描き方や学校のIT化も、現代の延長線上にありながら、『あるかもしれない』というくらいの形にしています。一番飛躍しているのはナナコが空中浮遊していることで、あの技術は謎ですが(笑い)。ナナコたちオートボットの技術力も、現在から想定できる範囲内に……ということは大切にしました。でも細かく見てみると、国産ロケットが最新型で、今はまだできていない番号になっていたり、国際宇宙ステーションも“2”になっていたりする世界として描いているんです」
◇“うそ”を描くことに「とても深い意味がある」
原作の中の“二重構造”も大切にした。
「少年たちの話であることや、ひと夏の冒険ということはもちろん大前提ですが、それだけではない部分……例えば人間のいいところや悪いところなどを断片的にでも描くことで、人とは違うタイムスパンで生きている“二月の黎明号”やナナコが人間の営みをどう観察していくのか、という二重構造になるように。黎明号とナナコが、人間を見てどう思ったのか、人間と触れ合ってどう変わっていくか、それがもうひとつのテーマという感覚でした」
原作では、子供たちのうそやオートボットのうそなど、“うそ”がひとつのキーワードともいえる。今回のアニメでも、そうした“うそ”について描くことに深い意味があると感じたと佐藤さんは言う。
「原作には『うそをつけるのにつかないことが、人間のすごいところ』というナナコのせりふがありますが、『うそをつく』ことが、いいのか悪いのか……ということを違う形で見せたいと思いましたし、そこは『今やる意味がある』と感じていました。“うそをつく”という行為をする人たちが、子供たちにとってどう見えているのか。かといって、うそをついてはいけないのかというと、原作では『人間の営みの中では、いいうそもある』ということも描かれているんですよね。だからナナコがつくうそもあるし、悠真のうそもあるし、いろいろなタイプがある。『真実であることが正義』ということはすごく一面的だと思っていたので、このテーマを今描くことはとても深い意味があると思いました」
今作は現在より少し先の未来が舞台だが、そこで描かれている人とのコミュニケーションはいつの時代でも変わらない、普遍的なものだ。そしてその描写こそが、今作のもう一つの魅力でもある。
「僕ら自身が小学生の時でも、この時代で描かれている40年後でも、子供たちが初めて友達を作ったり、女の子を気にしたりする瞬間は変わらない、と思って作っていました。10年前の原作を今アニメ化しても、10年後を舞台にしてもきっと変わらない普遍的な部分だと思うので、そこは親の世代も子供たちも“自分ごと”として楽しんでいただければうれしいですね」(河鰭悠太郎)
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