ベトナムの国民的歌手で、デビュー60周年を迎えたカイン・リーさんが来日し、東京・銀座で1月7日、コンサートを開いた。歌手で友人の加藤登紀子さんや、初のベトナムツアーをこのほど成功させたロックバンド「黒ック」のリーダー、KJOさんらが共演し「ベトナムの歌姫」の佳節を祝った。
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カイン・リーさんは1945年生まれ。十代でクラブ歌手としてデビューした後、世界的な反戦作曲家チン・コン・ソンさんとコンビを組んでヒット曲を量産。1970年の大阪万博に合わせて初来日し、代表曲「美しい昔」を日本語で披露。憂愁に満ちたメロディーをハスキーボイスに乗せ、日本人の心をつかんだ。
「美しい昔」は1979年、NHKドラマ「サイゴンから来た妻と娘」の主題歌になったほか、加藤さんや天童よしみさん、島津亜矢さんら大物歌手がカバーして歌い継いできた。ボートピープルとして故国を離れたカイン・リーさんは、米国を中心に活動を続けてきたが、60周年を記念し、昨年からベトナム全土や欧米などでツアーをスタートした。3年ぶりとなった今回の来日と公演は、ファンの要望もあって実現した。
7日の公演では、あでやかな民族衣装アオザイと和装でマイクを握り「美しい昔」のほか「白い夏」「桜色の雨」などチン・コン・ソン・ナンバー10曲を熱唱し、ベトナム人の男性歌手らと約300人の聴衆を魅了。バックではKJOさんらベトナム人3人がピアノ、バイオリン、アコースティックギターでカイン・リーさんを支えたほか、ゲストの加藤さんもヒット曲「百万本のバラ」など4曲でステージに華を添えた。
カイン・リーさんは「チン・コン・ソンのおかげで、いまの私がある。彼と日本を愛しています。本当にありがとうございます」と何度も涙をぬぐい、加藤さんも「私たちはこれからも生き続けましょう」と激励し、ステージ上で固く抱き合った。
ピアノ演奏とバンドマスターを務めたKJOさんは「カイン・リーさんとステージを共にできる機会をいただいたことに感謝したい。彼女のお年を考えたら、今回が最後の舞台となるかもしれないので、恩返しだと思ってこれからも精進し、音楽で日本とベトナムをつないでいきたい」と話している。