名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
人気アニメ「名探偵コナン」の劇場版最新作となる第26弾「名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)」(立川譲監督)の興行収入が4月14日の公開から18日間で、約79億7000万円、観客動員数は約557万人を記録するなど大ヒットを記録。シリーズ初の100億円突破を期待する声も大きい。アニメコラムニストの小新井涼さんが、ファン悲願の100億円突破について語ります。
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4月14日に公開となった劇場版「名探偵コナン(劇コナ)」シリーズの最新作「黒鉄の魚影」が好スタートを切り、初の興収100億円突破が期待されています。
2018年の「ゼロの執行人」公開時には、キーパーソンとなった人気キャラの安室透を「100億の男」にしようとするファンのムーブメントが話題を呼びましたし、昨年公開された前作「ハロウィンの花嫁」が歴代最高となる興収97億円超えを記録した劇コナシリーズ。もはや現在、いつ大台突破を果たしてもおかしくないと思われている状態です。
では、そんな本シリーズが大台となる興収100億円突破に至るには、どんなことが重要となってくるのでしょうか。
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」「ONE PIECE FILM RED」など、ここ3年の間に大台を突破した超大作の傾向もみつつ考えると、それには「公開時期」と「入場特典の有無」という2点が大きなポイントとなってくるように思います。
劇コナの公開時期は、毎年4月。この時期は、GWに向けた絶好のタイミングでもありますが、その一方で、同じく話題作の公開と被る確率が高い時期でもあります。実際に、昨年は公開翌月に「シン・ウルトラマン」や「トップガン マーヴェリック」が、今年も公開数週後に「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が控えていました。
そのため、好スタートを切ってもスクリーンの取り合いが起きやすく、上映回数の変動やランキングの入れ替わりが、特に大きく出やすい時期となっているのです。
上映回数の減少は、単純に興収の伸びを頭打ちにするだけでなく、機会ロスにも繋がり、新たな鑑賞者やリピーターの足を遠のかせてしまう可能性も持ちます。多くの人が映画館に赴く分、激戦にもなりやすいこの時期公開の劇コナには、他の話題作も多い中で上映回数を維持し続けなければならないという難しさがあるのです。
また、劇コナシリーズは、前売り券の特典はあるものの、昨今すっかりおなじみとなった入場特典がほとんどありません。
ひと昔前は、“特典目当て”とネガティブにもみられがちであった施策ですが、昨今の大作で行われたものは、どちらかといえば鑑賞の“きっかけ”としての効果の方が大きかったようにみえます。例えば「そのうち見に行きたいな」くらいの気持ちでいる、下手するとそのまま終映までタイミングを逃しかねない、公開数週後の新規層やリピーターの人たちにも「せっかくなら特典がもらえる日に行くか」と、具体的な鑑賞予定を立てるきっかけになります。
つまり劇コナは、人々の足が徐々に遠のき、強力なライバル作も控える公開数週後に、入場特典による後押しがない中で新規層とリピーターを取り込み続けていかなければならないという難しさもあるのです。
逆にいえば、もしも今回の「黒鉄の魚影」がシリーズ初の興収100億円を突破したとすると、こうした二つのハードルを超えての快挙となるわけです。達成したらファンの方々の喜びもひとしおなのではないでしょうか。
もちろん、興行収入ばかりが映画の評価ではありませんし、たとえ100億円には届かずとも、公開後の反響をみれば、今年の劇コナも満足度がかなり高いことは疑う余地もありません。また逆を言えば、そうした激戦期にあり、入場特典の後押しもない中で、何年も興収90億円以上をたたき出している劇コナシリーズがいかにすごいかも、より一層伝わってきます。
しかしそれとは別に、長年愛されてきた劇コナシリーズがまた一つ新しい記録を生み出すことには、やはり期待せずにいられないものです。今年の劇コナはいったいどこまで盛り上がっていくのか、ゴールデンウイーク中の興行状況も含め、まだまだ目が離せそうにありません。
こあらい・りょう=KDエンタテインメント所属、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約10年前から継続しつつ、学術的な観点からもアニメについて考察・研究し、大学や専門学校の教壇にも立つ。アニメコラムの連載をする傍ら、番組コメンテーターやアニメ情報の監修で番組制作にも参加している。
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