ダンダダン
第12話「呪いの家へレッツゴー」
12月19日(木)放送分
人気アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」のシリーズ最新作となる「劇場版PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE」(塩谷直義監督)が、5月12日に公開された。
常守朱、狡噛慎也が大事件に立ち向かう姿が描かれる。テレビアニメ第2期から同シリーズに参加し、最新作の構成、脚本を手がけた冲方丁(うぶかた・とう)さんは、脚本について「シビュラシステムとの戦いだった」と振り返る。最新作では何を描こうとしたのか? 制作の裏側を聞いた。
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「PSYCHO-PASS サイコパス」は、巨大監視ネットワーク・シビュラシステムにより人の心理状態などを数値化し、管理できるようになった近未来の高度情報化社会を舞台に、厚生省公安局の刑事の活躍を描くSFアニメ。完璧に見える社会が持つ矛盾が描かれた。シリーズ最新作である「PROVIDENCE」は、公安局統括監視官となった常守朱が、外国船舶で起きた事件をきっかけに、かつて公安局から逃亡した狡噛慎也と再会する。狡噛は、海外を放浪した後、外務省海外調整局行動課の特別捜査官となっていた。朱と狡噛は、日本政府、ひいてはシビュラシステムをも揺るがす大事件に立ち向かうことになる。
「PROVIDENCE」は、時系列としては、2019年公開の劇場版3部作の「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐(おんしゅう)の彼方に_」と、同年放送されたテレビアニメ第3期の間のストーリーが描かれる。「PROVIDENCE」のラストが、テレビアニメ第3期の第1話へつながる構成となっているため、2作は並行して制作されたという。
「それが一番大変でした。第3期のスタートは、朱が隔離施設に入っているシーンから始まるわけですが、大事なところは何も見せられない。視聴者に『なんだ?』と思わせて、新しいシリーズ始めるというフックにはなるんですけれど、着地に失敗すると作品が大崩壊してしまう。念入りに命綱をいろいろなところに張り巡らせて、必ずストーリーが決着するように計算していくのがものすごく大変でしたね」
冲方さんらスタッフが制作の上で重要視したのは「朱の信念と合致させる形で事件を決着させる」ことだった。そんな朱と対照的な人物として登場するのが、国外で破壊活動を続ける組織・ピースブレイカーを率いる砺波告善(となみ・つぐまさ)だ。
「砺波は、常に弱者を犠牲にすることによって社会を成り立たせていくという考えを持っています。法によって裁かれるのではなく、ささやかな幸福を味わう人間とそれ以外に世界を分けてしまう。日本はずっとそれをやってきたのだから、今更変化なんかできないという非常に絶望的な考えですね。『PSYCHO-PASS サイコパス』の世界は、誰もがどこかで少しずつ絶望していて、朱のように『本来はどうであったか?』『よりよくなる道はないのか?』といった問いかけが極端になくなってしまった世界なんです。とくに砺波は人間に対する絶望が強すぎて、人間じゃないもの、AIに従うほうがよほどいいと思ってしまっている」
それに対して朱はシステムに全てを委ねることに危険を感じているという。
「朱は、たとえ苦しくとも、何かに全てを委託してしまうと巨大な独裁システムが生まれてしまうから、それだけは何としても避けたいと考えています。このままでは、常にバージョンアップし、進化し続けていくシビュラを誰も止められなくなる。そこで、自分の身をていしてシビュラに対するストッパーを残そうとする。制作陣の間でも共通していた思いは、最新作を描く上で『朱がシビュラに一矢報いる姿を必ず描かなければいけないだろう』ということでした。朱が社会の維持のためにも、自分の信念を貫くためにもその道を選ぶのは必然でした」
「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズは2012年10月にテレビアニメ第1期がスタートし、10周年を迎えた。作中では、2061年にシビュラシステムが確立しており、最新作の舞台はそこから約60年後の2118年の日本だ。まさに遠からぬ未来、近未来を描く「PSYCHO-PASS サイコパス」を制作する上で、冲方さんは「社会との二人三脚」を感じているという。
「『PSYCHO-PASS サイコパス』の怖いところでもあり、すごいところでもあるのが、作っているうちに時間がたつと、だんだん社会が作品の世界に近づいてくるんです。ChatGPTのようなAIが急に身近なものになった。社会が近づいてきて、『PSYCHO-PASS サイコパス』で描かれている悪い面が実現するのは本当に嫌だなと思うのですが、作品を発表する立場からすると、説明しなければいけないものが極端に少なくなったのでラクにはなったんです。例えば、第1期の頃は、シビュラシステムが何をしているのか?と、とにかく説明していたんですよね。それが第2、3期になると、説明しなくてよくなった。人間の何かを数値化するということに対しても『スマートウオッチみたいなものでしょ?』とすんなり理解できる。やはり10年もたつと、社会との二人三脚みたいなのが出来上がってきている感じがありますね」
ストーリー制作は「シビュラシステムとの戦いでもある」と語る。
「第2期の頃は『こういうふうにしたらシビュラの目をかいくぐれるんじゃないか?』ということを主眼にしていました。第3期も劇場版も引き続きそうなのですが、シビュラの目をかいくぐれる方法を考案してはパッチをつけるというか。こちらがハッカーになったような気分で、シビュラをハッキングしようとするわけです。ハッキングに成功したら、二度と成功しないようにパッチをつけていくということを繰り返して、どんどん難易度が上がっていく。シビュラシステム自体も未完成で変化していくので、到底1人の猟奇殺人鬼では逃れられないぐらいの完璧なシステムになって、よほどの財産、資力、人員がなければ対抗できない存在になる。そうでないと、一国を管理するシステムとしては脆弱(ぜいじゃく)すぎるんでしょうね。とにかくシビュラの扱いが毎度毎度本当に大変でした。シビュラとの対決というか、監督と脚本陣、プロデューサー陣がとにかく知恵を絞る。本当に大変な現場でしたね(笑い)」
冲方さんらは、これまでのシリーズで描かれてきた全てのテーマ、全てのキャラクターを“接続”するような総決算として最新作を制作した。
「ドラマも映像も、とにかく今出せる限りのものを出していますので、どのシーンを見てもぐっと引き込まれると思います。個人的には、ラストのくだりは胸を打たれます。劇場版を楽しんでいただいたら、第3期をもう一回見てほしい。そして、さらにまた前のシリーズを全部見てほしいですね」
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