和月伸宏さんの人気マンガ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」の新作テレビアニメが、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」ほかで7月に放送をスタートした。新作テレビアニメは、和月さんがキャラクターデザインやシナリオなど全編にわたり完全監修し、原作を第1話から再構築する。主人公・緋村剣心の大切な存在の一人となるヒロイン・神谷薫を演じるのが、人気声優の高橋李依さんだ。作品に懸ける思い、演技のこだわりを聞いた。

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　◇「薫もありきの剣心」という覚悟

　「るろうに剣心」は、1994～99年に「週刊少年ジャンプ」（集英社）で連載された人気マンガ。幕末に人斬り抜刀斎として恐れられた緋村剣心が明治維新後、不殺を誓った流浪人（るろうに）として、新たな時代の生き方を模索していく姿を描いた。新章の「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編-」が、2017年から月刊マンガ誌「ジャンプSQ.（スクエア）」（同）で連載中。1996年に初めてテレビアニメ化され、1997年に劇場版が公開された。1999年以降、3作のOVAが制作された。俳優の佐藤健さん主演で実写映画化されたことも話題になった。

　新作アニメでは、キャストが一新され、斉藤壮馬さんが緋村剣心、高橋さんが神谷薫を演じるほか、明神弥彦役の小市眞琴さん、相楽左之助役の八代拓さんらが出演する。高橋さんはオーディションで薫という大役を射止め、「驚きが大きかった」という。

　「私は実写映画で初めて『るろうに剣心』に触れたのですが、既に大人気作でしたし、お客さんとして作品を見る側だったので、オーディションを受けられるだけでも光栄でした。だから、どこか結果を気にしていなかった感覚もあって、薫役が決まった時は信じられない驚きの気持ちでした」

　高橋さんが「るろうに剣心」に出演することへの実感が湧き始めたのは、2022年9月のキャスト発表の時だった。アニプレックスのオンラインイベント「Aniplex Online Fest 2022」で剣心、薫のキャストが発表され、斉藤さんと共にステージに立った時のことを「しゃんとしたというのでしょうか。神谷薫役として皆さんの前に立ったことで、自然と感覚が変わっていきました」と振り返る。

　薫は、剣術道場・神谷道場の師範代で、亡き父が残した道場と、人を活（い）かす剣術・神谷活心流を守るべく奮闘する。剣心は、神谷活心流を騙（かた）るつじ切り・人斬り抜刀斎の事件を解決したことをきっかけに、薫のもとに居候することとなる。

　高橋さんが薫を演じる上で大切にしたのは「普通で等身大」であることだった。

　「新作アニメでは、物語の第1話から皆さんに見ていただくということで、まず最初にスタッフの方々と『るろうに剣心』はどんな作品なのか？ということについて話したんです。その中で、かつては人斬りだった剣心が、薫や弥彦たちの等身大の“普通”という感覚に救われていくお話だと。だから、『きちんと普通の感性を持ち続けよう』ということを最初に意識しました」

　等身大ではあるが「薫の引力が剣心を動かす」とも感じている。

　「薫は、神谷活心流の師範代ということで、とても強いし、この年ごろの女の子にしては本当に立派だと思うんですけど、泣いたり笑ったり怒ったりするし、悩む姿も等身大で、そういった引力が剣心を動かす。やはり、薫もありきの剣心なんだという覚悟を持って作品に臨んでいます。目指したい未来が一番近くにあることが剣心の救いになると思うし、時として人斬りに立ち戻りそうになる剣心を引き戻してくれるんだろうなと」

　薫が“剣術小町”であることも意識しているという。

　「薫は怒るシーンも多いんですけど、怒りを出し過ぎてしまうと、剣術小町の範囲からはみ出てしまう。声を張る時もやり過ぎてはいけないと、バランスをすごく意識してアフレコしています。また、道場の師範代を務めるほどの剣術の能力はあるから、剣心たちの戦いをそばで見ている時のリアクションも『剣術ができる人』のそれでないといけない。薫が剣心の技を解説するようなシーンもあるんですけど、その技がいかにすごいかを薫自身も分かっているという温度感になったらいいなと思って挑んでいます」

　◇熱い！チーム剣心　「もっといい作品を作っていきたい」

　メインキャラクターの剣心、薫、弥彦、左之助を演じる斉藤さん、高橋さん、小市さん、八代さんは「チーム剣心」として一丸となって収録に挑んでいる。高橋さんは「収録はすごく楽しいです。同じ芝居感というか、熱量を持ったメンバーがそろったんじゃないかなというぐらいに、みんな向いている方向が近い感覚があります」と語る。

　剣心役の斉藤さんと高橋さんは同じ事務所で「壮馬さんとはデビューしてからずっと一緒にお仕事をやってきて、本当に切磋琢磨（せっさたくま）してきた仲間でもある」という。

　「壮馬さんのきれいな雰囲気というか、たたずまいも含めて品があり、ちょっと謎めいたところもあるところが、本当に剣心役にぴったりだなと感じています。剣心は人斬りと流浪人という二面性があるキャラクターだと思うのですが、それぞれの面を別のキャラクターとして演じているのではなく、どちらの面も剣心として演じてらっしゃるというか。全てに一貫性があるのがすてきだなと思っています」

　チーム剣心では、収録後も互いに芝居について熱く語り合うことも多いといい、「それぞれとしゃべっていると永遠に時が過ぎちゃうぐらいで、本当に皆さんが大好きです」と笑顔を見せる。

　「みんな『もっといい作品を作っていきたい』という熱量がすごくあって、マイク前で演じていても、映像の中で隣にいる感覚になれるし、投げたら返ってくるし、（相手からも）飛んでくる、という感じですね。すごく没入しやすいです」

　◇薫を令和の時代に輝くヒロインに

　新作アニメでは、和月さんの監修の元、原作には描かれていない新しいシーンも追加されるという。

　「新しいシーンでは、きっと和月先生の中でキャラクター像が更に膨らんで、より魅力的なキャラに底上げされているように感じます。大きくエピソードが変わるというよりは、キャラクターの生活感がにじみ出るような、人生をより深く感じられるようなシーンが、ほんの少しずつ加えられていました。私個人として余分なことはせずに、でも必要だと思ったことは提案をしたり、挑戦する気持ちは持って。やはり、先生たちが新しく差し込んでくださった場面は、胸を張って挑めます」

　原作の連載開始から約30年の時を経て、新作アニメとしてよみがえる「るろうに剣心」。高橋さんは、自身が演じる薫もまた「令和の時代にも魅力的に感じてもらえるヒロイン」を目指しているという。

　「もちろん、当時の魅力も損ないたくないし、令和の時代にも輝ける等身大の薫像はどんなものだろう？と、都度都度皆さんと相談しながら収録に臨んでいます。薫ちゃんという人間と向き合うことを諦めずに、挑んでいきたいです」