ドラゴンボールDAIMA
第6話 イナヅマ
11月18日(月)放送分
スタジオジブリの宮崎駿監督の最新作となる劇場版アニメ「君たちはどう生きるか」が公開されて約1カ月が経過した。世界的な巨匠の新作とあって注目されながら一切宣伝しないプロモーション戦略でも話題を集め、8月6日までで累計観客動員が約361万人、興行収入が約54億8000万円とヒットしている。これまで発売されていなかったパンフレットの発売を8月11日に控える中、果たして100億円を突破できるのか、突破できるとすればいつごろなのか、が次のポイントだろう。アニメコラムニストの小新井涼さんが公開1カ月を前に、“宣伝なしの宣伝効果”のメリット、デメリットと今後の展望を分析する。
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7月14日、宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」がついに公開されました。
予告映像や内容の解禁が一切なしという前代未聞の情報制限を経て公開された本作ですが、果たして実際に公開された今、その“一切宣伝なしの宣伝効果”は生まれているのでしょうか。改めてその反響を概観してみます。(内容に関するネタバレはありませんが、エンドロールの記載等に言及しています)
まずポジティブな反響として、宣伝なしの宣伝効果は、公開後早々にさまざまな形で表れているのが見受けられました。例えばSNS上では、公開直前頃からさまざまなクリエーターによるポスタービジュアルのパロディー絵が投稿され、「君たちはどう〇〇か」とタイトルをもじった投稿など、内容が隠されているがゆえのちょっとした大喜利的なネットミームも生まれています。
本編内容に関わるものとしては、公開日に報道されたキャスト関連の話題も盛り上がっていました。これは恐らく、公開までキャストを明かさなかったことをはじめ、映画のエンドロールに配役の記載がないことや、劇場パンフレットが発売されていなかったこととの相乗効果もあるのでしょう。配役を公表していない人や、名前を発表されてもどの役だったか分からない出演者も少なくなく、エンドロールやパンフレットで“答え合わせ”ができない中、確認のために再度劇場に足を運ぶ……という効果も生んでいるようです。
新たな鑑賞者を増やす効果としては、公開後、作品を見た人々の感想が大きく賛否に分かれたことも後押しとなっているのかもしれません。絶賛する人もいれば辛口な感想を持つ人もいる上に、判断材料となる予告映像やパンフレット等も一切ないという現状は、面白いのかどうかは実際に自分の目でみて判断するしかないという状況を作り上げてもいるのです。
こうした状況は、事前に情報が解禁されていたり、あの本編の、どこか一部だけを切り取った予告映像があったら恐らく起こり得なかったことでしょう。また、未鑑賞者に概要を伝えるのが難しい本作の内容を事前に中途半端に伝えていたとしたら、むしろ宣伝としても逆効果となっていたかもしれません。
その意味でも、そして既に大ヒットといえる興収54億円を突破している点でも、一切宣伝なしの宣伝は、十分に効果を生んだといっても過言ではないでしょう。
一方で、その前代未聞の情報制限が逆に仇となってしまっているところがあるとしたら、それは公式から公開されている情報が少ないために、ネタバレを配慮して口コミの拡散が抑えられてしまうことがある点です。
正直本作は、ネタバレなしの独断と偏見による個人的な感想としては、刺さる人にちゃんと届けば、近年の興収100億円突破作品と近い熱量を生むポテンシャルのある、令和に盛り上がるタイプの作品だと思います。しかしその刺さるポイントを伝えるにはある程度のネタバレも必要ですし、でも刺さるだろう人にはネタバレなしで初見してほしいところもあるしで、熱量がある人ほど口コミが抑えられてしまい、刺さる人には確実に刺さるのにそこまで熱が浸透しきれていないもどかしさも個人的には感じています。
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」公開時などのように、一定期間の後、ネタバレ解禁を促す流れができれば状況は変わるかもしれませんが、口コミに大きく依拠した宣伝を取った作品としては、これは結構な痛手ともなってしまうかもしれません。
公開からもうすぐ1カ月、未だその感想は賛否に分かれる本作ですが、それでも既に筆者含め複数回鑑賞者が出るほどの熱気が生まれ、口コミと共に話題も穏やかに広がり続けているように思います。
しかしその一方で、これからの夏休みシーズンで話題作が控える中では、口コミが広がりきる前にスクリーン数や上映回数が限られていってしまう可能性もゼロではありません。それまでに、未鑑賞の人をはじめ、既に配信で見よう、映像やパンフレットが出てから見るか決めようと思っているといった人たちを、新たにどれだけ劇場に呼び寄せることができるのかも、これから重要となってくると思います。
そのためにも、公開からもうすぐひと月を迎えようとする今、8月11日のパンフレット発売ももちろんですが、映像の公開ないし、何かもうひとつ大きな起爆剤となるような話題が欲しくなってくる時期に差し掛かってきているのかもしれません。
こあらい・りょう=KDエンタテインメント所属、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約10年前から継続しつつ、学術的な観点からもアニメについて考察・研究し、大学や専門学校の教壇にも立つ。アニメコラムの連載をする傍ら、番組コメンテーターやアニメ情報の監修で番組制作にも参加している。
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