ダンダダン
第7話「優しい世界へ」
11月14日(木)放送分
声優でシンガー・ソングライターの楠木ともりさんの新たなシングル「シンゲツ」が5月8日に発売された。表題曲は、テレビアニメ「魔王学院の不適合者II ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」の第2クール「選定審判編」のエンディングテーマで、バンド「L’Arc~en~Ciel(ラルクアンシエル)」のリーダーでベーシストのTETSUYAさんがプロデュースした。楠木さんは「幼い頃から尊敬してやまない」という「L’Arc~en~Ciel」とTETSUYAさんと夢のようなコラボを実現した。
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楠木さんは「L’Arc~en~Ciel」について「元々、姉が好きで、小学生の時に私もハマりました」と語る。
楠木さんは「魔王学院の不適合者」のテレビアニメ第1期のエンディングテーマ「ハミダシモノ」も担当した。「ハミダシモノ」を発表した2020年から約4年がたち、第2期の第2クールで再びエンディングテーマを担当することになり、TETSUYAさんにプロデュースしてもらうことを考えたという。
「ダメ元ですよ。自分にとって雲の上の上の上の存在なので、絶対にOKをいただけないと思っていました。『魔王学院』は私にとって大切な作品ですし、2度目のエンディングテーマで、自分にとって大事なものにしたいという思いがあり、何となくこういう楽曲にしたいというイメージがありました。その頭の中のイメージがTETSUYAさんと結びついて、ダメ元で聞いてみますか?となっていたのですが、何とOKをいただいたんです。ウソみたい!?となりました。今回の『魔王学院』のストーリーは、はかない、切ないところがあります。TETSUYAさんは、ポップ、メロディアスなどさまざまな楽曲を手掛けられていますが、切なさのあるドラマチックな楽曲が好きで、そのイメージで作っていただけたら、最高の楽曲になる!と思っていました。本当に作っていただけるなんて……。うれしいです!」
TETSUYAさんとやり取りする中で楽曲のイメージが具現化していった。
「TETSUYAさんがこれまで手掛けられた楽曲のこういうところが私が好きで……とサウンドについてお話をして、作っていただきました。自分が考えていたよりも遙かにすてきな楽曲を作っていただけたんです。データをいただいた時、TETSUYAさんの声で仮歌が入っていたんです。今、とんでもないものを聴いている!となって……。スッと入ってくるメロディーライン、力強さの中にある切なさ、ドラマチックなところがあり、私が歌うことを想定してバランスを考えてくださったのか?という印象がありました。この曲が発表された際、TETSUYAさんが、私の声を聴いて、曲を作ってくださったことをコメントされていて、そうだったんだ!と後で知りました。恐れ多くて、『私を想定して作ったんですか?』とは聞けないですから(笑い)。レコーディングのディレクションをしていただいたり、コーラスでも参加していただき、手厚く全てプロデュースしていただき、なんてすてきな方なんだろう!と改めてファンになっちゃいましたね」
楽曲の中の“楠木ともりらしさ”をどのように感じたのだろうか?
「重めというよりは、キラッ、パキッとした音色が使われていて、ベースはドライブ感があって、すごく動いているのですが、重すぎない音色の印象があり、女性ボーカルであることを想定してくださっているのかな?と感じていました」
楠木さんは、常に挑戦を続けている。「シンゲツ」でも挑戦があった。
「当初は『ハミダシモノ』のようなバンドサウンドで、声をしっかり張るような歌い方を想定していましたが、原作の秋先生からは、もう少しはかなさがほしいというリクエストをいただき、ボーカルワークをブラッシュアップしていきました。声を張る曲ではあるのですが、パキッとしすぎずに、少し切なさとかはかなさも出していこうとして、プリプロでも何度も調整して、歌い方を定めていきました。いつもとは違う歌い方なので、ここはどうまとめよう?となった時、TETSUYAさんにアドバイスをいただき、夢のような時間でした」
楠木さん自身が歌詞を手掛けた。
「これまでTETSUYAさんの楽曲の歌詞を書いてきたのはほとんどhydeさんくらいなんじゃないかな…と。恐れ多い……となって。『魔王学院』の情景が浮かんでくるようなメロディーラインなので、『ハミダシモノ』よりも抽象的でありつつ、映像が浮かぶような言葉選びを意識しました。新月に願いを込め、満月に至るまでにそれが叶うという言い伝えがあり、今回の『魔王学院』のストーリーは、それぞれが自分の過去を認め、自分の意思を持って願いをかなえていくところが心に残っていたので、そこに重ねてタイトルを付けました」
「魔王学院」と楠木さんといえば「ハミダシモノ」のイメージも強い。
「『魔王学院』は皆さんの応援があって第2期が制作されることになりました。『ハミダシモノ』を書いている時は第2期があることを想定していなくて、『魔王学院』への思い、メッセージを詰め込みすぎたところもあります。だから、今回はどうしよう?となったところもあったのですが、『ハミダシモノ』の要素を入れつつ、新たな視点で歌詞を書こうとしました。『ハミダシモノ』のよさを受け継ぎつつ、新しいものを作り出せたのは、TETSUYAさんにプロデュースしていただいたからできたことです。感謝してもしきれないです」
「シンゲツ」は、TETSUYAさんのプロデュースによって完成した。楠木さんは「なんて言葉にしたらいいのか分からない……。感無量です」と笑顔を見せる。
「最初に仮歌を聴いた時、TETSUYAさんの声が入っていたこともあって、こんなすてきな楽曲を自分が歌えるのかな?と不安もありました。ディレクションをいただき、TETSUYAさんに支えていただき、徐々に自分の曲になっていくようでした。不思議な感じです。すごい機会をいただきました。
カップリングの「MAYBLUES」は、楠木さん自身が作詞、作曲を手掛けた。
「シングルなので、TETSUYAさんの楽曲と並ぶことにプレッシャーがありましたが、これまでにない挑戦をしようとしました。これまで鼻歌を作った楽曲に、アレンジャーさんにコードを付けてもらっていたのですが、『back to back』(2023年12月に配信された楽曲)から自分でコードを付ける練習をし始めました。サウンドディレクターのタノウエマモルさんに協力していただき、コードを付ける練習をしているのですが、最初は可愛らしくほのぼのした印象になってしまって、どうしよう!?と教えていただきながら、作曲しました。まだまだ実力がないので、自分の頭の中にあるものを120%アウトプットできず、試行錯誤しながらやっています。もっと勉強しなければいけませんね。いつもライブでお世話になっているバンドの方から『コード理論を知らないから生まれるメロディーもある』とも言っていただいたこともあって、理論的に学ぶよりも自分の感覚にしていけた方が合っているのかな?とも考えています」
テーマは「五月病」だ。
「これまでメッセージ性の強い楽曲が多かったので、いい意味で聴き流せるような楽曲にしようともしました。音数が最小限のパートがあったり、あまり抑揚を付けずに歌おうとしました。5月の発売ですし、五月病をテーマにして、落ち込んでいる時に聴いてもらえる曲にしようとしたのですが、五月病の時は、応援されたいわけでもないし、元気になりたいわけでもないし、どうなってほしいんだろう?と壁にぶつかり、どう書いても『だるい』という内容になって、起承転結がなくなってしまいまして。自分の実体験ではないのですが、例えば会社で上司から怒られたりしたら、すごく落ち込むと同時にちょっとむかつくんじゃないかな?と思ったんです。頑張った結果、落ち込んで、もどかしさを感じているのに、何で頑張っていないみたいに決めつけるんだよ……と。その反骨精神を表現するためにラップを入れるアイデアが出てきたんです。初めてラップをしました。ラップがアクセントにもなり、曲と流れができて、まとまりました」
ちなみに、楠木さんは「毎年、五月病になっています」と明かす。
「気分が落ち込んじゃって、自分に自信がなくなったりします。それを思い出しながら曲を作りました。私は五月病になって、どうにもできなくなって、音楽を聴いたりして現実逃避をしたり、やるしかいない!と自分にムチを打っています。自己否定をしないように、今日も頑張った!と毎日言えるようにしようとしています」
7月15日には日比谷公園大音楽堂(東京都千代田区)、8月10日には大阪城音楽堂(大阪市中央区)でライブを控え、初めての野外ライブに挑戦する。
「LiSAさんやハルカトミユキさんといった私の好きなアーティストが野音のステージに立っていて、すごく憧れがありました。野音が改修する前にどうしてもステージに立ちたかったのですが、実現しました!夏の暑い時期なので、皆さんも体調に気を付けつつ、楽しんでいただけるとうれしいです。ホールやライブハウスとは全く違うライブになるでしょうし、日が暮れてきて、情景が変わるのも面白さなので、楽しんでいただきたいです。何が飛び出るのか分からないライブになるはずです。新曲はやるのかな? そこも楽しみにしてください!」
昨年は自身最大規模のツアーを完走し、12月にはパシフィコ横浜・国立大ホール(横浜市西区)でバースデーライブも開催した。大きな舞台を経験したことで変化はあったのだろうか?
「自信はまだまだないのですが、考え方が変わってきていると思います。メジャーデビュー前は好きな音楽を趣味の延長でやっていたところもあったのですが、聴いてくださる方が増え、関わっていただけるスタッフさんも増えて、プロとしてどんな音楽を届けるのか? どんなメッセージを届けるのか?と皆さんの視点になって考えていかなければと、より考えるようになっています。自分が伝えたいことも大事にしながら、バランスを取っていけたらと思っています」
野外ライブなど今後の活動でもさらに進化した姿を見せてくれそうだ。
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