海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
吉高由里子さん主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合、日曜午後8時ほか)で、藤原定子を演じた高畑充希さん。7月21日放送の第28回「一帝二后」では、姫皇子を出産し、この世を去るという定子の最期が描かれたが、役を演じ終えた高畑さんの心境は? 定子をそばで支え続けたききょう(清少納言)役のファーストサマーウイカさんとの関係や、二人を語る上で欠かせない「枕草子」誕生シーンについて高畑さんに聞いた。
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「光る君へ」は63作目の大河ドラマ。平安時代中期の貴族社会が舞台で、のちに世界最古の女性による小説といわれる「源氏物語」を書き上げた紫式部(まひろ、吉高さん)が主人公となる。脚本を、2006年の「功名が辻」以来、2度目の大河ドラマ執筆となる大石静さんが手掛け、きらびやかな平安貴族の世界と、懸命に生きて書いて愛した女性の一生を映し出す。
高畑さんはドラマに第13回「進むべき道」(3月31日放送)から登場。定子の10代半ばから25歳でこの世を去るまでを演じた。
一家の繁栄を願う父・道隆(井浦新さん)の思いを一身に背負い、一条天皇(塩野瑛久さん)に入内。寵愛を一身に集めるが、時に身内からも理不尽に責められるなど、自分の思いとは相反するように次から次へとつらいことが起こり、最期も悲運に見舞われた定子。一方で、ききょうとは、強い絆で結ばれるようになり、その過程で「枕草子」が生まれた。
高畑さんは、定子について「短いながらドラマチックな人生を歩んだ方」と位置づけ、自身については「最後ゴールテープを切って、バタン!と(倒れる)みたいな感覚」で、「生き切りました」と語る。
そんな定子を“推し”として、そばで支え続けたききょう役のファーストサマーウイカさんについては「ウイカちゃんは撮影の中でも外でもすごく私を“推し”てくださって、それにすごく救われた部分が大きかったです」と感謝する。
「自分自身、何かに憧れたり、“推す”まではいかなくても、何かに対してエネルギーを持つ方の役が圧倒的に多くて。持たれる側の役はほとんど初めての経験だったんです。そういった“推される”役への不安があって、定子を憧れの目で見てもらえる人物像にしなければならない、『いやいやこんな人間だったら推せないだろう』とならないようにと思って、プレッシャーを感じていたので。その点では、ウイカちゃんが、撮影の中でも外でも私をアゲてくれるというか、憧れの存在として扱ってくれたのが、すごく私を楽にしてくれたというか。ウイカちゃんと一緒に“ソウルメイト”のような間柄の役を演じることができて楽しかったですし、よかったなって思っています」
定子とききょうの関係を語る上で欠かせない「枕草子」の誕生は、第21回「旅立ち」(5月26日放送)で描かれた。
家族が一人、また一人とそばから離れ、一条天皇の寵愛も失いかけた定子は、髪をおろしただけでなく、一度は死ぬことを心に決める。しかし、ききょうは「おなかの子のため、お生きにならねばなりませぬ」と説得を試み、その後、まひろの勧めもあって筆をとると、季節ごとの随筆を書き始める。それは「春はあけぼの」と始まっていて……。
桜の花びらに、舞う蛍の光、散り落ちる葉、優雅な弦の響きに乗せシーンは進むと、ついには随筆を読み上げる定子と、それを目撃するききょうの姿が映し出され、ナレーションで「たった一人の哀(かな)しき中宮のために、『枕草子』は書き始められた」と紹介された。
高畑さんも「台本を読んでいちばん好きなシーンだったんですね」とほほ笑む。
「せりふがなく、『枕草子』誕生という大きな出来事を、情景だけで描く。加えて、実際の季節の移り変わりではなく、映像(演出)で四季を感じさせてくれる。台本読んだ時点で『大石(静)さん、すてき!』って思ったことをすごく覚えていて。定子の気持ち、少納言の気持ちは、もちろんそこにあるのですが、情景になじめるようにってことをいちばんに考えて、私はできるだけ感情的にならないように、ただいるだけを心掛けました」
映像美も手伝ってか、視聴者から「大河ドラマ史上屈指の名シーン」と絶賛されたが、「春はあけぼの」という冒頭のワンフレーズを実際に読み上げた高畑さんは「現場では、当時の古い言葉で言うのか、現代語訳で言うのか、私が読むか、少納言が読むか、いろいろなパターンをみんなで試行錯誤して作ったんです」と明かし、もう一つ“秘話”を披露。
「実は私がクランクアップしたあと、映像をつないでみたら、定子が読んだ方が伝わった感じになるんじゃないか、となってもう一度、朗読をしにスタジオに行きました。それくらい俳優陣と制作陣、みんなでどういうふうにすれば、この情景が伝わるんだろうか、本当に悩みながら作った結果、ワンフレーズ、私が読ませていただく形になったんです」
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