結川あさき:「逃げ上手の若君」主演抜てきの新人声優 インタビュー(1) 初めてだらけ 全力で時行に向き合う

「逃げ上手の若君」で北条時行を演じる結川あさきさん
1 / 6
「逃げ上手の若君」で北条時行を演じる結川あさきさん

 「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」で知られる松井優征さんのマンガが原作のテレビアニメ「逃げ上手の若君」。主人公・北条時行役の結川あさきさんは、劇場版アニメ「トラペジウム」などでも活躍する新人声優で、テレビアニメで主演を務めるのは初めて。アニメのオーディションに受かったのも「逃げ上手の若君」が初めてで、「週刊少年ジャンプ」(集英社)の話題作で主演に大抜てきされた。注目を集める結川さんに、「逃げ上手の若君」への思いを聞いた。

あなたにオススメ

 ◇時行と重なるところも

 「逃げ上手の若君」は、“逃げ上手な少年武将”北条時行の流浪と潜伏、逆襲の史実を基に描く“逃亡譚(たん)”。1333年、突然の謀反によって鎌倉幕府が滅亡し、幕府の後継となるはずだった少年・北条時行が、信濃国の神官・諏訪頼重にいざなわれ、逃げて英雄になる道を歩み始める。「暗殺教室」以来、約5年ぶりの松井さんの新連載として2021年1月に「週刊少年ジャンプ」でスタートした。アニメはTOKYO MXほか30局で放送中。

 6月23日、作品のゆかりの地・鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)で開催されたプレミア上映会で、アニメを手掛ける山崎雄太監督は、結川さんの起用理由を「時行の声は難しかった。オーディションで、これだ!という人が現れると思っていたけど、現れなくて、誰かに時行になってもらおうと思った。期せずして主人公にさせられ、成長せざるを得なかったのが時行。だから、結川さんがいいんじゃないか?と思った。エピソードを重ね、どんどん時行になっていくので、楽しみにしていただければ」と説明していた。

 “真っさら”の結川さんはオーディションで大役を射止めた。

 「アニメのオーディションに受かったのは、この作品が初めてです。スタッフの方は私のことを何も知らなかったと思います。最初はテープオーディションだったのですが、スタジオオーディションに進むことになった時点で、マネジャーさんと一緒に立ち上がって喜びました。初めてのスタジオオーディションだったんです。オーディションで初めて掛け合いも経験しました。コロナ禍が長かったこともあって、誰かとマイクの前に並んだこともなかったですし、音響監督さんからディレクションをいただくのも初めてでした。初めてのことだらけで、いろいろなバリエーションを求められる中で、はい!はい!!と返事をして、やれることを精いっぱいやりました。うまいか下手で言ったら、私は及ばないことが多いですし、とにかく精いっぱい時行を演じる!という気持ちで臨みました」

 初めてのスタジオオーディションに合格し、「そっか、決まったんだよな? そうなんだよな……とジーンときちゃって、感動したり、飛び跳ねたりして喜ぶのではなくて、何も考えられませんでした。頭が真っ白になり、何とか自分を落ち着かせようとしました」と大きな衝撃を受けたという。

 山崎監督が「どんどん時行になっていく」と話すように、時行を全力で演じようとした。時行は、時代に翻弄(ほんろう)され、戦いに巻き込まれ、成長していく。時行と気持ちを重ねて、収録に臨もうとした。

 「オーディションで精いっぱいぶつけて、選んでいただいたのだから、現場でも思い切りぶつかろうしました。今の私を全力でやるしかないんです。時行は、自分の意思ではどうにでもできないような流れに巻き込まれ、必死に生きていこうとします。私も時行に対して必死に向き合おうとしました」

 ◇もっともっとやりたい!という気持ち

 収録は、初めてのことだらけだった。結川さんは「大変でした……」と振り返る。

 「何も分からなかったんです。スタジオの扉の開け閉めするタイミングも分からないですし、微妙な間で何をしたらいいのかも分からない。スタジオのイロハを知らなかったんです。ディレクションをいただいて、これで合っているのか? 違うのかな? そもそも何が違うんだろう? 私は正しくできているのかな?と分からなくて……。先輩方を見て、こうやるんだ!と勉強させていただきました。紗弓さん(亜也子役の鈴代紗弓さん)が現場入りする時のあいさつがすごくすてきなので、まねしようとしたり、先輩たちを見ながら、ちょっとずつ学んでいました。普段の生活では学べないことばかりなので、現場で得られるものは全部持って帰りたいという気持ちでした。お芝居もそうですし、少しずつ吸収して、自分に生かしていこうとしました」

 テレビアニメ初主演ということでプレッシャーも大きかった。プレッシャーをポジティブに捉えて、全力で演じようとした。

 「もう私しか時行を演じられないところまできている……と分かっていたことですが、現場に入って実感しました。スタッフや共演者の皆さんの熱意を感じ、プレッシャーもありました。でも、うれしかったんです。みんなが本気で作品に向き合っていて、自分もその一人になっている。プレッシャーではあるのですが、私には必要なプレッシャーだったんです。お芝居で『もっとできるよ!』と言っていただき、何度も何度も挑戦させていただきました。長丁場になることもありましたが、終わると、スタッフの皆さんが拍手をしているのが聞こえるんです。本当にうれしかったです。みんなが同じ方向を向いているんです」

 全12話の収録を終え、成長を実感している一方で、「もっとできる」という思いもある。

 「もっともっとやりたい!という気持ちもあります。以前、担当していただいていたマネジャーさんに、別の作品の感想をいただき、最後に『自分でも分かっていると思うけど、もっとできるよ』と言っていただいたことがありました。『もっとできる』という気持ちでお芝居に向き合っていこうとしています」

 インタビュー(2)に続く。

写真を見る全 6 枚

アニメ 最新記事