解説:22歳の“正統派”南沙良 「光る君へ」“紫式部の娘”好演へとつながる、確かな足跡たどる

NHK大河ドラマ「光る君へ」で賢子を演じる南沙良さん (C)NHK
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NHK大河ドラマ「光る君へ」で賢子を演じる南沙良さん (C)NHK

 吉高由里子さんが主演を務めるNHK大河ドラマ光る君へ」(総合、日曜午後8時ほか)で、主人公・まひろ(吉高さん)の娘・賢子を演じている南沙良さん。2022年の「鎌倉殿の13人」以来、2回目の大河ドラマ出演となったが、“紫式部の娘”として、その成長と聡明さが伝わる凛とした姿で、最終盤へと差し掛かる物語に彩りを加えている。2017年の俳優デビューから約7年、今回の好演へとつながる確かな足跡をたどってみたい。

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 ◇初演技からすごかった? “志乃ちゃん”ではブルーリボン新人賞

 南さんは、2002年6月11日生まれの22歳。新垣結衣さんや川口春奈さん、池田エライザさん、久間田琳加さんらを輩出したローティーン向けファッション誌「nicola(ニコラ)」(新潮社)の専属モデルとして活躍し、2017年公開の映画「幼な子われらに生まれ」で俳優デビューを飾る。

 血のつながらない家族の葛藤を描いた同作で、母の再婚相手に反抗する思春期の長女を演じた南さん。メガホンをとった三島有紀子監督は当時、南さんのことを「『ヨーイ、スタート!』も知らなかったので、本当にお芝居自体初めてだったんですけど、彼女は反応力が天才的。リアルな感情のぶつかり合いを撮りたいと思ったときに、南さんみたいな反射力というか反応力(は必要)。ちゃんと突き飛ばしたときににらみますしね。そういう反射力がすごくある役者さん」と絶賛していた。

 翌2018年には、初主演映画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(蒔田彩珠さんとのダブル主演)が公開。うまく言葉が話せないことに引け目を感じ、周囲となじめずにいる高校1年生の大島志乃として、劇中で歌声も初披露し、第43回報知映画賞や第61回ブルーリボン賞などで新人賞に輝いた。また、映画「無限ファンデーション」(2018年)では即興芝居、「居眠り磐音(いわね)」(2019年)では時代劇に挑戦と、演技で勝負できる“正統派”として地位を固めていく。

 ◇「ドラゴン桜」で民放連ドラ初出演 「鎌倉殿の13人」大姫役では…

 そんな南さんが、より注目を集めるきっかけになったのが2021年4月期の連続ドラマ「日曜劇場『ドラゴン桜』」(TBS系)。民放連ドラ初出演で、「東大専科」の生徒・早瀬菜緒を演じた。菜緒は、今まで何かに本気で打ち込んだことがない、飽きっぽい性格の“イマドキ”女子で、プレッシャーを感じやすい一面もあり、劇中では周囲に対して感情のままに思いをぶつけるシーンが度々描かれた。

 南さんはその都、度菜緒として、自分と周りの生徒との違いに焦りを覚えたり、揺れ動きやすい等身大の高校生の姿を“リアル”に表現。視聴者からも「等身大の女子高生を自然に演じててすごい」「いい意味で普通の子に見える」「うそっぽいところがないのがいい」と反響を呼んでいた。

 活躍は2022年も続き、「女子高生に殺されたい」「沙良ちゃんの休日」「この子は邪悪」といった主演やヒロイン役を務めた映画が次々と公開。同年は「鎌倉殿の13人」で過酷な運命をたどった頼朝(大泉洋さん)の愛娘・大姫役に抜てきされ、大河デビューを果たす。

 第24回「変わらぬ人」では、亡き源義高(冠者殿、市川染五郎さん)を慕い続けるも、そんないちずな思いとは裏腹に、自分の中から冠者殿の面影が日々薄れていくことを実感する大姫。一度は、帝の后になるため京へと向かう決意をするも、高貴な生まれのほかの姫たちとの“生存競争”に勝たなくてはいけないことを知り、戸惑いの中で病に倒れてしまうと、その体は生きることを拒み……。

 あまりにも悲しい大姫の最期を南さんは体現し、見る者の涙を誘った。

 ◇賢子の聡明さがにじみ出るような瞳の輝きと笑顔を見せる

 そして、“登竜門”的な人気CM「JR東日本 JR SKISKI」のイメージキャラクターや、2023年1月期の“月9”ドラマ「女神の教室~リーガル青春白書~」(フジテレビ系)などを経て、挑んだ今回の「光る君へ」の賢子役。

 かつて、母・まひろのように「生きたくはない」と口にすることもあった賢子だが、おじの惟規(高杉真宙さん) の死を挟んで親子関係が“雪解け”へと向かう中、双寿丸(伊藤健太郎さん)との淡い恋も経験し、まひろとの間に見えない絆を強めていく様子が手に取るように分かる演技を、南さんは回を重ねる中で披露しれくれた。

 その成長が生んだ第45回「はばたき」(11月24日放送)の“内裏デビュー”だが、母ゆずりの賢子の聡明さがにじみ出るような瞳の輝きと笑顔を見せた南さん。今後、さらなる大きな役で大河ドラマに戻ってくることを期待せずにはいられない。

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