片渕須直監督:新作アニメ「つるばみ色のなぎ子たち」 「制作進行中」の理由 これまでにない制作体制 次世代を担うアニメーターを育成

片渕須直監督のセミナー「「片渕須直『これまでとは違う清少納言・枕草子・平安時代を描く』」の様子
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片渕須直監督のセミナー「「片渕須直『これまでとは違う清少納言・枕草子・平安時代を描く』」の様子

 アニメ「この世界の片隅に」「BLACK LAGOON(ブラック・ラグーン)」などで知られる片渕須直監督のセミナー「「片渕須直『これまでとは違う清少納言・枕草子・平安時代を描く』」が12月14日、名古屋市内で開催中の国際アニメ映画祭「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル(ANIAFF)」で実施された。片渕監督は、制作中の新作劇場版アニメ「つるばみ色のなぎ子たち」について語った。

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 片渕監督は、長編劇場版アニメを制作するために、アニメ制作会社・コントレールを設立した。「つるばみ色のなぎ子たち」は、2017年頃に準備を始めたが、「制作進行中」ということで、公開時期は発表されていない。時間がかかっているのには、理由がある。アニメーターを育成しながら、これまでにない制作体制で取り組んでいるという。

 「大きな課題がある。平安時代をただ描くだけではない。記号的ではなく、生活を感じられる感覚で描く。通り一遍等の作画ではそれができない。自分たちでスタッフを作り出すしかない。今のアニメーションは、描いたものを演出家、作画監督が描き直すけど、口で言って、それぞれのスタッフに描き直してもらっている。今のアニメーションはスケジュールに追われているけど、次の世代を担えるアニメーターを育てる。最後まで自分のカットだと言える状況を作り出したい」

 育成しながら制作していることもあり「今は時間がかかっている。今、慌てると元の木阿弥(もくあみ)になってしまう。スケジュールに終われる体制に、今の段階ではしたくない。今後もアニメーションを作り続けるうえで大切になってくる」という。

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 「つるばみ色のなぎ子たち」は、「枕草子」が書かれた1000年前の京都を舞台に、清少納言が生きた日々を描く。「枕草子」が書かれた時代もじっくり考察している。その中で、これまでの想像とは違う平安時代が見えてきたという。

 “つるばみ色”について「平安時代の中期、200年目くらいの時期に、清少納言が『枕草子』を書いていた。『つるばみ色』は、黒つるばみを指している。それが染め物、喪服を作る時に使われた。十二ひとえにも喪服があった」と考察した。

 「十二ひとえ、夏は暑いと思いませんか? 半年くらい夏服を着ていた。夏服は青だった。シースルーの服を着ていたりした。4月になると、二藍を着ると書いてある。これはコバルトブルーだったと考えられる。少し紫に寄っている。想像と全然違った」と分かってきた。

 考察する中で「清少納言が『枕草子』を書いていた時、京都で伝染病が流行していた。『枕草子』で、のどかなことを書いているけど、裏ではたくさんの人が亡くなっている。予想していたのとは違う世界が広がっていた。清少納言は、華やかでもなんでもない喪服を着ていた時期が長かった。そんな平安時代をこれまでイメージしていなかった」と見えてきた。

 「枕草子」を読み込み、いつ、何が起きたかを考察していった。

 「清少納言は、中宮定子に女房として仕えていた。『枕草子』には、清少納言は、新しく権力を握った人の関係者と関係があって、敵方の人間と疑われたとも書いてある。立場が揺らぐようなことがあった。映画になるような材料があった」「時系列に並べると、いろいろな物語があったことがどんどん見えてくる。映画を作れそうなんですよ」

 「つるばみ色のなぎ子たち」は、まだ分からないことも多いが、細部までこだわり抜いた映像になるようだ。片渕監督は「自分たちが直面していることを理解しながら作れていることを誇りに思う。それがいい結果につながっていけば」と手応えを感じているようだった。

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