僕のヒーローアカデミア
No.170+1「More」
5月2日(土)放送分
「鋼の錬金術師」などで知られる荒川弘さんの最新作が原作のテレビアニメ「黄泉のツガイ」が4月からTOKYO MX、BS11ほかで放送されている。月刊「少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)で2022年1月号より連載されており、コミックスのシリーズ累計600万部以上を誇る話題作。アニメ「鋼の錬金術師」と同じくスクウェア・エニックス、アニプレックス、ボンズという強力な布陣でアニメ化に挑んだこともあり、放送前からアニメファンの期待が高まっていた。アニメを制作するボンズフィルムの大薮芳広チーフプロデューサー、竹本順仁プロデューサーにアニメ化の裏側を聞いた。
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大薮さん 月刊「少年ガンガン」に久々に荒川先生が戻ってくると聞き、ボンズとしてぜひコミットしたいと考えていました。連載が始まり、第1巻が発売され、本当に面白い作品なので、「アニメ化するならうちがやるべきだ!」という思いが勝手にあったんです。おそらく長期シリーズになるという話だったので、ボンズとしても一緒に長い期間を掛けてアニメを作っていきたい。示し合わせたつもりはないのですが、自然とアニプレックスさんとボンズで歩調が合うようになり、スクウェア・エニックスさんにお願いに行きました。
大薮さん もっと早いですね。第1話が掲載されたときには「面白かったです!」「僕らは読んでますよ!」とスクウェア・エニックスさんにアプローチしていました。コンペのときにも言ったのですが、やっぱり荒川先生は「ガンガン」の表紙がよく似合うんです。
大薮さん 映像を見た方にそう思っていただけるのはうれしいのですが、自分たちとしては「再び」とは言いたくないところもあります。ボンズはいろいろな作品を制作してきましたが、「鋼の錬金術師」に育てていただいたところもあります。アニプレックスさんにとっても大きな作品だと思います。当時とは違うボンズとアニプレックスさんが20年後にタッグを組んでやるとどういう映像ができるのか? 挑戦していきたいという気持ちが大きいんです。求められるハードルも高いと思いますし、さらなる高みに向かって、力を合わせていこうとしています。
大薮さん 圧倒的なんです。当たり前の話になりますが、めちゃくちゃ面白いんです。魅力的なキャラクターなどいろいろな面白さはありますが、圧倒的に“読ませる”んです。
竹本さん 僕は今36歳で、「鋼の錬金術師」の原作や、アニメを観てきた世代です。荒川先生の作品は、やはり構成の妙があるとアニメ制作中にも常々感じています。物語の全貌をなかなか見せず、少しずつ作品の世界観やキャラクターのパーソナルな部分が見えてくる。ストーリー構成自体は複雑なはずなんですが、流れがとても分かりやすく、読者が理解しやすい。魅力的なキャラクターも多いので、そこをアニメで表現するのが難しいところでもあります。
竹本さん 難しいですね。マンガ原作作品をアニメ化する際には、基本的に原作にはなかった動きを足していくことになります。そのため、キャラクターデザイン時に線を少なくしたり、絵の情報量を減らすことになります。荒川先生の絵はもともと線が少く、そのシンプルなデザインの中で立体感や躍動感を表現しています。キャラクターデザインの新井伸浩さんがアニメ用のデザインに落とし込むときに、ずっと悩まれていました。
大薮さん 手がかりが少ないんですよ。線がいっぱいあると手がかりが多くなる。すごく簡単に言うと、そのキャラたらしめる分かりやすい要素が少ないんです。なので油断して作業者が手癖で描いているととたんに似なくなります。
竹本さん 原画作業者が同じような絵を描くのも、その絵を動かすのも難しい。
竹本さん 荒川先生は、人体構造をしっかりと把握した上でキャラクターを描かれているので、そこをアニメでもしっかりと表現してほしいというお話がありました。また、荒川先生が民俗学に造詣の深い方で、ツガイのルーツにも民俗学的な要素が関わってくることがあるので、詳細をその都度うかがっています。あとは、東村ですね。日本古来の村落に加え、チベット地方の要素もミックスされていて、独自の雰囲気を出しています。荒川先生の中には東村の確固たるイメージが存在するので、細かいところまで確認して作業を進めました。
竹本さん 物語の中の引きを、シリーズ構成の高木登さんが確実に押さえて構成してくださっています。最初から原作に忠実であるというスタンスではありましたが、少し時系列を入れ替えたりしています。
竹本さん その場面は、安藤真裕監督がこだわっています。ユルの日常が突然崩壊するという衝撃をしっかりと表現して、逃げずにいこうというお話になりました。
竹本さん 今回、若いクリエーターも参加していて、アクションに挑戦しています。第1話は「鋼の錬金術師」のキャラクターデザインの伊藤嘉之さんが作監として参加されているので、若手が挑戦し、伊藤さんがフォローするという作り方ができました。ただ、原作は、バトル、アクションだけの作品ではなく、キャラクターの関係性にも重点を置いています。随所にちりばめられているアクションはしっかり押さえていますが、作品全体としてはアクション作品として制作に臨んでいるわけではなく、キャラクターを魅力的にしっかり見せることを意識して制作しています。
竹本さん そうですね。かつて「鋼の錬金術師」を視聴者として見ていて、「荒川先生の作品に関われるのが感無量です」という方も結構います。
大薮さん 「黄泉のツガイ」を作っているのはボンズフィルムのDスタジオで、当時のスタッフ構成とはまた違うのですが、「鋼の錬金術師」を支えてくれたベテランの方にも引っ張っていただいています。
竹本さん 先ほどお話した伊藤嘉之さんや「鋼の錬金術師FA」のキャラクターデザインの菅野宏紀さんも参加されています。
竹本さん シリアスなシーンやアクションの合間に荒川先生ならではのギャグが入るのですが、映像に落とし込んだときに、間やタイミングが難しいところがあります。安藤監督がコンテ段階である程度指針を示し、各話スタッフがそれを映像として結実させています。ギャグとシリアスのバランスは原作を基にちょうどよい塩梅でまとめられているのではないかと思います。
竹本さん なかなか回収されない伏線も多く、謎も深まっていきます。「鋼の錬金術師」でも荒川先生は作品前半に張った伏線を見事に回収されていたので、安心して原作に忠実にアニメ制作を進めています。
大薮さん どこの制作会社もそうだと思いますが、作品をお預かりしているので。リスペクトを込めて制作しようという思いがあります。作品を作り続けることで、習熟度が上がり、スタジオが強化されてそれが作品へ還元されていく。そこが目指せればいいなと思います。
大薮さん 一緒に制作しようというパートナーに恵まれているんだと思います。「黄泉のツガイ」も継続して作り続ける現場を目指して発足しています。
竹本さん 大薮の話にもありましたが、制作現場の習熟度も少しずつ上がってきているので、安定して制作できる段階に徐々に移行していければと考えています。今後、アクション、キャラクターの感情を表情豊かに表現するシーンも増えていくので、視聴者の皆さんの心をつかめるような映像制作に挑戦できればと思います。楽しみにしていてください。
大薮さん 言い方が難しく、誤解を招くかもしれませんが、第1、2話を見たとき、思い描いたフィルムよりも1、2段階も面白かったんです。安藤監督がお話されていただのですが「荒川先生の作品とアニメとの親和性がとんでもなく高い」。「素材が良すぎて……緊張した」とも言っていました。素晴らしいスタッフが120%の力でやってくれたんだと思っています。原作は面白さがどんどん増していくので、恐怖すら覚えますが、これからもしっかり向き合っていきたいと思います。
守りに入るのではなく攻める。アニメ「黄泉のツガイ」を見ると、スタッフの気概が伝わってくる。物語の盛り上がりに合わせて、アニメも進化していくことが期待される。ボンズフィルムの挑戦はまだまだ続いていきそうだ。(阿仁間満/MANTANWEB)
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