注目映画紹介:「必死剣 鳥刺し」分かりにくい構成もすべては終盤15分間のため

「必死剣 鳥刺し」の一場面。(C)2010「必死剣鳥刺し」製作委員会
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「必死剣 鳥刺し」の一場面。(C)2010「必死剣鳥刺し」製作委員会

 藤沢周平さん原作の「隠し剣」シリーズに収められた1編を、「しゃべれども しゃべれども」(07年)や「OUT」(02年)などで知られる平山秀幸監督が映画化した「必死剣 鳥刺し」が10日に全国で公開される。

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 舞台は江戸時代。海坂藩藩主・右京太夫(村上淳さん)の下で物頭を務めていた兼見三左エ門(豊川悦司さん)は、政に口を出す右京の側室・連子(関めぐみさん)を、藩のためと刺殺する。先年、愛妻を病で失い、子もいない兼見にとって、死も覚悟のうえの行動だった。ところが意外にも寛大な処分が下され、1年後、再び右京に仕えることになる。三左エ門の運命が大きく変わろうとしていた……。

 この作品には、いくつかの“分かりにくさ”がある。時間がランダムに飛び、また、ハードボイルドを意識した演出によって登場人物の感情が見えにくい。殿様の側室を刺殺しておきながらたいしたおとがめも受けず、再び殿様に仕えることになるという展開も腑(ふ)に落ちない。さらに終盤の、兼見と吉川晃司さん演じる帯屋隼人正との一騎打ちも、あまりのあっけなさに首をかしげる。ところが、それらすべてが終盤15分間のための伏線であったことに気付き、なるほどそういうことだったのかと納得する。

 同僚が受ける理不尽な扱いを目の当たりにし、改革を志し、己にとっての“武士の一分”を貫く覚悟で凶行に及んだ兼見。今の世の中、兼見ほどの覚悟を持って働くサラリーマンがいるとは思えないが、それでも、同じ“組織に仕える身”としては、兼見に共感できる部分も多いだろう。兼見役の豊川さんのストイックな演技もさることながら、出番は少ないながら、関さんが演じた憎々しい連子が強烈な印象を残す。10日から丸の内TOEI1(東京都中央区)ほか全国で公開。(毎日新聞デジタル)

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