音楽に身をささげる者はなんて純粋なのだろうか。好きな音楽をやりたい。青年たちのいちずな思いを描くイラン映画「ペルシャ猫を誰も知らない」が7日、公開された。クルド人監督のバフマン・ゴバディ監督の最新作だ。イランのインディーズロックがたくさん聴け、テヘランの今を体感できる。09年のカンヌ国際映画祭「<ある視点>部門」で特別賞を受賞した。青春の切なさ、はかなさがビリビリと伝わってくる。
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ネガルとボーイフレンドのアシュカンは、ロックバンドで活動するために、テヘランを出てロンドンに行くことを夢見る。なんでも屋のナデルを訪ねて、偽造パスポートの手配も整え、一緒にバンドメンバーを探して回るが……。
ほとばしるような若い情熱を焼き付けた映画だ。青春映画といっていいかもしれない。バンドの練習風景や、メンバー探し、テヘランの街のさまざまな表情をエッジの効いた映像で見せていく。若者が食事しながら「アイスランドに行ってシガーロスを聴きたい」などと夢を語る……なんともほほえましい風景の背後には、映画や音楽など大衆文化を厳しく規制する国家が背景にある。だからこそ、彼らの自由を強く渇望する。届かないところへと手を伸ばそうとする2人の行き先は……。
それにしても、さまざまなインディーズミュージックが楽しめる。牛舎でヘヴィメタは衝撃映像だった。主演した二人はイランで活動する本物のミュージシャンで、実際、映画撮影後に国外へ移住した。ゴバディ監督もイランを離れているという。街の中でゲリラ撮影を行い、ピンボケありのスリルあふれる映像は、命懸けで自由を求める映画の中の若者の姿と重なり、ドキドキする。見終わった後、ラストの余韻が心にグサッと突き刺さる。7日からユーロスペース(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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