ゲゲゲの女房:脚本家・山本むつみさんが会見「水木さんが夢に」

 撮影が終了したNHKの朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の脚本家・山本むつみさんが20日、NHK放送センター(東京都渋谷区)で会見を開いた。山本さんは夢の中に水木しげるさんが現れたエピソードを交えながら夫妻との出会いや執筆の苦労話などを披露。「自分が生きてきて考えてきたこと、出会った人のこと、自分の人生すべてを投下しないと太刀打ちできるものではなかった」と振り返った。

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 「ゲゲゲの女房」は、マンガ「ゲゲゲの鬼太郎」の作者、水木しげるさんの妻・武良布枝(むら・ぬのえ)さんの自伝「ゲゲゲの女房」が原案。楽天的で働き者の主人公・布美枝(松下奈緒さん)が「水木しげる」こと夫の村井茂(向井理さん)とお見合いをし、結婚。貧乏生活の中、命懸けでマンガに打ち込む夫を支えながら、おおらかに生きる布美枝の姿が描かれている。

 山本さんは執筆前に「奥様(武良さん)はすごく楽しみにしていらして、『面白いものを作ってください』と言われた。水木さんには『好きに書いてもらいなさい』というようなことを言われ、水木さんは夢に出ていらして『あんまり格好良く書かんでええぞ』とおっしゃっていた」と笑顔で話し、執筆後は夫妻と会っていないというが、「途中でご家族の方に会って、とても喜んでくださっていました」と満足そうにほほ笑んだ。

 山本さんは、武良さんの本を読んで「人生の幸不幸は入り口では決まらないんだと感じた」といい、このドラマでは「人と人が寄り添って暮らすことの面白さを書きたいというのがあった。家族、夫と一緒に暮らす、子どもと一緒に生きていく、そういうことの喜びを書くことがメーンだった」と話した。布美枝のヒロイン像については「ドラマのヒロインは共感とあこがれのバランス。いつも(の朝ドラ)は、自分はできないけどこの人がやってくれるというあこがれのヒロイン。今回は共感するヒロインだった」と述べ、「(何かを)開拓した人だけが社会を作っているわけではない。無数の布美枝がどの時代にもずっといて、その人たちが大多数。その人たちの人生の中に輝きがある」とコメントした。

 ドラマは初回視聴率が14.8%(3月29日、関東地区、ビデオリサーチ調べ)と歴代ワースト1位だったが、徐々に数字を伸ばし、17日時点での最高視聴率は21.8%(7月12日)、期間平均視聴率は18.0%と徐々に数字を伸ばした。その要因について「大多数の人が特別な大発見や大冒険をせずに生きていく。日常の中に希望や喜び、何かを乗り越えていくことがある。(そこを描いた)ヒロイン像に共感できたんだと思う」と話した。

 また山本さんは「200冊以上の本を読み、(時代背景を)調べました。毎週図書館に通い、古い日本映画も始まる前にずいぶん見た。紙芝居についても勉強した」と苦労を語った。最後の脚本を書き上げた際には他の連載の締め切りがあり、祝杯をあげる暇がなかったというが、完全にOKが出た際には「気が付いたら(ニヤニヤと)笑っていた」といい、その後友人と酒を飲んだという。朝ドラの脚本執筆の魅力を「1年以上書き続けられることは大河ドラマと朝ドラしかない。人間を掘り下げていけるのがいちばんの魅力」と語ったが、「来年またやってくださいと言われたら、断ります」と笑顔ながら、きっぱりと宣言していた。(毎日新聞デジタル)

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