水谷豊:「『相棒』のことは忘れています」今度は実在の天才心臓外科医に挑戦

「外科医 須磨久善」記者会見に登場した(左から)小泉孝太郎さん、薬師丸ひろ子さん、水谷豊さん、田中美里さん、宇津井健さん
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「外科医 須磨久善」記者会見に登場した(左から)小泉孝太郎さん、薬師丸ひろ子さん、水谷豊さん、田中美里さん、宇津井健さん

 水谷豊さんが、“神の手”を持つ実在の世界的天才外科医を演じるスペシャルドラマ「外科医 須磨久善」の記者会見が22日、テレビ朝日(東京都港区)であり、水谷さんほかキャストが登場した。水谷さんは大ヒット刑事ドラマ「相棒」での好演も高く評価されているが、今回のドラマについて「共通するのは(須磨医師も相棒の杉下右京も)どちらも本人は天才だと思ってないということ。撮影中、一切『相棒』のことは忘れていますし、差をつけようと考えたこともありませんでした」と話し、緊張感ある手術シーンについては「(撮影で)バイパス手術にバチスタ手術、大きな手術を4回ほどやりましたが、終わったときに僕、手術できるんじゃないかと思いました。錯覚とは怖いですね(笑い)」と話して場を和ませた。

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 実在の須磨医師を演じる水谷さんは「須磨先生を今日まで突き動かしたものは何なんだろうと興味を持ち、やらせていただきました。歴史上の人物を演じるのではないので、先生にがっかりされないようにしようと思いました。須磨先生には手術を見学させていただき、バイパス手術の指導もしていただきました」と役作りについて話した。須磨医師の妻を演じる薬師丸ひろ子さんは「実際に奥様にもお会いして、アドバイスをいただいて役に臨みました。実際のご夫妻もすてきで、プレッシャーはありましたが、病院とは違った須磨先生の家庭での顔をつくれたら」と語った。

 ドラマのナレーションとともに須磨医師の部下を演じる小泉孝太郎さんは「水谷さんを通して須磨先生の半生を感じられたのは興味深く幸せです。すべてを撮り終えてからのナレーションだったので世界観が見えてよかったです」と感想を語った。看護師長を演じる田中美里さんは「冷静に判断しなければいけない役で務まるか不安でしたが、制服を着ると身の引き締まる思いがします。看護師長という責任のある役なので、患者さんを不安にさせないためにどこで笑顔を見せて、どこでクールでいるのかが難しかったです」と振り返った。

 水谷さんとの共演は35年ぶりという宇津井健さんは「須磨先生の葉山の病院を見学させていただいたことがあります。手術室のシーンに立ち会った須磨先生は、水谷さんは長いせりふの英語もよどみなく覚えて、ワンカットで終えてらっしゃったとおっしゃっていました。僕が心臓手術をする際にも、須磨先生にお願いしたいと思います。やはり人間性が大事なんだなと思います」と須磨医師との交流について明かした。

 須磨医師は1950年、兵庫県出身の心臓外科医。86年に世界初の胃大網動脈を移植する心臓バイパス手術を成功させた。胸部と腹部を同時に手術する難しい手術法だったが、“神の手”といわれるテクニックと超人的な集中力で新しい領域を開拓。その後、須磨医師は心臓外科医として国内でトップクラスの地位を築きながらも、理想の医療を求めて地方の民間病院へと移り、心臓病に苦しむ人に希望を与えた。ベルギーでの公開手術、ローマでの教授経験、そして1万人に1人の難病といわれる「拡張型心筋症」の唯一の治療法として、生きている心臓の一部を切り取る「バチスタ手術」と出合い、96年に日本初のバチスタ手術を成功させた。 

 「チーム・バチスタの栄光」などの海堂尊さんのノンフィクションが原作。海堂さんは「チーム・バチスタ」シリーズの原点として、須磨医師についてのノンフィクションを09年に講談社から出版。これを基にシナリオを担当した矢島正雄さんが、須磨さんの足跡に登場人物や団体名などは仮名にし、創作したエピソードを加えてドラマに仕立てた。ドラマでは水谷さん演じる須磨医師が「クリエイティブマインド&チャレンジングスピリット」の言葉を胸に、新しい心臓手術法に意欲的に取り組む姿、生きることに絶望した中学生患者や、バチスタ手術を望む患者とその家族との交流を描く。ドラマは9月5日午後9時放送。(毎日新聞デジタル)

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