沢村一樹:「十三人の刺客」三橋軍次郎役 “セクスィー部長”との二刀流に「切り替えよかった」

「十三人の刺客」に三橋軍次郎役で出演している沢村一樹さん
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「十三人の刺客」に三橋軍次郎役で出演している沢村一樹さん

 役所広司さんふんする島田新左衛門が仲間12人と、「SMAP」の稲垣吾郎さん演じる暴君・明石藩主・松平斉韶暗殺の密名に命懸けで臨む映画「十三人の刺客」が封切られた。メガホンをとったのは「クローズZERO」シリーズなどで知られる三池崇史監督。13人の刺客には、そうそうたる俳優陣が名を連ねる。その中の一人、軍師・三橋軍次郎役の沢村一樹さんに話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 今回の三橋役を振り返り、「時代劇は難しい。同じ時代を描いていても演じる役の職業によって、使う言葉も所作も違いますから」と話す沢村さん。時代劇の出演作は少ないながら、これまでは身分の高い役を演じることが多く、徳川家康を演じたこともあった。ところが今回は侍役だ。しかし、「三橋は、位は低いけれど品は低くない」と感じた。そのため沢村さんは、演じる上で「殿様ほどではありませんが、育ちのよさみたいなものを失わないように」と心掛けたという。

 その半面、荒々しい殺陣のシーンの演技にも気を配った。もともと三池監督の「人間が死ぬ瞬間の、体内に流れている電気がプツっと切れる感じの描き方が好きだった」という沢村さんは「三橋は、刀を抜くことにずっとあこがれていた人。強くなくてもいいと思ったんです。刀を抜いたときの勢いというか、前にしか進まないぞ、という心意気が伝わればいいと思って演じました」と語る。

 1カ月半の撮影は、NHKのバラエティー番組「サラリーマンNEO」の“セクスィー部長”を演じながらこなした。「三橋役にどっぷりつかるのは、逆にしんどかったかもしれません。セクスィー部長と『十三人の刺客』とで軽く切り替えがあったことが、むしろよかった」。その撮影期間中、「普通に話しているのに、時代劇に聞こえる役所(広司)さんのせりふ回しや、松方(弘樹)さんとの殺陣が心に残っている」という。「本当に一日一日、一瞬一瞬が脳裏に焼きついているんです。いやあ、本当に楽しかったあ!」と、当時のことを名残り惜しそう振り返っていたのが印象的だった。

 三橋は軍師でありながら、「三国志」における諸葛孔明のように、策を考える場面は少ない。沢村さん自身は、「今の世なら、東大法学部を出て、ある程度の役職に就いて、何人か部下もいる」ような三橋像を想定して演じたというが、同時に、三橋には“フィルター的なもの”も感じていたという。「三橋の提案は、新左衛門にことごとく覆される。ですが、三橋を通して、おそらく新左衛門のすごさが見ている人には分かるのだと思います。僕のセリフがなかったら、きっと、新左衛門のすごさには気がつかないでしょう」。その言葉の端に、三橋を演じたプライドがのぞいていた。

 最近は時代劇ブームといわれ、数々の時代劇映画が作られているが、その中でこの作品の特色はというと、「『人事を尽くして天命を待つ』と劇中でも新左衛門さんが言っていますが、天命を受け入れるのは意外と難しく、本当に頑張った人にしか言えないことだと思います。相手がどう出てくるかと読んで、探って、知力を尽くし、正々堂々とやれることをやって、最後は神様に決めてもらう。そういう生きざまってカッコいいなあと僕は思っています。女性が、そういう男の人ってカッコいいといえば、男はそれになろうとするはず。ですから、まず女性に、そのカッコよさを感じてもらえるといいですね」と答えた。

 ちなみに「あなた自身、天命を待ったことは」とたずねると、「そんなに大げさなことではありません、すごく小さいことですが」と断った上で、「テレビで下ネタを言うとき」だと明かしてくれた。バラエティー番組などで下ネタを話すときの沢村さんは、いつもサラりと言っているように見えるが、実は「お客さんのリアクションにはドキドキ」なのだそう。「僕は、下品な下ネタは言いたくないんです。でも、ギリギリのところを攻めないと面白くないので、いつも、どっち(の下ネタ)がいいかと考えながら言っています。天命というほどではないですけど、自分では判断できないものの中で仕事をしているんですよ」と笑った。

 人事を尽くして天命を待った三橋。それを演じ切った沢村さんは、最後に、三橋はもとより「それぞれの侍たちに自分を照らし合わせながら、カッコいい男たちの生きざまを見てほしい」と締めくくった。

 映画は、残虐極まりない明石藩主・松平斉韶暗殺の密名を受けた御目付役・新左衛門が、おいや剣豪浪人など12人の刺客を集め、命令遂行に命を懸ける男たちを描いた大型時代劇。刺客役には、役所さん、沢村さんのほかに松方さん、山田孝之さん、伊勢谷友介さん、伊原剛志さん、古田新太さん、高岡蒼甫さん、六角精児さん、浪岡一喜さん、近藤公園さん、石垣佑磨さん、窪田正孝さんが演じている。

 <プロフィル>

 1967年7月10日、鹿児島県出身。ファッションモデルとして活躍後、96年、俳優としてドラマデビュー。「続・星の金貨」の悪役で知名度を上げる。00年からは2時間ドラマ「浅見光彦シリーズ」で主役を務め、09年には連続ドラマ化された。また、NHKのバラエティー番組「サラリーマンNEO」の「セクスィー部長」としても有名。最近、短編ドラマ「パシュっとな!」(WOWOW)で監督にも挑戦した。最近の主なドラマ出演作は「篤姫」(08年)、「夏の恋は虹色に輝く」(10年)、映画の出演作は「ごくせん THE MOVIE」(09年)、「山形スクリーム」(09年)など。沢村さんが初めてハマったポップカルチャーは、東映まんがまつりの「グレートマジンガー対ゲッターロボ」と「長靴をはいた猫」。あとはブルース・リー。「初めて見たとき体に電流が流れました。ヌンチャク、上手ですよ」と話す。

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