作家の村上龍さんが4日、電子書籍の企画制作・出版を行う新会社「G2010」の設立を発表した。発起人の村上さんが「電子書籍ってワクワク、ドキドキするもの。変化っていうのは自分で起こせるもの。そう思ってG2010をやっていこうと思います」と抱負を語った。
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「G2010」は、村上さんと、新作小説「歌うクジラ」の電子版を手がけたコンテンツ制作会社「グリオ」(東京都世田谷区)の共同出資で5日に設立される。村上さんのほか、よしもとばななさんが「Banakobanashi/ばなこばなし」を書き下ろし、瀬戸内寂聴さんも11月下旬に出版予定。NTTドコモのアンドロイド携帯向け「電子書籍トライアルサービス」でサービスを開始し、今後もさらに広げていくという。
村上さんは作家が直接電子書籍を発行することについて「いまの出版社は紙の本を作るプロはそろってるけど、電子書籍をつくるプロは少ない。出版社と組むよりは、ITベンチャーと組むほうが効率的だと思った」と話した。テキストだけではなく、紙にはないものを作っていくという村上さんは「坂本龍一が自分が見た夢を50字程度書いて、それに僕が1000字程度の掌編(しょうへん)小説を書くって言うのを出したことがあるんですが、それをいまの坂本龍一にナレーションを入れてもらって、僕の掌編小説を入れて映像入れるっていうことを考えてる」という構想を明らかにした。
よしもとさんは「龍先生の新作が読みたいがためにヤマダ電機にiPadを買いに行った。これは時代の流れ。こういう流れができるときって瞬間で、個人だけで判断して流れに乗りました」と語った。
また、よしもとさんは、これから自身の作品を電子書籍にどう対応していくかについて問われ「毎日新聞社から、iPadのアプリとして『もしもし下北沢』という本を出してるんですが、まだ持ってる人が少ないので、まずやってみなきゃっていうのが分かった。いまは単に本を電子にしたのではなくて、電子でなければできないっていうものを見極めたい」と述べ「ただひとつ感じてるのは、作家が一番置き去りにされてる。ツイッターや自分のサイトを含めて作家の人たちに向けても情報を公開していきたい」と語っていた。
また、会見に出席予定だった瀬戸内さんは、ぎっくり腰のためビデオメッセージを寄せ、「何でも新しいものがすき。2年前に携帯小説も書いたぐらい。私はこれまでと同じことをして生きてないで、ドキドキして生きたい。電子書籍は印刷物が始まったときと同じくらい大革命のとき。未発表のものも一つありましたし、冥土の土産に参加した。電子書籍は最初が勝負。字が大きくなるし、年寄り向きだと思います」と意欲を語った。
同社から今後、村上さんが76年に群像新人文学賞や芥川賞を受賞したデビュー作「限りなく透明に近いブルー」、87年から続く人気エッセーシリーズ「すべての男は消耗品である」がそれぞれ電子書籍として12月以降にリリース予定。「限りなく透明に近いブルー」については、当時の手書きの生原稿が巻末に収録されており、会見ではその画像が公開された。(毎日新聞デジタル)
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