ラノベ質問状:「NO.6」 「9.11」きっかけに誕生 現代社会への鋭利な視線

あさのあつこさん作の「NO.6」(講談社)の表紙
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あさのあつこさん作の「NO.6」(講談社)の表紙

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、近未来の理想都市の裏側に潜む陰謀に挑む少年たちを描いた「NO.6(ナンバーシックス)」(あさのあつこ著)です。講談社児童図書第一出版部の山室秀之さんに作品の魅力を聞きました。

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 −−この作品の魅力は?

 この物語を「ライトノベル」と称してよいのか、それは読者のご判断にお任せいたしますが、僕のなかではきわめて骨太で重量感のある小説です。近未来の設定ではありますが、「NO.6」に描かれている状況は、いま世界の紛争地で現実に起きていることと酷似しています。紫苑やネズミのような少年たちが、この瞬間にも死と隣り合わせで権力に立ち向かっているかもしれない。人が生きることの意味、国家とは何か、など深遠なテーマを含んだ作品だと思います。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 01年にアメリカで起きた「9.11」テロ事件です。あさのあつこさんはあの事件をテレビで見て、国家に対して個人は何ができるのか。どう立ち向かっていけばよいのかをテーマにこの物語に取り組みました。村上春樹氏はエルサレム賞受賞のスピーチで「壁と卵」の比喩(ひゆ)を使って、「システム」という強固な壁と人間の脆(もろ)さを対比してみせましたが、現代社会に対する作家の鋭利な視線は「NO.6」にも共通しています。

 −−編集者として、この作品にかかわる喜び、大変なことについて教えてください。

 それはもう、こんなに心を震わせてくれる物語を最初に読めることですね。毎回、読後は心臓がバクバクして、しばし放心状態ですよ。

 −−今後の展開、読者へ一言お願いします。

 次巻の「#9」が最終巻になる予定です。僕自身、「NO.6」の世界にずっと浸っていたいという思いと、ラストの1行を早く読みたい、という相反する気持ちが交差しています。読者の皆さんの心にずっと残る作品に仕上げたく思っていますので、どうぞ楽しみに待っていてください。

 講談社児童図書第一出版部 山室秀之

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