乙葉しおりの朗読倶楽部:第2回 芥川龍之介「羅生門」 下人の行方は…

「羅生門・鼻」(新潮文庫)芥川龍之介の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「羅生門・鼻」(新潮文庫)芥川龍之介の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。7月から配信され、これまでに20万ダウンロード突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第2回は、芥川龍之介「羅生門」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 先日バスに乗っていた時のことですが、私のそばにいた小さな子がしきりに「あんぱんまん、いたい」って、お母さんに呼びかけているんです。

 あんぱんまんさんがどこかで痛がっているのかなって、思わず周りを見回してしまったんですけれど、どこにも痛がっている人はいなくて、おかしいなって……そして気がつきました。

 ああ、「いたい」じゃなくて、「みたい」って言ってるんだって……。

 朗読ではこうした発音の聞き取り違いを起こさないように、滑舌(かつぜつ)を良くする練習を行います。

 俳優やアナウンサー志望の人達が使う滑舌練習テキストとして有名なのが、歌舞伎十八番のひとつ「外郎売」(ういろううり)にある、外郎売さんの長ぜりふです。

 ここでそのせりふを紹介……しようと思ったのですが、このコーナーが台詞だけであふれてしまうくらいに長いものなので、興味を持たれた方はぜひ調べてみてくださいね。(*^^*)

 私も一人で練習するときはうまく発音できているように思うんですけれど、人前だとどうにもうまくいきません。

 滑舌よりも、あがり症を克服する練習を、もっともっとがんばらないといけないみたいです……(>_<)

 でも、これでも朗読倶楽部に入る前の私と比べたら、進歩している方なんですよ。

 あのころは……って、あっ! 前回の続き、朗部倶楽部結成のお話をしなくちゃですね!

 最初は文芸部に入って読書を楽しむつもりでいたんですが、お友達が誘ってくれた理由の一つが、「先輩方が卒業して部員がいなくなり、部として成り立たない」からだったんです。

 しかも顧問の先生も定年で退職されてしまって、一緒に顧問になってくださる先生も探さないといけません。

 私の通っている学校は、ほかの学校と比べていろいろなクラブ活動が認められていて、クラブが細かく分かれている分、活動場所の取り合いになっているんです。

 入る前から存続の危機!な文芸部ですが、おまけに学校のクラブハウスが改築することになって、学校側が活動実績のないクラブを整理するために、さらに存続条件がついてしまったんです。(>_<)

 それは、「新しい活動場所を確保すること」「クラブとしての活動実績を出す見込みを、短期間でたてること」

 場所探しも問題ですけれど、もっと問題なのは実績です。

 本を読むだけでは実績は作れませんから、何か実績をたてることを考えなくてはいけません。

 文芸部で実績というと、文芸誌を作ること、小説を書いてコンテストに入賞する、そして、読書感想文コンクール。

 どれも高いハードルですが、特に読書感想文は大勢の前で自分の書いた作文を発表するんですから、私にはとてもとても……。

 難題山積み状態をどう解決していくのか、続きはまた次回に。

 次のお話ができる日を、楽しみにしています(^−^)

■しおりの本の小道 芥川龍之介「羅生門」

 第2回となりましたこのコーナー、今回ご紹介する一冊は、芥川龍之介さんの「羅生門」です。

 私が朗読倶楽部に入って最初に読んだ本で、ちょっと怖いけれど、思い入れのあるお話です。

 みなさんも、学校の授業などで、一度は読まれたことがあるのではないでしょうか?

 今昔物語集から題材をとったこのお話の舞台は、平安時代の京の町、その玄関口にある、とても大きな正門「羅生門」。

 これは平安京に実在した「羅城門」が元になっています。

 お話は、この門の中だけで展開し、登場人物も、下人さんと、おばあさんの二人だけです。

 あ……、下人というのは、当時の呼び方で、お店に住み込みでお仕事する人のことですね。

 平安京というと、華やかな雰囲気を想像してしまいますけど、このお話の時代の人々は、大雨や竜巻、それを原因に発生する疫病や飢饉(ききん)で、とても貧しい暮らしを強いられていました。

 この貧しさが、お話の中での大きなキーワードとなっています。

 都の不景気でリストラされてしまって、帰る場所もなく雨宿りする下人さん。

 大きな都の正門なのに、下人さんとおばあさん以外誰も出てこないのは、どうしてなのか。

 そんな人気のない場所でおばあさんは、何をしているのか。

 明日の糧を失い、生きるために盗みを働くべきか迷う下人さんの、善と悪の葛藤と、最後の選択。

 お話の題名を「羅城門」ではなく、「羅生門」としたのも、お話の中での人間の「生」を強調したからだと言われています。

 最後に、このお話の結びの一文に「下人の行方は、誰も知らない」とありますが、これが最初、違う文章だったのをご存じですか?

 もし興味が出てきたら、ぜひ、調べてみてくださいね。

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