坂の上の雲:プロデューサーが語る第2部最終回 香川入魂の減量 最新VFXを使った圧巻の大爆発

「坂の上の雲」第2部最終回(第9回)の一場面 (c)NHK
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「坂の上の雲」第2部最終回(第9回)の一場面 (c)NHK

 明治期に青春を燃やした男たちの群像を描いた本木雅弘さん主演のNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」第2部が26日の放送で最終回を迎える。日英同盟から日露戦争開戦という時代の流れの中で、本木さん演じる海軍参謀が友人の相次ぐ死を乗り越えて懸命に生きる姿が描かれる第2部最終回(第9回)の見どころと総評を菅康弘エグゼクティブプロデューサーに聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 ドラマは、司馬遼太郎さんの2000万部を超えるベストセラーが原作。海軍参謀として日露戦争の日本海海戦に臨んだ秋山真之、陸軍で騎兵隊を創設し、のちに“日本騎兵の父”と呼ばれる兄の秋山好古(阿部寛さん)、俳人として日本文学に大きな足跡を残す正岡子規(香川照之さん)の3人を中心に、近代化を目指す明治期の日本が描かれる。子規の妹・律を菅野美穂さん、海軍での真之の友人・広瀬武夫を藤本隆宏さんが演じている。09年11月に第1部(第1~5回)「青春編」として放送された。5日にスタートした第2部「友情編」(第6~9回)は、子規が闘病の末に亡くなり、広瀬は真之が作戦参謀を務めた旅順港閉塞(へいそく)作戦に参加して戦死。最も親しい友人2人を亡くした真之が悲しみを乗り越え、前に進んでいく姿が描かれる。

 菅プロデューサーは「第2部は『友情編』といいながら、真之の最も親しい友人たちが亡くなる。大事な友を亡くした真之が、その悲しみをどう乗り越えていくのかが見どころ」と語った。晩年の子規を演じるため、18キロ減量をしたという香川さんについては「子規は晩年やせ細ってはいなかったので、プロデューサーとしては減量をお願いしなかったが、香川さんは『子規に近づくためには、自分自身に負荷をかけないと』と、自分の最低体重の53キロ以下を目標に減量してくれた」と執念にも似た気合の入った役作りだったことを明かした。極限状態の香川さんの演技は「(妹の)律を演じた菅野さんが、背中をさすって『せりふや表情じゃなくて、感触で泣いたのは初めて』と言っていた。編集で50回以上見ているシーンなのに、何度見ても涙が出る」と名場面の完成を喜んだ。

 第2部の最終回(第9回で戦死する広瀬を演じた、元五輪水泳選手の藤本さんについては「藤本さんはスポーツマンなので、しゃべりがあんまり得意じゃない。役をやっていると怖そうなんですけれど、しゃべるといい人、朴訥(ぼくとつ)な人です」と話した。藤本さんの起用について「本木さんや香川さんをはじめとする主要な役の中にあんまり見たことのない人を入れたいと思った。藤本さんには13年前に1度だけ会って『いい性格の男だな』と思ったのを急に思い出して、広瀬にそっくりな彼にお願いした。男に好かれる男です」とイメージ通りだったことを喜んだ。性格そのままが広瀬に近いという藤本さんに「演技は素のままでやってほしいとお願いした。泣ける話になっています」とアピールした。

 第9回は、1904(明治37)年2月6日、連合艦隊が佐世保港から出撃し、真之は参謀長の島村速雄(舘ひろしさん)とともに作戦を練る。同日、日本はロシアに対して国交断絶を通告。夜のうちに旅順港で奇襲作戦を実施。皇帝ニコライ2世も宣戦布告をする。三笠では、有馬良橘(加藤雅也さん)が港内に閉じこもるロシア旅順艦隊に対し、閉塞(へいそく)戦を提案。真之は乗組員の生還率の低さから反対するが、東郷は作戦を受け入れる。広瀬(藤本さん)も指揮をとり作戦を実行するが最初の閉塞作戦は失敗。2度目の閉塞作戦では旅順口に達した閉塞隊が集中砲火を浴びる。福井丸の乗組員は爆薬を仕掛けた船を離れ、短艇に乗り込み脱出を図るが、広瀬は砲弾を受け……というストーリー。

 あちこちで火柱が上がり、大爆発する圧巻の旅順港のシーンは、マルタ共和国にある撮影用プールに福井丸の船体を再現して撮影した。「広瀬を描いた作品は多々あるが、実際に船を浮かべてこのシーンを撮った作品はない。さらに最新のVFXを使ってよりリアルな映像になっている。実際の映像とVFXの区別がつかないほどの臨場感を目指したので、それも見てほしい」と自信を見せた。

 11年12月に放送される第3部は、戦争描写が中心となるが、「残された女性たちを描くことで、戦時中の日本国内の様子も描こうと思った。原作では印象の薄い子規の妹の律や、女性のキャスティングに重きを置いたのはそのためでもある」と明かし、「第2部は、広瀬の死で真之にとって出口なしといった終わり方をするが、それがどうなっていくのかを楽しみにしてほしい」と見どころを語った。

 第2部最終回(第9話)は26日午後7時半~9時に放送。第3部は11年12月放送予定。第1部のDVDボックス(1万9950円)とブルーレイディスク(BD)ボックス(2万4675円)はNHKエンタープライズから発売中。第2部も11年3月16日に、DVDボックス(1万5960円)とBDボックス(1万9740円)が発売予定。(毎日新聞デジタル)

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