「ポケットモンスター」や「モンスターハンター」のヒットが目立ち、携帯電話の「ソーシャルゲーム」の台頭なども話題となった10年のゲーム業界。11年2月には裸眼3Dの新型ゲーム機「ニンテンドー3DS」も発売される。ゲーム出版大手「エンターブレイン」の浜村弘一社長にゲーム界の展望を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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−−10年は「モバゲー」や「グリー」などのソーシャルゲームが話題でした。
ソーシャルゲームの市場が伸びたのは(ゲーム業界の)脅威でなく朗報と思っています。家庭用ゲーム機をする人たちが少なくなったという声もあるが、どうも違うようです。ベスト10に入るのは新規のゲームが多く、家庭用ゲーム機のブランドが通じない。むしろ市場は広がったとみるべきですね。
−−気になったタイトルは?
「怪盗ロワイヤル」はプレーしましたが、他人との交流が楽しいですね。昔ゲーム業界にシューティングゲームしかなかった時代、RPGなどの新しいゲームが出たときのような感じです。一定の時間が経過しないと再び遊べないのがポイントで、そこにライブ感があるのでしょう。オンラインゲームの「ファイナルファンタジー(FF)11」でも、自分が移動するときに、他の人がしゃべり、道を行き交うのが新鮮な面白さだったように、ライブ感をうまく取りこんで、新たなゲームの可能性を感じさせてくれました。
−−既存のゲーム市場では、「モンスターハンターポータブル3rd」が大ヒットしました。
(10年末の売り上げを)全部もっていきましたね。最終的に500万本は行くんじゃないでしょうか。ただ、売れて飽和したために今後どうするかという危機感はあると思います。「FF」や「ドラクエ」などのRPGは、CGと物語を入れ替えれば(ゲームの雰囲気は)ガラリと変わりますが、「モンスターハンター」はアクションゲームなので、(入れ替えがきかないという)構造的な問題はあります。
−−この後は厳しい?
いえ。開発チームは百も承知でしょう。ゲームなのにモンスターが疲れるなど生物っぽさを伝えるなどの工夫をしています。「ドラクエ」が最初に遊んだRPGであるように、「モンハン」はつながって最初に遊んだゲームになりましたから、特別なゲームになりつつあるかもしれません。「ファンタシースターオンライン」や「FF11」も(つながるオンラインゲームとして)ありますが、多くの人の共通体験で語られるのは「モンハン」でしょう。どう進化を遂げていくか注目ですね。
−−大作ゲームばかりが売れた1年です。
ゲームの売り方が変わっています。「モンハン3rd」は、スピンオフのソーシャルゲームを出すなどして従来とは違う客層にアピーするなど、一つの新作を売る前に別の作品を積み上げているんです。映画では当たり前のことで、ゲームでもプロデューサーが売るための努力を今までよりしなくてはいけないのです。ホームランを狙うのでなく、ヒットを積み重ねるなど、手間ひまをかけて新人(のゲーム)を育てないといけないのだと思います。
−−期待のFF14では、多くのFFシリーズにかかわった田中弘道プロデューサーの交代という驚きのニュースがありました。
ネットゲームの続編を展開する手法は二つあります。一つはCGをより良くして出す。もう一つは違う客層を取り込めるまったく異質なゲームを作ること。「FF14」は後者狙いでした。ただ、それがいかに難しいか……ということでしょう。
−−「FF11」も最初は、ゲームにログインすらできませんでした。
そういう意味では「FF14」の混乱も予想はできました。そしてお客さんが(ゲームの改善を)待ちきれないというのもよく分かります。ただ、会社がこんなに早く(プロデューサー交代という)決断をする必要があったのでしょうか。「FF11」は、7~8年かけて積み上げられた大人のゲームで、「FF14」はまだ生まれたばかり。両者を比べるのは厳しいと言えます。
−−やはりネットからのプレッシャーが強烈だったと?
ツイッターもありますからね。でもプロデューサーが交代したことで、みんなが幸せになったのか?といえば心にモヤモヤが残りますね。(私の)周囲にFF14のことを聞くと「ゲームが面白くなるまで『モンハン』や『FF11』をやるよ」という意見も多かったですから。いずれにせよ、プロデューサーの交代は一石を投じたのは事実です。とはいえ(田中さんも)まったくかかわらないわけではないし、新プロデューサーも優秀な方と聞いているので、「FF14」は今後面白くなると期待しています。
−−2月には任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」が出ます。
ユニークなハードになると思います。画面のインパクトがあるし、友達を撮影して3D化できるし、いろいろな仕掛けが入っていますね。特に期待しているのは、ネットワーク(すれちがいい通信)で、ゲーム機を閉じたときもアクセスができますから、新しいゲーム性が生まれるでしょう。
−−裸眼の3Dはインパクトがありますね。
ええ。ただ飛び出して見えるというより、奥行きが深く見えるという感じです。注目ソフトは「パルテナの鏡」で、現段階で一番の売りになる作品と思います。ちなみに「ゼビウス」のような2Dだった作品が3Dになると驚くんですよ。だから3DSでは、2Dゲームの移植作品が意外に売れると見ています。でも、ハードだけでも欲しいというゲーム機は久々ですから、どのくらい売れるのか楽しみですね。
−−スマートフォンのヒットで、ソーシャルゲームも変わりそうです。
垣根がなくなるのは、まさにそうだと思います。一つのタイトルを、ソーシャルゲームやアプリで展開してアピールするといったブランドを育てることが大事になってくると思います。従来の携帯電話は国内だけでしたが、スマートフォンだと世界展開ができるので、大きな希望が持てます。また、ケータイと違って、グラフィックがきれいなスマートフォンでは、CGなどにそれなりのノウハウが必要ですから、家庭用ゲームを制作した企業が活躍すると見ています。モバゲーやグリーの成長はジャパニーズ・ドリームでしたから、そこにボーダーレスの状況が生まれてきて面白いと思います。
◇「FFヴェルサス13」に期待 「二ノ国」にも注目
−−期待のソフトは?
PS3の「FFヴェルサス13」(スクウェア・エニックス)ですね。「龍が如く OF THE END」(セガ)も驚きがありますよ。後は「二ノ国」(レベルファイブ)のPS3版。立体でジブリの絵が動き、アニメなのかCGなのかよく分からないほど。素晴らしい技術を持っていると思います。
−−レベルファイブは元気ですね。
日野(晃博)さんは、モノを売ることの難しさをよく知っていますよね。プロデューサーで、社長であることがレベルファイブを強くしています。社長ですから、自身で決裁できるのが大きい。(サッカーゲームの)「イナズマイレブン」の一つ目は、1作目で利益が出ないと思ってやっていたようですが、これは社長であり、オーナーだからできること。トータルでブランドイメージを上げられるのは強みでしょう。
−−3DSのソフトの売れ行きは?
3DSのメーンタイトルは発表になっていないようで、その先がみたいですね。あとはミリオン級タイトルがどうなるか。3DSの本体は、最初は売り切れると思いますが、一定数が売れた後こそが勝負。(DSの)ブランドイメージもありますが、やはりソフト次第だと思います。
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