話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、行商人の主人公と、狼の化身であるヒロインの道中を描いた「狼と香辛料」(支倉凍砂著、文倉十画)です。アスキー・メディアワークス電撃文庫編集部の荒木人美さんに作品の魅力を聞きました。
ウナギノボリ
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−−この作品の魅力は?
「狼と香辛料」は、中世風ファンタジー世界を舞台に、行商人の青年ロレンスが、狼の化身である少女・ホロと旅をする物語です。そんな作品の魅力は、なんといってもヒロインのホロだと思います。狼の耳としっぽが生えた可憐(かれん)な美少女……という外見はもちろん、「わっち」「~くりゃれ」など独特な話し方が魅力です。しかもホロは“賢狼”と呼ばれるほど頭が切れ、相棒であるロレンスが危機に陥った際など、彼女の機転で切り抜けることもしばしば。可愛さと知性を兼ね備えたヒロインだと思います。
また作品の魅力を語る上で外せないのが、ロレンスとホロが旅の途中で出合う商売がらみの事件です。剣も魔法も存在しないファンタジーの世界観に、商売や経済という要素を取り込んだ、これまでになかった新しいジャンルの作品です。
−−作品が生まれたきっかけは?
「狼と香辛料」は著者の支倉さんのデビュー作であり、第12回電撃小説大賞で銀賞を受賞した作品です。選考途中から、編集部内でも「獣耳少女の出てくるファンタジー作品がすごく面白いよ!」と話題になっていました。作品自体は、読書家である支倉さんが、中世や経済に関する専門書を何冊も読む中で生まれました。支倉さんからうかがったお話では、特に「金と香辛料」という学術書に大きく影響を受け、タイトルもここから発想を得たとのことです。
−−作家さんとイラストレーターさんはどんな方ですか?
著者の支倉さんは、非常に勉強熱心な方です。先の質問でも述べましたが、かなりの読書量をこなしておられ、知識が豊富です。一見クールなのですがおちゃめな一面もあり、とにかく獣耳が大好きだということで、ホロのキャラ設定にかなり生かされています。
イラストレーターの文倉十さんは、とてもまじめで勤勉な方で、どんなにお忙しくても、締め切りをきちんと守ってくださる先生です。お声をかけたきっかけは、“運命”と言ってもいいかもしれません(笑い)。しっくりくる挿絵の方が見つからず悶々(もんもん)としている最中に、文倉先生が編集部にイラストを持ち込みにいらして、ホロを描いていただくならこの方だ!と直感しました。
−−編集者として、この作品にかかわる喜び、大変なことについて教えてください。
老若男女、どんな人が読んでも面白い!と感じることのできる作品で、新しい巻が出る度に一番の読者になれることを本当にうれしく思っています。主人公のロレンスと一緒に、毎回ホロの奔放さ、可愛らしさに振り回されています(笑い)。アニメやコミックなど、さまざまな分野に作品世界が広がっていったこともとても幸せなことだなと感じています。
大変なことは、強いて言えば、ロレンスの商売の方法やもうけた金貨の枚数などに間違いがないかを確認する時に、普段使わない部分の脳みそを使う点でしょうか……。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします。
2月10日発売の第16巻で、いよいよ本編が最終章を迎えます。物語の中盤から伏線が張られていた、大きな商売がらみの事件がこの巻で収束となります。その後、初夏予定で短編をまとめた第17巻が発売予定で、行商人ロレンスと賢狼ホロの旅の結末を描く書き下ろし中編を収録予定です。「狼と香辛料」は、この17巻でついに完結です。作品のテーマであった「幸せであり続ける物語」は存在するのか、ぜひ2人の旅の最後を見届けてあげてください!
アスキー・メディアワークス 電撃文庫編集部 荒木人美
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