山口智子:企画から携わった音楽・紀行番組「よりよく伝わるなら出演も」

企画から編集までかかわった番組「LISTEN1001」について語った山口智子さん
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企画から編集までかかわった番組「LISTEN1001」について語った山口智子さん

 女優の山口智子さんが、音楽や音をテーマに企画から下調べ、ロケハン、撮影の立ち会い、編集まですべてにかかわった番組「LISTEN1001(リッスンワンオーオーワン)」が、BS朝日で1月29日にスタートした。山口さんは「世界の多くの人々が、話す言葉は違っても同じように感じる感動や心地よさをボーダーレスな『音』で共有したい」と、昨年秋にハンガリーのブダペストなど東西文化の交錯する場所で、多くのミュージシャンやアーティストを訪ね歩き、カメラに収めてきた。「環境が許す限り続け、長寿番組にしたい」という山口さんに、番組に込めた思いや撮影のエピソードなどについて聞いた。(細田尚子/毎日新聞デジタル)

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 山口さんは番組名の「LISTEN」に「耳を傾ける、耳をすます」、「1001」に「千一夜物語」のように「語り続けていきたいもの、語り伝えたい大切なもの」という意味を込めた。昨年ハンガリーやドイツ、オーストリア、トルコなど「古今東西の文化が交錯する場所」を訪ね、馬の群れが大平原を駆ける音やカザフスタンの若き民族音楽グループ「トゥラン」のパフォーマンスなどをカメラに収めてきた。とくにハンガリーのジプシー音楽には、「昔から旅をしてさまざまな文化と融合してきた音楽ですので、知らない分野の音楽を聴いているようで、その旋律の中に日本の『馬子唄』や『追分』、チンドン屋の音楽など懐かしい響きを感じました。音というのは本当にボーダーレスで、遠いようで、すごく身近なものと結びついていると感じた瞬間に感動が押し寄せました」と思いをはせていた。

 海外での撮影はハプニングの連続で「連絡網が徹底していない地域ですので、例えば、その日に撮影するミュージシャンの方と約束しても、当日まで全く連絡が付かず、撮影現場にも現れず、どうしようかと思案していると2、3時間後に現れて、雪で国境が通行止めで携帯電話のバッテリーも切れていたなど、そんなことは日常茶飯事でしたね」と苦笑する。だが逆にうれしいハプニングもあり、「放送のためだけを考えれば、2、3曲を収録すれば十分ですけれど、ミュージシャン側がもっと自分たちのことを知ってもらいたい、もっとこんな曲もあるとどんどん演奏すればするほど、心地よくスピードアップして疾走感が出てきました。また、馬が平原を駆けるシーンは、人間と強い信頼関係を結んだ馬たちが、好奇心いっぱいに『一緒に遊ぼうよ』とこちらに向かって駆けてくる。その音が朝の清らかな空気と太陽の美しい光、そして地鳴りのような馬たちの足音が伝わってきて、あまりに美しくて無条件に涙が出ました」と振り返る。

 番組には山口さんは第1回の冒頭に一瞬登場するだけだ。今回はほとんど裏方に徹しているが、表に出たいという欲求はないのかと聞くと、「それが伝えるという目的のために効果的であれは、どんどん参加する可能性はもちろんあります」と答えた。「今は(昨年収録してきた)お宝のような素材が山ほどありますので、放送で収まり切らない部分をどう利用しようかというのが、自分への宿題です。放送以外でもチャンスがあればさまざまな形に発展させていきたい。放送だからと限定しないで、すべてのボーダーを取っ払って考えていきたいと思っています」と展望を語った。

 山口さんといえば「連ドラの女王」と呼ばれ、ヒットドラマに数多く出演してきた。女優としての活動も気になるところだが……。「私自身も(女優・山口智子を)待っているんですよ。(女優の)扉を閉めた覚えもないし、これもボーダーレスでいつも扉を開いて、お声が掛かるのを待っているんです(笑い)。いくつか話はありますけど、ここ最近、私に届いた(オファー作の)脚本は、5回続けて病気で死ぬ奥さんの役で(苦笑)。私が何かお役に立てるのであれば、そういう役ではないんじゃないかなと思っているので……。気持ちとしてはいつも女優業はやりたいと思っています。私の体と感覚を通して何かお役に立てることがあればささげたいという思いは、せりふをしゃべる仕事でも、今回のように調べて作る仕事でも変わらないですね」と前向きに語った。

 次回は、山口さんのオフの過ごし方や生き方について聞いた。

 <プロフィル>

 1964年10月20日生まれ、栃木県出身。88年、NHK連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」の主演で女優デビュー。89年に「同・級・生」、91年に「もう誰も愛さない」、92年に「子供が寝たあとで」、94年に「29歳のクリスマス」、95年に「王様のレストラン」など民放各局で出演した連続ドラマが立て続けにヒットし、「連ドラの女王」と呼ばれる。96年には「SMAP」の木村拓哉さんと共演した「ロングバケーション」が高視聴率を記録した。95年に俳優の唐沢寿明さんと結婚。最近は「ライラの冒険 黄金の羅針盤」(08年)の日本語吹き替え版やスタジオジブリの劇場版アニメ「崖の上のポニョ」(08年)に声優として参加する一方で、05~06年に「山口智子の旅シリーズ」、06年に「史上最大の女帝エカテリーナ 愛のエルミタージュ物語」、07年に「山口智子 手わざの細道」、10年に「okaeri 山口智子 美の巡礼」など教養ドキュメンタリー番組に出演。1月29日にスタートしたBS朝日で月1回放送の「LISTEN1001」(午後11時~11時25分)では企画から編集まですべてにかかわった。第2回「Stamina(スタミナ、仮題)」は26日午後11時~11時25分に放送。第3回「flow(流れ、仮題)」は3月末に放送予定。1月20日には連載をまとめた書籍「掛けたくなる軸」(朝日新聞出版)を発売。

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