チュ・ジンモ:「男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW」主演 「義兄弟でも血縁以上になれる」

チュ・ジンモ:「男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW」主演 「義兄弟でも血縁の兄弟以上になれる
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チュ・ジンモ:「男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW」主演 「義兄弟でも血縁の兄弟以上になれる

 いまなお傑作とうたわれるジョン・ウー監督が86年に製作した香港映画「男たちの挽歌」が、韓国の映画人の手によって生まれ変わった「男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW」が19日に公開された。メガホンをとったのは、「力道山」(05年)や「私たちの幸せな時間」(06年)などで知られるソン・ヘソン監督。オリジナルでティ・ロンさんが演じていた役を、「カンナさん大成功です!」(06年)などに出演したチュ・ジンモさん、彼と固いきずなで結ばれた男で、オリジナルではチョウ・ユンファさんが演じていた役を、「ゴースト もういちど抱きしめたい」(10年)で松嶋菜々子さんとダブル主演したソン・スンホンさんが演じている。「たとえ血縁関係ではない義兄弟でも、血を分けた兄弟以上の関係になれることを、私たちの映画は描いています」と話すチュさんに、作品への思いを聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 韓国版「男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW」は、武器密輸組織における権力争いを描いている。チュさんが演じる組織の大物ヒョクが、組織の仲間テミン(チョ・ハンソンさん)に裏切られ逮捕されてしまう。そこに、ヒョクの出所を待ちわびるヨンチュン(ソンさん)と、ヒョクの弟で警察官のチョル(キム・ガンウさん)が加わり、ウー版のオリジナルに勝るとも劣らない男たちのドラマがつむぎ出される。

 オリジナルは、本国香港はもとより日本でも大ヒット。多くのファン、とりわけ男性の観客を心酔させ、続編も作られた。それだけの傑作を、およそ四半世紀を経てリメークするには、それなりのプレッシャーと心構えが必要だったはずだ。チュさんは今作に臨んだときの思いを次のように明かす。「確かに、オリジナルの『英雄本色』(『男たちの挽歌』の香港でのタイトル。韓国ではこれを韓国語読みしていた)は傑作です。リメークが決まったとき、オリジナルを汚すようなことはあってはならないと肝に銘じました」と明かす。

 その一方で「オリジナルと同じ方向性で作っていては意味がないことも知っていました。ですから、私たちの作品では、兄弟愛や義兄弟のきずな、そういった人間の感情をより細やかに表現していくことを念頭に置いて演技しました」という。撮影前、オリジナル作を手がけ、今作では製作総指揮を務めたジョン・ウー監督からのアドバイスや要望はなかったそうだが、韓国での公開前の試写で初めて会った際、「ウー監督は、そういう(感情をこまやかに表現した)部分がうまくいったのではないかと高く評価してくださった」と満足そうに振り返った。

 その兄弟愛、義兄弟のきずなの強さを端的に表現するのが、ヒョクが、チョルとヨンチュンのそれぞれと食卓を囲む場面だ。このシーンについてこぼれ話がある。実はこのシーンは「撮影を進める中で、感情的な部分をより極大化させていくために、一つの装置として作られた」もので、もともとシナリオにはなかったそうだ。撮影は、昨春に釜山で行われた。「本来なら半袖でも過ごせるぐらいの時期なのに、厚手のスタジアムジャンパーを着ていた記憶があります。周りの商店街や食堂などは、お客さんが来ないから閉まっていました」。確かに、ヨンチュンとの食事の場面では、風の強さがスクリーンごしに伝わってくる。寒さをこらえて撮影する2人の表情にぜひ注目してほしい。

 さらに、今作のもう一つの特色は、ヒョク、ヨンチュン、チョルが脱北者であるということ。「映画のエンディングで、テミンの『お前たちの国に帰れ』というせりふがありますが、それは、韓国の人々が普段、脱北者に対して思っていることが反映されていると思います。同じ人間なのに置かれていた状況の違いでそんなふうに思われてしまう。そうした人間の心の痛みを、この映画はまた、表現しているのです」。ちなみに、今作の韓国でのタイトルは、「無敵者」。「敵」が「籍」と同じ発音ということから、「戦うべき敵がどこにいるのかはっきりしない」「自分の国籍がどこかはっきりしない」という両方の意味がかけられているという。

 チュさんは4人兄弟の末っ子として育った。上3人はすべて姉だという。男兄弟はいないが、この役を演じるのはむしろやりやすかったという。「兄弟がいたら、彼らに対して持っている本物の感情が邪魔をしてしまっただろうし、いないからこそ頭の中で、自分にもし兄がいたらこうしてほしいとか、弟がいたらこうしてやりたいというイメージをふくらませることができたのだと思います」。そして「だからこそみなさんに、切なさとか深い兄弟愛を感じ取っていただけたのでしょう」と反応に手応えを感じ、笑顔を見せた。

 ところで、製作総指揮という形で参加したウー監督の、今作に対する率直な気持ちを、映画ファン、特にオリジナルのファンは知りたいところだろう。プレス資料によると、ウー監督は脚本を読み、「兄弟愛や友情のために自らを犠牲にする精神が表現されており、北朝鮮から来た兄弟という設定と兄弟愛を物語の中心に置いた点に驚くべき発見があった」と語ったとされる。そして、作品を見ながら「オリジナルを忘れるほど興奮し、感動して涙があふれた」とある。これ以上の賛辞はないだろう。「男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW」は19日から全国で公開中。

 <チュ・ジンモさんのプロフィル>

 1974年韓国出身。モデルとして活躍し、94~97年に兵役に就く。退役後に映画デビュー。99年「ハッピーエンド」で大鐘賞助演男優賞受賞。「リアル・フィクション」(00年)、「MUSA-武士」(01年)などを経て、06年には、鈴木由美子さんのマンガが原作の映画「カンナさん大成功です!」に出演。その端正なマスクでファンを魅了した。さらに08年の大型時代劇「霜花店(サンファジョム)~運命、その愛」では、本国で400万人を動員するヒットを記録、百想芸術大賞最優秀主演男優賞を受賞した。「ファッション70’s」(05年)や「飛天舞」(08年)などテレビドラマにも多数出演している。

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